日本ではあまり馴染みのない「プライベートバンカー」。富裕層のために、金融資産のみならず、事業再構築・事業承継についても「投資政策書」を立案し、長期的に実行を助ける専門家のことを指します。本記事では、岸田康雄公認会計士/税理士が、プライベートバンカーに求められる役割について解説します。

1:契約獲得を阻む「4つのハードル」とは

プライベートバンカーが運良く富裕層のお客様を見つけることができ、プライベートバンキング業務の提案を行ったとしても、すぐに契約が取れるというものではない。契約するかどうかの意思決定にはいくつかの阻害要因があるため、それらを取り除かない限り、契約は締結してもらえない。時間はかかるかもしれないが、お客様がどのような要因に引っかかっているかを適切に把握し、それらを1つひとつ丁寧に取り除いていく必要がある。

 

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド社によれば、売り込まれた場合に買い手が感じるハードル(阻害要因)として次の4つがある。

 

第1に、不信のハードルである。そのプライベートバンカーは信頼できるかどうかという点であるが、顧客紹介であれば、早い段階から信頼してもらうことができる。

 

第2に、不要のハードルである。これは、プライベートバンカーが指摘するような課題は抱えていない、解決の必要はないと誤解してしまう拒絶反応である。これについては、お客様の悩みを1つひとつ丁寧にヒアリングし、理解を深めることができれば、時間をかけて解決できる阻害要因である。一般的に、相続生前対策や事業承継対策についてその必要性はないと考えているお客様は多い。それらの対策に関係するお客様の課題や問題点、対策の必要性、解決したときの効果を丁寧に説明することによって、その必要性を理解してもらうことができる。

 

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第3に、不適のハードルである。これは、明確化できた課題に対しプライベートバンカーが提案する解決策を、お客様が適切なものではないと考える拒絶反応である。これについては、プライベートバンカーの提案に対するセカンドオピニオンを取らせたり、お客様の周囲の相談相手や顧問税理士を説得したりすることで外堀を埋めるアプローチが有効である。

 

第4に、不急のハードルである。富裕層は忙しい。ほかに重要な課題をたくさん抱えており、プライベートバンカーから提案された課題は急ぎで対処する必要はないと躊躇する拒絶反応である。繰り返しになるが、相続生前対策や事業承継対策について、対策の実行を急ぐ必要はないと考えているお客様は多い。それゆえ、対策が手遅れとなるケースも総じて多いのである。これについても、「不要のハードル」と同じように、対策の必要性、タイミングの重要性、遅くなった場合の問題や解決したときの効果を丁寧に説明することによって、その実行を急ぐように促すことが有効である。

 

売り込まれた場合に買い手が感じるハードル(阻害要因)

①不信のハードル

②不要のハードル

③不適のハードル

④不急のハードル

2:既存のお客様の関係性を維持するには

プライベートバンカーの営業活動としては、新規顧客の開拓よりもむしろ既存顧客の維持のほうが重要である。なぜなら、新規顧客は既存のお客様からの紹介によって獲得することが基本だからである。したがって、既存顧客の関係性維持はプライベートバンカーにとって極めて重要な仕事となる。

 

お客様との関係性は、会うこと、連絡を取ることによって維持されるが、どのようなコミュニケーションの手段をとるかは、その目的によって決定する。

 

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たとえば、運用報告や具体的なサービス提案には、対面によるコミュニケーションが不可欠である。しかし、継続的な情報提供については、いちいち時間を取られることを煩わしいと感じられるおそれがあるため、電子メールやダイレクトメールのほうがよい。また、金融情報だけでなく、相続・事業承継のような金融以外の有用な情報の提供も喜ばれる。金融商品取引の実行など、記録を残しておく必要のあるものについては、電子メールを使用することがトラブル防止につながる。

 

お客様とお会いする頻度については、お客様の重要性に応じて時間配分を決めるべきである。可能であれば、CRM(顧客関係管理)のデータベース等を活用し、営業活動の費用対効果の分析とPDCAによる顧客管理サイクルの継続を行いたい。具体的にいうならば、重要なお客様には、ゴルフ、宴席などの機会を定期的に設けるなど、お会いする頻度を高め、その一方で重要でないお客様とお会いする頻度は最小限に抑えるということである。

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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