本連載は、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

「ソーシャルレンディング型」の利回りは悪くないが…

インターネットを介して、複数の人が、少額ずつ直接出資を行う「クラウドファンディング」が人気です。

 

開業から間もないなどの理由で金融機関から融資を受けられない、製造業や飲食店などの資金集め手段として有効であり、出資者側としても、配当等の経済的なリターンのみならず、商品開発を応援するとか、店舗のオーナーシップに浸れる要素もあって、成長分野として育ちつつあります。

 

この「クラウドファンディング」のひとつの形として、不動産投資を間接的に行う「ソーシャルレンディング」型の案件が増えてきました。この「ソーシャルレンディング」は不動産投資を行うファンドを組成し、そこに対して「融資」をするという形をとるため、不動産特定共同事業法にもとづく「投資」とは異なり、貸金業としての規制をうけることになります。

 

貸金業法上、投資対象不動産の個別具体を開示することは制限されている(債務者情報の開示にあたる)とのことで個別物件の情報はほとんど明らかにされていません。

 

ある運営会社のホームページで投資案件の募集要項をみると、やはり対象については概略しか書かれておらず、現物不動産投資の提案を本業としている私からすると違和感を覚えます。

 

これらの投資案件の利回りをみると、悪くない数字となっています。出資金も少額で済むので投資意欲もでてくるでしょう。ただ、不動産価格が上がって利回りが低くなった昨今の現状を考えると、シニアローンが絡んでいるとしても、利回りが出来すぎではないかという印象を受けます。

 

よくよく見ると、投資対象は地方の商業施設であったり、郊外の中小ビルであることが多いようで、そもそも「ソーシャルレンディング」にしなければ取扱いにくい物件なのかもしれません。クラウドファンディングによる不動産投資を「大衆版リート」と表現することがありますが、これは出資金が少額で気軽に取り組みやすいというポジティブな点を表現している一方、運用資産のバリュー、アセットマネジメントのクオリティ、リスクの高さなどのネガティブな点を総じて「大衆版」と揶揄しているのです。

「不動産小口化商品」はすこし乱立気味に⁉

不動産への少額投資でいうと、不動産特定共同事業法による小口化商品もあります。住友不動産が、保有するオフィスビルの持分を小口化したSURFシリーズが草分け的存在となっています。これに倣い、不動産小口化商品は組成されてきているのですが、地方のテーマパークや食品スーパーが一社テナントとなっている小口化商品などもあります。それなりに利回りが高い商品として見えるのですが、これは中核テナントの浮沈にすべてがかかっているタイプなので、テナントの収益力をしっかり注視していかねばなりません。

 

ワンルーム開発業者の資金回収型の小口化商品もあります。これは国債との比較で利回りが高い、堅実な投資だとうたっていますが、新築ワンルームマンションをベースにした商品だけに、想定利回りはかなり低く、かつ5~6年とされている償還期間満了後の当該ワンルームの再販価値を考えるとどうしても見通しを明るく持てないのです。このようにJリート以外の不動産小口化商品については、すこし乱立している感が否めません。

 

リートだって破綻したことがあるのです。金融環境が厳しかった時代ではありますが、リファイナンスが出来なかったのが原因です。不動産価格が上昇しているここ数年は、ファンドの償還価額を高く見積もることができますし、事実、これまでの運用成績も悪くありません。ただ、いずれ不動産マーケットがピークアウトを迎えるようなことがあれば相応のインパクトはあるはずです。

 

運用資産の価格下落分は、優先出資するプレーヤーが補完するスキームとされているものが多いようですが、結局「今はいいけど、出口はあるの?」そんな話に帰結するのだと思われます。

 

仮想通貨も黎明期はドタバタしていましたし、ソーシャルレンディングでも数社が預かり資金の運用に疑義があるということで、金融庁から処分をうけるにいたりました。いずれも投資家は経済的な損害を受けています。

 

不動産投資におけるクラウドファンディングも、今しばらくの市場整備を待ってからの方がいいかもしれませんね。

 

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    大林 弘道

    幻冬舎

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