税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
「M&A」は一朝一夕でできるものではない
ゼロ金利時代を反映し、銀行も金利から手数料ビジネスにシフトしている。そのなかで高収益源となっているのは、何といってもM&Aの仲介手数料である。手数料というと、自ら顧客にコンサルティングを行い、その会社の付加価値を伸ばし高収益企業に育て上げて高く売るイメージがあるものの、実際は顧客をM&A仲介会社につなぎ、成約したら紹介料を受け取っているだけのケースが多い。これは会計事務所も同じことがいえる。
たとえば、「うちは後継者がいないのでM&Aで会社を売りたいのですが……」と質問され、「はい、わかりました。探してみましょう」と答える人は、頼りになる相談相手といえるのだろうか。その会社のことをよく理解していたら「売れる会社になっていない」ことを伝え、「売れる会社にするにはどうすればいいのか」をアドバイスするはずだ。「はいわかりました」は、「はい、M&A仲介会社にすぐ連絡します」と同じくらい軽い返事だと考えていいだろう。
M&Aのコンサルタントからは、よく「カリスマ社長の会社は、M&Aが成約しにくい」という言葉を聞く。これは、カリスマ社長本人がM&Aで株を手放して引退する=主役不在になった=成長が見込めないと捉えられ、買い手は単に売り上げ先や知的財産権などのノウハウを買うだけになってしまう(=過去を買う)ということらしい。逆に、「売りやすい会社は仕組みができている会社」(=将来を買う)であるということだ(頼りになる銀行や会計事務所は「この仕組み作り」の手伝いができる存在である)。
もちろん、後継者のいない会社でM&Aが成約し、みんなが幸せになっているケースはたくさんある。しかしそうでないケースのほうが断然多く、急に売りに出してもそんなに簡単に売約することはできない。
何らかの事情ですぐに売らなければならない場合は仕方がないが、社長の高齢化は突然やってくるものではない。数年前から準備を始めれば十分に間に合うはずだ。もしM&Aを考えているのなら、社長は「ぼんやり買い手を探す」のではなく、今すぐにでも「誰もが欲しがる会社」にする努力をすべきではないだろうか。
税理士が解説!「自分自身が後悔しない選択を」
◆「役員報酬を最初にとるか、最後にとるか」で将来は決まっている
会社の行く末は、①上場 ②事業承継 ③M&A ④廃業(清算)の4つしかありません。会社を起こす段階からどれにするのか決められればいいのですが、事業を始めたばかりでは、軌道に乗せることに頭がいっぱいで、将来のことなどあまり考える余裕はありません。
一方、設立当初から上場を目指す、または将来売り抜ける前提で組織作りを始める若手経営者も最近は現れています。両者の違いは、役員報酬とバランスシート(貸借対照表)に出てきます。
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ふつうの社長は、まず自分が役員報酬をたっぷり受け取ることを考えます。一方上場やバイアウト(買収)前提の経営者の場合は、仕組み作りを優先するため、インフラ整備や人材育成に重点を置き、従業員が満足する給料を確保してから、自らの給料を決定します。ましてや親族を役員にしたり、家族経費をどう落とそうか考えたりはしません(そんなことをしていたら、従業員の士気が低下することをよく理解しているからです)。
また、ふつうの社長は損益計算書(とくに売り上げ)ばかり意識します。もちろん収益性や売り上げ規模の拡大は必要です。しかし、損益重視や成長重視にこだわると、売掛金や在庫が膨らみ資金ショートを引き起こしたり、営業マンの顧客を無視した過度な受注活動が起きたりします。会社の価値は、貸借対照表の純資産が基本であることを忘れてはなりません。
◆華やかな清算も男の美学
従業員が思うように動かない場合、「みんながしっかりしないとこんな会社売るかもしれない」とついついぼやく社長さんがいますが、これで従業員が一念発起するかといえばそれは逆効果です。いまどきの従業員は「転職先なんかいくらでもある。こんな会社にいても将来性はない」と見限ってしまいます。ただし皮肉なことに、今の社長に期待していない場合、資本提携や技術提携の話があれば、みんな生き生きしてくることでしょう。
そもそもの話ですが、後継者(親族だけでなく生え抜き含む)がいないのを理由に、すぐにM&Aに走る必要もありません。後継者がいても、技術進歩によりこれから消滅するといわれている業種や、高齢化・消費力低下により、自社だけが頑張ってもどうにもならないケースもあり、その場合は負の遺産を引き継がせることにもなりかねません。この意味では、同じスタート地点に立っているのです。
以前ある会社の創業者が、M&Aのデューデリ時に、自分の子供のような年齢の先方の経理責任者から「なぜこの赤字部門を続けていたのか?」と過去の経営手法をさんざん責められたことがありました。
実際は、その赤字のおかげで改善できた点がたくさんあり、テストマーケティング的な位置づけの事業でしたが、その担当はまったく理解を示しませんでした。逆の立場であれば仕方がないのでしょうが、社長は「サラリーマンのお前にここまで苦労したオレの何がわかるんだ!」と心のなかで叫んでいたに違いありません。
屈辱的な思いをしながら手放すなら、内部留保が十分なうちに、お客様を信頼できるところへ引継ぎ(部分的な営業譲渡)、いい条件で従業員の次の仕事先をあっせんし、自分の老後資金の確保などを行ったうえで引退する、自分自身が後悔しない商売の終わり方も「男の美学」ではないでしょうか。
内藤 克
税理士法人アーク&パートナーズ 代表社員/税理士
著書に『残念な相続』(日本経済新聞社)など
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