大手デベロッパーでも「狭小」分譲住宅を手掛ける裏事情とは

本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。今回は、「コーポラティブハウス」プロジェクトの優位性について解説します。

住宅地の古い一戸建てが取り壊されたと思ったら…

住宅地エリアに土地の売物件がでたとしても、面積が広いと価格が大きくなりすぎるため、個人では購入資力が伴わないケースがでてきます。地価の高い首都圏だとなおさらです。この場合、ハウスメーカーや建築工務店が買手となることが多くなります。

 

ハウスメーカー等は資金力を活かしてその土地を取得し、自社の建物を供給する素地として活用するのです。それが自社商品を企画、販売するのに効率が高いからです。分割した土地上には、あらかじめ戸建てを建築して建売住宅として販売する場合もあれば、その会社で建築することを条件に土地販売する場合もあります。

 

自社の建物にさほど特徴(デザイン、耐震性能、換気システムなど)を打ち出せず、顧客認知度も高くない地場のハウスメーカーや建築工務店はこうした建売事業に活路を見いだすことが多くなります。住宅地の古い一戸建てが取り壊されたと思ったら、3棟くらいの狭小住宅が建てられる準備が始まり、現地でテントが張られて営業マンが販売をする…そんな景色をよく目にします。ミニプロ(ジェクト)などとよく言われる現場です。

 

このようなミニプロ現場で、特に一次取得者(初めて家を買う人)向けに、建売戸建を供給する事業を行う中堅ハウスメーカーをパワービルダーと言います。マンション価格が高騰する中、建築部材の大量仕入れをテコに割安感のある建売分譲住宅を展開するこの業態は昨今業績を伸ばしています。

 

「東京に家を買おう」のCMで有名なオープンハウスはその代表的な会社です。セキスイハウスや大和ハウスといった大手ハウスメーカーも、土地を持っていない人に注文戸建てを売っていくために、ミニプロに近いプロジェクトを多く手がけています。首都圏における価格レンジとしては、パワービルダーが2000万円~4000万円、大手ハウスメーカーが3000万円~6000万円のイメージです。

 

さらに総合デベロッパーでも街区づくりレベル、面開発で建売分譲を行うケースがあります。三井不動産のファインコートや野村不動産のプラウドシーズンがこれにあたり、こちらの価格レンジは6000万円~1億円ぐらいとなっています。

 

こうして、広めの土地は、割安な価格となった上で、個人ではなくプロに買われていくということが多くなっていきます。とはいえ、売主だって少しでも高く売りたいと考えるわけなので、割安になってしまう中でも、一番高い価格提示をする相手先に売却することになります。この場合一番札をとれるのは、できるだけ土地区画を小さく分割して、自社の建売住宅を多く建設、販売するプランをいれるハウスメーカーもしくは工務店となります。建物の棟数分だけ利益を稼げるので敷地を高く取得しても採算があうのです。

 

基本的に建物の敷地は道路に2m以上接道していなければなりませんが、その要件を満たすことができれば、多少窮屈であっても敷地を分割していきます。旗竿地とよばれる形(接道が2m程度で、敷地が奥まっている土地形状)が二重、三重にできるイメージです。

 

また敷地が狭いと斜線制限(隣地の日照等確保のための建築基準)の影響を大きく受けます。斜線制限に抵触しないようにするには屋根を斜めにしなければなりません。こうして、いわゆる狭小3階建ての建売住宅が供給されていきます。間取りは1階が駐車場とお風呂、2階がリビングキッチン、3階が各居室というプランが多くなります。

 

しかも3階の居室は天井が低くなってしまうし、主婦は1日に何往復も階段の上り下りをしなければなりません。もちろん価格の安さや、マンションと異なり管理費や修繕積立金といったランニングコストがないというメリットはありますが、建売住宅は20年後に建物評価がゼロになってしまいます。

 

中古流通価格がしっかりと存続していく分譲マンションに比べ、見劣りしてしまうので、建売住宅かマンションか、その選択においては長期の視点で考えなければなりません。

 

ちなみに住宅密集地になってしまうと火災などの災害時に危険が増えるとして、行政は狭小住宅の展開にネガティブです。また街並みの景観を守るべき高級住宅地では、一定面積以下の宅地には新たに建物を建ててはいけないと定めている(建築協定)ところも少なくありません。

 

いずれにしても、土地を持ってない人が、好きな場所で好きな注文住宅を建築したいという希望はなかなか実現しにくくなっているのが現実です。

 

「コーポラティブ型土地購入」はこの人たちの想いを実現に近づけていきます(関連記事『大手参入も…日本で「不動産オークション」が根付かないワケ』参照)。

 

[図表1]狭小住宅ができあがるイメージ
[図表1]狭小住宅ができあがるイメージ

オリジナルのマンションを実現したい人は多数いる

「コーポラティブハウス」とは「共同組合を設立して建設するマンション」を指します。通常のマンションが、デベロッパーの企画にもとづく既成品だとすれば、住む人全員のオーダーメイドでマンションを企画、建設するのが「コーポラティブハウス」です。

 

あらかじめ、そのエリアで「コーポラティブハウス」を作りたいと考える人の集団が、組合を結成し、共用部(外観デザイン、エントランス、屋上などの活用、駐車場などの共用スペース、マンションの名前…)と、専有部(面積、階数、間取り、天井高…)について、けんけんがくがく打ち合わせを行いながらマンションを企画、建設していくことになります。

 

通常、「コーポラティブハウス」をセットアップする事業者が、土地取得から設計、発注、施工監理までをコーディネートして進めていくことになります。平成初期に都市デザインシステムという会社がこれを多く手がけたことが草分けで、現在でもいくつかの会社が企画を続けています。

 

ただ「コーポラティブハウス」は組合を構成する各人がこだわりをもっているからこそ、全体としての合意形成が難しいという難点があります。たしかに、自分オリジナルの住まいを生み出すことができるし、デベロッパーが介在しないために総コストは1割程度低めに建設できるメリットがあり、かつ、コストもガラス張りで納得感を得やすくあります。しかし意見調整には膨大な時間を要するケースが多くなり、それを厭わない人、つまり忍耐力がある人でないとコーポラティブハウスへの参画は向かないのです。

 

また、コーポラティブハウスに適した土地とは、狭すぎず広すぎない土地である必要があります。つまりマンションデベロッパーが手がけるには狭すぎてスケールが出ない土地であり、一棟アパートや戸建てなどを建てるにはちょっと広い土地、そんな土地が素地となるケースが多いのです。

 

いきおい対象となる土地の案件数も限られてしまいます。このように合意形成の問題と素地の問題があって、コーポラティブハウスは、そのコンセプトこそ優れているものの、プロジェクト数としてはそれほど伸びていないのが実状です。

 

それでも、自分オリジナルのマンションを企画実現したいと考える人は相当数いるので、意見のとりまとめについて、コンサルタントの力に依存せずに済む仕組みづくりと、買手が組合となる場合の土地取得資金調達の段取り(売主へのスキーム理解を含む)が整備されるようであれば、もう少し進展があるかもしれません。

 

実際、三菱地所はスタイルハウスのブランドで、構造躯体だけデベロッパー側でフレーミングした間取り自由設計型のマンション分譲を企画していました。これなどは、既成の分譲マンションとコーポラティブハウスの中間のような位置づけと言えるでしょう。

 

さて「コーポラティブ型土地購入」は、土地の区画割り方法を打ち合わせしながら、その土地を共同購入するスキームです。

 

「コーポラティブハウス」では、建物仕様にまつわる様々を打ち合わせして決めていかなければならないのですが、土地であれば2次元の線引きで済みます。2分割にするのであれば、線引きのパターンはそれほど多くないので、事業者側で事前に集計した要望を勘案して分筆ラインを定めることとします。

 

その上で路線価評価方式などの公的評価を基準に価格按分比率を決定、分割後の土地に対して、購入検討の事前登録者による入札で買手を決めていきます。価格設定にあたっては事前登録者集団によるブックビルディング形式(あらかじめ要望価格を申告してもらいその分布度合を勘案して価格設定する方式)で基準価格を策定してもいいでしょう。買手側にも経済性はあるし、そもそも欲しかった「手頃な面積の注文住宅用地」を取得できるチャンスとなるのです。

 

「コーポラティブ型土地購入」事業の事前登録者(プレ買主)のコミュニティ形成においてはハウスメーカーとのコラボレーションが重要です。ハウスメーカー側にとっても注文住宅の購入予備軍に早くからタッチポイントを持てるのは有用であり、自社の建築のアピールの場として、建築見学会や耐震性能の体験会、週末に住宅展示場で行うようなイベントを優先的にご案内するといった企画になるでしょう。

 

事業者サイドでは、コミュニティ活動を運営しながら、ハウスメーカーのこれらの企画とのつなぎ役も行っていきます。そして、登録顧客のそれぞれについて、どのエリアが本当に欲しいのか、予算レンジがあるなかで、どこまで土地に資金をつぎ込む予定があるかを肌で感じていきながら、分筆ラインの策定に活かしていきます。駐車場の台数、庭の広さ、希望する建物の延床面積など、要素はいろいろあると思います。

 

間口の広い土地であれば、分筆ラインの決め方にはそれほどの苦労はないと思われますが、土地は間口が狭いもの、不整形地であるものも一定数あると想定されます。その分割方法は、整形地と旗竿地(敷地延長型)に分かれることになります。地型としては整形地のほうが価値は高くなるものの、旗竿地の価値が低くなりすぎてもいけません。

 

最適配分を行い、結果、2区画の価格足し算が最高値を形成するような分筆も重要なポイントとなっていくのです。

 

[図表2]
[図表2]

スター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社代表
不動産投資アドバイザー
CFPファイナンシャルプランナー 

1967年生まれ、岐阜県出身。慶應義塾大学商学部卒業後、三井不動産グループや三菱地所グループを経て、現在はスター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社の代表を務める。不動産仲介や新築分譲戸建ての販売、リフォーム営業、オフィスや商業施設の管理運営、複合施設の開業コンサルに従事。不動産全般にかかわる多様な知識と経験をもつ。宅地建物取引士、ビル経営管理士など多数の資格を持つ。前著に『金融視点で考えるハイブリッド不動産投資法』『節税・年金・相続を考える人のディフェンシブ不動産投資』『資産運用・節税・相続のための新・不動産投資メソッド「じぶんリート®」』(いずれも幻冬舎ルネッサンス刊)がある。

著者紹介

連載新時代を切り開くビジネスアイデアとは? 儲かる「不動産投資」講座

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイデア

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大林 弘道

幻冬舎

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