1:プライベートバンカーの職業倫理
証券アナリストの場合、仕事の相手方はプロであるが、プライベートバンカーにとっての顧客は個人が中心となる。それゆえ、プライベートバンカーは顧客である個人やその家族の信頼に応えて、顧客の利益のために、専門的能力を発揮して、最大限の努力をしなければならない。また、プライベートバンカーは、その分野の専門的知識・情報量で顧客に対し圧倒的に優位であるが、その優位性に乗じて自己の利益を図ってはならない。
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プライベートバンカーは、強い自己抑制とともに、単なる契約上の義務を超えて顧客のために自発的に最善を尽くすことが求められる。これがプライベートバンカーの職業倫理の考え方であり、公益社団法人日本証券アナリスト協会の職業行為基準において明文化されている。
プライベートバンカーが、職業行為基準に違背する事態が生じた場合には、サービス停止や登録抹消という懲戒処分を受けることとなる。
2:法令、自主規制とプライベートバンキング業務
銀行員を前提とすると、通常の銀行業務に比べてプライベートバンキングは広汎であるがゆえに関連の法令の縛りがきつくなる。支店の営業職員が担当する富裕層顧客から依頼されて行う銀行預金、投資信託、保険の販売は、銀行法、金融商品取引法あるいは保険業法で規定されている業務又は関連代理業務となる。富裕層顧客と友好的な関係性を築くことができれば、そのニーズを本店のプライベートバンキング部門につないでビジネス・チャンスを広げることも可能となるだろう。
顧客との間のコミュニケーションも進んで気心も知れ、相続・事業承継のアドバイスを求められたときは、投資政策書を作成して提案することになるが、その業務に対してコンサルティング報酬をもらうケースともらわないケースが考えられる。いずれにせよ、銀行の営業職員が一般論から一歩踏み込んだ税務の個別アドバイスをしてしまうと、税理士法に抵触するおそれがあるので注意が必要である。
そのような場合、銀行の本店にあるプライベートバンキング関連部署(プライベートバンキング部、ウェルス・マネジメント部、ソリューション企画部など)の専門職員を帯同して顧客を訪問させて、法令違反がないよう慎重に対応する。帯同訪問する専門職員は、税務について顧問税理士から事前に十分なアドバイスを受け、業務範囲を事前に明確にしておく。
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プライベートバンカーが提案する投資政策書は、税務、法務、企業経営など提案内容が広範囲にわたるため、支店の営業職員が自ら作成するのは困難であろう。それゆえ、通常はプライベートバンキング関連部署の専門職員に作成を依頼することになる。業務推進に伴う法令違反を避けるために、銀行内部のプライベートバンカーを活用するとともに、弁護士、税理士など外部専門家も活用する。こうしたチームによって作成した投資政策書を支店の営業担当者が使用し、法令遵守しながら富裕層顧客のニーズに沿った提案を行うのである。
3:プライベートバンカーの職業行為基準
プライベートバンカーとは、公益社団法人日本証券アナリスト協会が実施するプライベートバンキング教育資格試験に合格し、かつ協会が課している要件を充たすことによって、プライベートバンカー資格が付与された者のことをいう。
プライベートバンカーの社会的役割は、個人富裕層顧客へ最善のアドバイスを提供することである。また、職業行為基準では、最善のアドバイスを提供する信任義務に加えて、利益相反の排除、専門家としての能力の維持向上、顧客の秘密保持、投資の適合性が定められている。
プライベートバンカーの信任義務
① 「忠実義務」=お客様に忠実でなければならない。
② 「注意義務」=お客様への注意や配慮を行ってはならない。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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