日本ではあまり馴染みのない「プライベートバンカー」。富裕層のために、金融資産のみならず、事業再構築・事業承継についても「投資政策書」を立案し、長期的に実行を助ける専門家のことを指します。本記事では、岸田康雄公認会計士/税理士が、プライベートバンカーに求められる役割について解説します。

1:プライベートバンカーの節税アドバイス

プライベートバンカーのお客様は富裕層であることが多いため、税金に関して敏感である。販売する金融商品に関する税務はもちろん、個人の所得税や相続税・贈与税、法人税や消費税について基本的知識を持っていなければ、お客様の相談や質問に対応することができない。

 

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利回りの高い金融商品を販売したところで、せいぜい年率数%の利益しかお客様は享受することができない。これに対して、相続税の最高税率は55%である。お客様が保有する財産は、投資・資産運用によってわずかしか増えないが、納税によって大きく減ってしまう。お客様が所有する財産価値を最大化させるためには、増やすことと同時に減らさないことをアドバイスするのが求められる。

 

もちろん、プライベートバンカーは、税理士業法に抵触するような税務アドバイスをできないため、自ら提携する税理士やお客様の顧問税理士と連携し、税務アドバイスを提案できる体制を作っておく必要がある。

2:「争族」で発生する多大なデメリット

相続の現場で最も重要なテーマは遺産分割である。民法において、相続人が複数いるときは、相続財産は共有に属するものとされている。それゆえ、遺産分割手続を行うことによって共有状態を解消し、各相続財産を各相続人へ個別に帰属させることが必要となる。そこで、民法は「法定相続分」を定め、複数の相続人がその割合に応じて遺産を承継するものとしている。ただし、遺産分割は、相続人間の協議によって決めることもできる。このため、遺産分割協議において遺産を巡る相続人同士の争いが発生するのである。

 

遺産分割が決まらなければ、相続税の納税はできない。相続税は、相続開始日から10ヵ月以内に現金で納付しなければならないが、分割協議がまとまらなければ預金の引出しができないため、納税が困難となる。

 

また、遺産分割が決まらなければ、株式や不動産の名義変更もできない。名義変更できないと、売却して現金化するなど自由に処分することができない。極端な話、相続人のなかに1人でも遺産分割協議書に押印しない人がいれば、家庭裁判所のお世話にならない限り、永遠に処分することができなくなる。

 

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何よりも重要な問題は、遺産分割がまとまらずに相続人間で裁判になることである。裁判に発展すれば、相続人間の人間関係が決定的に悪化してしまう。

 

さらに、遺産分割がまとまらない場合、相続税申告が不利になる。すなわち、遺産分割がまとまらなければ、「配偶者の税額軽減(配偶者が取得する相続財産が法定相続分相当額または1億6,000万円まで課税されないとする制度)」や「小規模宅地の評価減の特例(被相続人の生活基盤になっていた居住用・事業用の宅地は、評価額が減額される制度)」などを適用して、税負担を軽減させることができない。そして、「相続税の取得費加算の特例(相続後3年10ヵ月以内に相続した土地や非上場株式を売却した場合、その売却益に対する譲渡所得税を計算する際に、それらの相続時に課された相続税相当額を取得費に加算することができる特例)」についても、遺産分割がまとまっていることが前提である。

 

遺産が未分割であれば、これらの特例を適用しないものとして計算された相続税額を納税しなくてはならない。余計な税負担を強いられないようにするためにも、プライベートバンカーはお客様の遺産分割を確実にまとめるためのアドバイスを提案しなければならない。

3:劣悪な土地の場合は「手放す」という選択肢も

お客様で土地を所有されている方の多くは、「先祖代々の土地は売らずに相続を続けなければならない」と考えている。しかしながら、相続があると相続税の納税のために土地の一部を切売りすることになり、資産がどんどん目減りするだけでなく、売りやすい優良な土地が減って、売りにくい劣悪な土地が残ることにより、全体としての土地の収益性が下がってしまうという問題が伴う。

 

現実には、無理して土地を保有し続けるよりも、手放すほうが好ましいケースが数多くある。収益性の低い土地を保有している場合、固定資産税や維持費などのコスト負担だけ重くのしかかってくるからである。自分の代で売らないと、子供たちが売らなければならなくなる。つまり、土地を所有することに伴う問題を将来に先送りするだけである。

 

郊外の土地などで収益性が著しく低い土地を所有するお客様、あるいは、地方都市で買い手がつかずに困る土地を所有するお客様がいた場合、プライベートバンカーとしては、売却することを提案すべきである。

 

確かに、土地の所有を続け、賃貸アパート・マンション建築を行って有効活用を図るという選択肢もあるだろう。しかし、近年問題となっているように、賃貸経営の調子がいいのは最初の数年間だけで、その後の空室や賃料引下げや空室増加によって赤字は膨らむばかりで、借入金の返済のための資金繰りが悪化するケースも多くみられる。賃貸経営は立地条件がすべてである。都心部に比べて地方都市になるほど、収益性の低下が早いことを覚悟しなくてはならない。

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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