日本ではあまり馴染みのない「プライベートバンカー」。富裕層のために、金融資産のみならず、事業再構築・事業承継についても「投資政策書」を立案し、長期的に実行を助ける専門家のことを指します。本記事では、岸田康雄公認会計士/税理士が、プライベートバンカーに求められる役割について解説します。

1:富裕層の資産運用において重要な「投資政策書」

投資政策書とは、富裕層のお客様が金融資産投資に係る意思決定を行う際に、その目標や資産配分方針を立案するものである。これを作成する目的は、投資の意思決定の判断プロセスを明らかにすることによって、アセット・アロケーションや投資対象・銘柄がお客様の投資目的に沿ったものであること、配分割合が妥当であることを明確化し、プライベートバンカーによる投資助言の内容をお客様に理解していただくことにある。

 

また、投資政策書は、投資の意思決定とその後の運用が明確な投資政策に基づいて行われたことを記録として残しておくためのものである。

 

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投資政策書において設定される投資の目標には、①期待収益率②リスク(標準偏差)がある。そして、その目標に基づいて資産配分(株式、債券など投資対象とする資産クラス、個別商品の選択など)を決定する。また、その後の運用における管理手続き、運用成績の評価方法を規定する。

 

投資政策書を作成することによって、様々な効果がある。まず、お客様とプライベートバンカーとの間で、投資政策がルール化されることにより、感情に流されない規律に基づいた投資意思決定を行うことができる。それによって、金融危機前後の相場の乱高下等、変動しがちな運用環境下においても、慎重な投資の意思決定を行うことができる。

 

プライベートバンカーの立場からは、①投資の意思決定が投資政策書に基づいて行われ、②顧客の投資目的に沿った運用が行われ、③目標を実現するために適切な助言が行われていることを記録する手段になるため、運用損失が生じた顧客から訴訟された場合において、それに対抗する法的な備えとなる。

 

プライベートバンカーが投資政策書を作成するためには、お客様との面談を通じて、個人情報を収集しなければならない。また、個人の生涯目標やそれに伴う投資目的の設定のために、お客様と徹底的にディスカッションを行い、相互理解を深める必要がある。

 

[図表]投資政策書の作成に必要な個人情報

 

資産運用の第一歩は、お客様の人生設計図であるライフプランを考えることである。つまり、自分や家族が、「これから人生をどのように過ごしていくか」という夢や目標を明確にすることから始まる。結婚や出産、住宅の購入、子供の成長に応じた教育や老後の生活など、それぞれのライフイベントとその時期を考える。そして、「そのライフイベントにはどれだけお金が必要になるか」、「いつまでにいくら用意すればよいか」などのマネープランを立てる。そうすれば、資金が必要となる時期や目標に合わせて、どんな金融商品を選べば良いかが見えてくるだろう。

2:目標運用利回りとリスク許容度を決定する

たとえば、40歳のお客様に老後生活資金として5,000万円あり、老後生活資金用に積み立てることができる金額が月20万円であるとしよう。このお客様が60歳までに積み立てる資金の合計額は、20万円×12ヵ月×20年=4,800万円である。

 

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これらによって60歳のときに2億円の老後生活資金を作りたいとすると、期待リターンの組み合わせの例としては、5,000万円は税引き後利回り5%、積立は税引き後利回り3.1%で複利運用していけば、60歳のときに利息を足し合わせて2億円という目標を達成することが可能となる。

 

ただし、5%という利回りで運用するためには、それに応じたリスクを取らなければならない。また、給与所得や保有資産の規模、住宅ローンなどの負債依存度、投資の経験などによって、お客様のリスク許容度も異なってくる。もし5%に見合うリスクが取れないのであれば、消費支出を10万円節約して毎月の積立額を30万円に増やしたうえで、すべての資金を3.2%で運用することができれば2億円の目標を達成することができる。

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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