「アンパンマンのアンパンチは暴力的ではないか?」という議論が、つい先日ネットで話題になりました。幼児が暴力的になることを恐れた親の意見に、過剰すぎるとの声も高まっていますが、その一方で、子どもたちがテレビやYouTubeから影響を受けるのは、紛れもない事実です。「いじめっ子」にならないために、親に求められていることとは一体なんでしょうか。幼児教育実践研究所こぐま会代表・久野泰可氏の書籍『子どもが賢くなる75の方法』より一部を抜粋し、解説します。

子どもは「メディア」から流れでた言葉を聞く

コミュニケーションの基本は、言うまでもなく「言葉」です。多くの大人は言葉に対して「いつの間にか、自然に覚えていくもの」と思っていて、「子どもが言葉を獲得すること」についてあまり深く考えていないのではないでしょうか。

 

子どもは1歳半くさいから急速に言葉を獲得し始めます。この時期の子どもは、さまざまな経験を通じて言葉を覚え、少しずつ使いこなすようになります。

 

このときに重要なのは、「子どもがどんな経験をして、どんな言葉を獲得していくか」に尽きます。

 

今、子どもの耳にはさまざまな「言葉」が飛び込んできます。その多くは、残念ながら実際にその場にいる人が発するものではなく、テレビやDVDなどのメディアではないでしょうか。その結果、幼いのに大人びた言葉づかいをしたり、難しい言葉を知っている子どもに会うことがあります。

 

しかし、たとえば「川」という言葉も、実際に川に入って流れに足を取られないよう踏ん張った経験や、葉っぱなどを流してその速さに驚いたことがある子どもと、川の実体験をしたことのない子どもでは、言葉からくるイメージに大きな違いがあります。

 

あるいは、親が早朝出勤や深夜帰宅などで「いってらっしゃい」「おかえりなさい」を言う機会がない子どもは、「おかえり」と言いながら家に帰ってくるなど、言葉の使い方を間違えている例がよく見られます。

 

このように、「単に言葉を知っている」ことよりも、「どんなときに使うのか」「その言葉が表現しているのはどのようなことか」をさまざまな体験を通して身につけ、使いこなせるようになることが、幼児期はとても重要です。

 

そのためには、日常生活でさまざまな場面を経験して言葉を使うだけでなく、できるだけさまざまな場所に行き、普段ではできない体験をさせることが、生き生きとした言葉を使いこなせるようになるために欠かせないのです。

発達には個人差があるのを忘れないこと

「他人と比べない」とは、よく言われることです。しかし、本当に実践できている人はどれほどいるでしょうか。特に、子どものこととなると他人と比べずにはいられない方が相当数いるのは、私も日々実感しています。親は我が子を見るとき、他の子どもを見るよりも厳しくなってしまいがちです。

 

我が子のいいところよりも悪いところが目につき、気になってしまうのは、「我が子がもっとよくなってほしい」という親心の表れです。「どんな子にも探せば得意なことがある」ことを、我が子に限って忘れやすいのです。

 

特に幼少期は生まれ月によって成長に驚くほどの差があります。それなら親としても納得しやすいのでしょうが、「ほぼ同じ時期に生まれているのに、あの子はできるのにうちの子はまだできない」ということも、ごく当たり前にあるのです。

 

ところが、親としては「我が子が劣っている」証拠のように思え、不安でいっぱいになってしまうのです。特に幼児期は、「あの子はもう字が読める」「10までの計算ができる」など、我が子ができないことを簡単にできる子どもが現れる時期であり、「あの子に追いつかなければ」と焦って、無理な勉強を始めるきっかけになりがちです。

 

改めて言うまでもありませんが、子どもの発達には個人差があります。歩き始めるのが早かった子がいるように、文字に興味を持ち、読み書きができるのが早い子どももいます。

 

しかし、読み書きや数を覚えるのが早かったことが、その後「頭のいい子」に育つことを保証してくれるわけではありません。

 

その子なりの時期がくれば、子どもは必ず身につけていきます。他人に基準を求めるのではなく、その子自身の育ちぶりを基準にし、比べることなく成長を見守ることが大切です。

いじめを引き起こさない子にするためには?

子どもの年齢に関わらず親が心配することに「いじめ」の問題があります。

 

授業中にも関わらず子どもが立ち歩いたり騒いだりする「小1プロブレム」が問題になっていたりしますが、「周囲の迷惑を考えることができない、決まりを守ることが理解できない」という子どもは、得てして「いじめ」の問題を引き起こしがちです。

 

子どもが何歳であろうと、「いじめ」を心配する親は数多くいます。しかし、その不安の内容は子どもの年齢によって異なります。

 

子どもがある程度の年齢になると「いじめられないか」と被害者になることに対する不安を持つ親が多いのに対し、幼児期から小学校低学年にかけての幼い時期は、我が子が被害者になること以上に、「いじめ」の加害者になることを心配する親が多くいるのです。

 

幼い時期に善悪の判断が未熟な子どもはたくさんいます。「いじめる」という気持ちがなくても、自分のやりたいことを通したり、欲しいものを手に入れるため、結果的に友達に対して乱暴になったり、相手の気持ちを顧みない行動をしてしまうのは、決して珍しいことではありません。コミュニケーション能力の未熟さや、「相手の立場を考える」習慣がないことが引き起こしてしまうといえるでしょう。

 

とはいえ、まだ幼いから仕方ないと済ませてよい話でもありません。できるだけ友達と遊ぶ機会を増やし、時にはぶつかり合い、泣いたり、泣かせたりをくり返しながら人とのコミュニケーションを学んでいくことが、遠回りのように見えても我が子を「いじめっ子」にしない方法なのです。

 

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