実は「混雑率」微減?サラリーマンを苦しめる「満員電車」の今

台風や雪のたびに大混乱する首都圏の交通機関。鉄道各社の計画運休は、社員の出社時刻を事前に遅らせるなど、確かに一部で機能してはいるものの、大部分のケースでは、駅に電車待ちの人が殺到し、超・満員電車になってしまう事態に陥っている。

自然災害のたびに「地獄」と化す首都圏の各線

9月9日未明、台風15号が関東を直撃した。中心付近の最大風速は約40メートル、最大瞬間風速は約60メートルであり、道路の冠水・土砂災害のみならず、突風の影響で頭部を強打した女性が死亡するなど、未曾有の事態となった。

 

前日の夜の時点で、JR東日本は首都圏すべての在来線の運転を見合わせると発表。当初は始発から午前8時ごろまでの予定だったが、倒木や車両点検、混雑の影響を受け、多くの路線で運転再開時刻が延長された。東急電鉄などの他の鉄道各社も、台風前夜に計画運休を伝えていたものの、JRと同様、駅に人が殺到したため、予定よりも大幅な遅れが相次いだ。

 

ツイッターでは、駅の「阿鼻叫喚」っぷりを伝えるツイートが大量に投稿され、ある種のお祭り騒ぎ(地獄の祭りだが)となっていた。駅からあふれ出た人々が列をなしている様子に、げんなりした人も多いことだろう。

 

誰しもが満員電車を嫌っているはず。それなのに、一向に改善される気配はない。

 

「帰りたい」と何度思っただろうか…
「帰りたい」と何度思っただろうか…

 

◆小池知事の「満員電車ゼロ」はどうなった

 

小池百合子東京都知事が、2016年の選挙時に「7つの0」の公約を掲げていたことを覚えているだろうか。

 

① 待機児童ゼロ

② 介護離職ゼロ

③ 残業ゼロ

④ 都道電柱ゼロ

⑤ 満員電車ゼロ

⑥ 多摩格差ゼロ

⑦ ペット殺処分ゼロ

 

今年の4月5日、小池知事は、ペット殺処分ゼロを達成したと公表した。大変結構なことだが、それ以外の公約は「無」の状態といっても過言ではない。満員電車ゼロの公約に関しては、大多数の生活に直結するため、やれるものなら一刻も早く解決してほしいものだが、現状は知ってのとおりだ。

 

一応、満員電車改革の1つに、「時差Biz(ビズ)」というキャンペーンがある。「時差Bizとは、通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす働き方改革のひとつです。」と東京都のホームページには書かれている。具体的には、朝早く出社したり、フレックスタイム制(1ヵ月以内の総労働時間をあらかじめ定めておき、始業時間や終業時間は従業員が決める働き方)にしたりなど、要は「時間をずらす」という取り組みだ。企業側のメリットは、以下のように大きく掲載されている。

 

【参加企業様のメリット】

従業員の働く意欲や生産性の向上

快適な通勤で従業員のストレス軽減!仕事の生産性もアップ!

本ホームページへの貴社名掲載

お申込みをいただくと、即座に参加企業一覧に貴社名・業界名を掲載!

 

「はあ、左様でございますか」と投げやりになりそうになる。一斉かつ強制的に始めない限り、参加する中小企業などほとんどいないだろう。もっとも、その「一斉かつ強制」が、まず無理なわけだが。

 

ちなみに、時差Bizに加え、テレワーク(場所や時間を自由に選ぶ働き方)と、2020TDM推進プロジェクト(東京オリンピックに向けた道路交通の混雑緩和など)をあわせ、「スムーズビズ」というキャンペーンが推進されている。意欲的に行った企業は表彰され、授賞式で自社の取り組みを紹介する機会が設けられるそうだ。

 

時間をずらそう!と言われても……と感じる管理職の方も多いだろう。企業や個人に改革を呼びかけるのではなく、電車を増やしたり、JRのグリーン車のように1両を2階建てにしたりすることはできないのかと考えるところだ。特に、2階建ての電車については、小池知事も前向きに検討していたものの、鉄道業界からは、安全面やコストの面で否定的な意見も多い。また、乗降に今よりも余計な時間がかかってしまうことへの懸念もある。数年以内に導入されるのを期待するのは、やめたほうがいい。

実は首都圏の「混雑率」は年々下がってる

首都圏の主要な路線は、いまだ下記の乗車率となっている。

 

【目標混雑率180%を超えている個別路線(11路線)】 ※国道交通省より

●東京地下鉄東西線:199% ●JR東日本京浜東北線:186%

●JR東日本総武緩行線:197%  ●JR東日本埼京線:185%

●JR東日本横須賀線:196% ●東急田園都市線:185%

●JR東日本南武線:189% ●JR東日本中央快速線:184%

●JR東日本東海道線:187% ●JR東日本総武快速線:181%

●東京都日暮里舎人ライナー:187%

 

例えば東京地下鉄東西線の「199%」とは一体どういう状態か。国土交通省は混雑率の目安をこのように定義している。

 

出所:国土交通省
[図表1]混雑率の目安 出所:国土交通省

 

「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める」程度。かなり無理がある。数える程度の経験ならまだしも、毎日毎日、見知らぬ他人とぎゅうぎゅうに肩を寄せ合う心労は尋常なものではない。

 

余談だが、BBCの報道によると、通勤や帰宅のラッシュなどで感じるストレスは、戦闘機のパイロットや機動隊員のストレスに勝るという(David Lewis氏の調査より)。文字通り「命を懸けて働いている(通勤している)」わけだ。一方で、微々たる希望ではあるものの、長い目でみると混雑率は減少傾向にある。国土交通省発表の図表を見てほしい。

 

出所:国道交通省
[図表2]三大都市圏における主要区間の平均混雑率・輸送力・輸送人員の推移 出所:国道交通省

 

大阪と名古屋が微増だが、東京は減少している。199%という絶望的な数字を見た今なら、「163%(広げて楽に新聞を読める程度の数値)」が割と空いているようにも感じる。混雑率の低下は、もちろん少子高齢化による人口減少などの大きな要因もあるが、車両の増加、運行本数の増加など、鉄道各社の並々ならぬ改革がもたらした結果だ。

 

◆テレワークの検討を

 

そもそも論だが、電車に乗らないという手段があるなら、それに越したことはない。特に、今回の台風や、雪によって交通機関が乱れている日は、心労、疲労、出社にかかる時間など、トータルコストで考えれば、出社をしないという選択肢が一番効率的かつ有効的であると心底感じているサラリーマンも少なくないはずだ。

 

「出社すること自体に意味がある」といった根性論は、確かになくならないものの、時代は変わりつつある。「どうにか出社する社員は偉い」という風潮が、昭和・平成の負の遺産であることは、もはや明確だ。

 

オリンピックに向け、東京は日々変わっていく。観光客も莫大に増加し、都内の混乱は避けられないだろう。しかし、オリンピックが始まろうが終わろうが、日本に住む人の生活は続くわけだ。どうか付け焼刃的政策や、謎の根性論ではなく、中長期的な視点で満員電車解決の糸口を見つけほしい。

GGOとは、GENTOSHA GOLD ONLINE(幻冬舎ゴールドオンライン)の略称。『あなたの財産を「守る」「増やす」「残す」ための総合情報サイト』を掲げ、企業オーナー・富裕層を主要読者ターゲットとして運営している(写真は編集長の立本正樹)。

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