不動産投資は物件を買ってからがスタート。安定的な経営を実現させられるかどうか、その鍵を握るのが「物件の管理」であり、「賃貸管理会社」に委託するのが主流になっています。本記事では不動産会社の営業主任として、日々不動産投資家に対し収支改善の提案を行っている川越明日菜氏が、不動産オーナーに向けて「賃貸管理会社」の選び方を紹介します。

「賃貸管理会社」は、何をしてくれるのか?

不動産投資では、専業オーナーでない限り、自身で物件管理するのは難しく、賃貸管理会社に管理を依頼するのが一般的です。しかし、どのような賃貸管理会社を選んだらいいのか、悩むオーナーも多いようです。

 

大手賃貸管理会社に依頼したほうが安心できるというメリットの反面、管理はすべてシステム化にされているため、イレギュラー時の対応が遅くなるなどのデメリットがあります。また、エリアによって、実は地場の賃貸管理会社に依頼したほうがいいケースもあります。

 

そもそも賃貸管理会社はどのような仕事をしてくれるのでしょうか? それはどのような不動産を管理依頼しているかによって違います。

 

■一棟建てのマンションの管理会社がしてくれること

一棟建てのマンションの場合、まず重要なのが、毎月の「集金作業」。滞納があれば支払いの督促もしてくれます。こちらの作業に対して、「集金額の5%+消費税」が一般的な管理報酬となります。

 

「巡回と清掃」は、管理物件の治安・環境維持のため行うものです。頻繁に物件に通ってくれる管理会社であれば、物件や入居者の異常にも気づく可能性が高く安心できます。

 

「退去の立ち合いと修繕の提案・実施」も重要です。退去の際に、入居者責任の修繕箇所がないかを入居者とともに確認する必要があります。この作業がないと、すべてオーナー負担での修繕になってしまいますので、退去立ち合いは大切です。その際、入居者からカギも回収します。

 

退去の報告を受けたら行ってもらうのが、「入居募集、審査」。まだ入居中でも情報だけはネットに掲載することができるので、人気の物件であれば、この時点で部屋の中を見ずに入居が決まることもあります。

 

一つの管理会社に数年物件管理を任せていると、前回の募集の際に間取を把握していて、入居中でも正確な情報を掲載してくれるというメリットがあります。入居者の属性を見極め、保証会社の審査業務や火災保険加入手続きも行ってくれます。

 

■区分マンションの管理会社がしてくれること

区分マンションの場合(1人のオーナーが1部屋所有し、マンション内に複数のオーナーがいる)の管理内容をみてみましょう。

 

区分マンション投資の場合、物件全体の管理を行う「建物管理会社」と、その対象の部屋のみの管理を行う「賃貸管理会社」があります。

 

各部屋にそれぞれの所有者がいるような一棟マンションでは、廊下やロビー、エレベーターや自転車置き場などは、各部屋の所有者みんなで共有して利用します。そのため各部屋のオーナーたちは、マンションの共用部分の使い方などを話しあったり、修繕や清掃をどうするのかを決めたりしないといけません。そこで、オーナーたちから建物の共有部分の巡回や清掃、修繕を一手に引き受けてくれるのが「建物管理会社」です。

 

マンションオーナーは「建物管理費」と「修繕積立金」この2つを建物管理会社に支払います。

 

建物管理会社はオーナーたちの団体「マンション管理組合」から依頼を受けて、建物の巡回や清掃、修繕箇所の提案・実施、修繕積立金の管理・運用を行います。

 

修繕積立金は所有分に応じて支払うことになります。オーナーが多数いる場合には、事前にしっかりと修繕計画をたて全員に周知し、計画的に積み立てる仕組みにしておくことで、もめ事を避けることができます。結果的にはオーナーたちにとって、最もストレスのない方法として考えられています。

 

一方、オーナーが所有する部屋を誰かに貸している場合、それを管理してくれるのが「賃貸管理会社」です。管理費用は家賃の3~5%+消費税、または1部屋いくらというような定額制が設けられています。

 

管理内容は、入居者からの家賃の回収・送金、滞納の督促、退去立ち合い、修繕の提案・実施、入居者の募集、などがあります。

一棟と区分…管理会社を選ぶときのポイントは?

管理会社を選ぶ時のポイントをそれぞれ見ていきましょう。

 

まず一棟建てのマンションやアパートの場合は、物件には1人の管理担当が付き、しっかりと物件のことを把握してもらうというのが理想的です。

 

管理会社から物件までの距離はとても重要です。いい管理会社・担当は、何か問題があれば比較的すぐに物件に足を運んでくれます。物件へ行く回数が増えることで、入居者のモラルがよくなる、クレームが減る、物件の異常に事前に気づくなどのメリットがあります。

 

また管理会社とはたくさんの連絡をとることがあります。そのやり取りが自分のペースに合わないと相当なストレスを抱えることになってしまいます。また、入退去の連絡が遅くなることは、収益の減少にも直結します。

 

さらに入居付けが強い管理会社を選ぶことが、安定した不動産経営につながります。入居付けが強いとは、管理会社が直接に入居者を見つけることができるということです。たとえば駅前に会社があれば、家探しをしている人がたくさん訪れるため、管理している物件に優先的に斡旋することができます。または、ネット戦略が得意で、ネット上に管理している物件を掲載することによって入居者を確保することができるというような、専門で行う部署がある会社もあります。

 

管理会社は自社で空室を埋めることでオーナーの満足度をあげ、さらに固定の管理収入を増やします。管理の質の高さが新規の管理物件を増やすことにつながり、管理会社もオーナーもウィンウィンの関係を築くことができるのです。

 

一方、区分マンションの場合、1部屋分のやり取りのみなので、連絡自体はそれほど多くはありせん。それでも、所有期間中は定期的に連絡をとることはあるので、レスポンスの良さは大切です。

 

また区分マンションの場合、空室になるとダイレクトに収益がなくなり、ローンの返済が滞るというリスクがあります。そのため、いかに空室期間をなくすことができるか、短くすることができるかが、管理会社の腕の見せ所でもあります。

 

たとえば、区分マンションの場合、都心の立地が良く、共用部が充実している物件が多くあります。このような物件であれば、「高級賃貸マンション向け」というチャネルで入居者募集を図れるような管理会社であれば、高級志向の入居希望者に効率的にアピールできます。

 

所有する物件のクラスに対して入居募集が強いかどうかという目線も、管理会社を選ぶこともひとつのポイントです。

賃貸管理会社…「大手」ゆえのデメリットとは?

賃貸管理会社は大手が安心と思っているオーナーが多いと思いますが、必ずしもそうとは言えません。

 

大手賃貸管理会社は業務内容がしっかりと組織化されているため、常に安定した管理体制を望むことができます。WEBやSNSによる集客方法など、専門的な部門があるため、訴求できる入居希望者の母数が大きいのが特徴です。全国展開していれば、地方からの上京希望の入居者も顧客にすることができます。

 

一方、大手であるがゆえに、イレギュラーな問題発生時に、どの部署の担当かがわからないことや、署ごとの確認・承認作業が長引くことがあります。修繕担当者と募集担当者が違うことで、修繕リフォーム内容と家賃相談が直結しないこともあります。

 

区分マンションは、共用部の設備や間取、駅からの距離などによって家賃相場が左右されます。そういった物件は物件ごとに修繕の内容に大きな違いは生じにくいと言えるので、規模の小さな管理会社よりも大手管理会社の方がメリットを享受しやすくなる側面があります。

 

一方、一棟の場合は部屋ごとに条件が異なり、家賃に違いが生じることは珍しくありません。当然、オーナーからの要望も細かくなるでしょう。しかし修繕、募集、清掃など、業務によって担当者が違うというような大手管理会社だと、対応できないケースも出てくるでしょう。

 

 まとめ 

管理会社にはそれぞれ、得意な分野があります。大手賃貸管理会社は総合的に不動産に関するすべての業務を各部署が担っています。どの部門に特化するというよりは、きちんと組織化し、より多くの多様な顧客の対応が求められています。組織化された安心感や充実したネットワークという強みが特徴です。

 

一方、地域の管理会社は顧客とのつながりを大切にします。柔軟な対応力で、オーナーにとってのパートナー的存在になってくれるでしょう。

 

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本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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