税理士が語る…経理部長が「いらないポジション」になるワケ

税理士が語る…経理部長が「いらないポジション」になるワケ

中小企業では相変わらず採用難が続いている。残業を減らそうが、待遇面を改善しようが、人は来ない。実際、会社自体の問題ではなく、労働需要に供給が追い付いていないから、手の打ちようがないのかもしれない。とくに経理責任者となると、経験がものをいうポジションであるため、さらに採用が難しい。そんななか、「現在の経理部長が定年になったらもう採用しない」という会社も現れ始めた。

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「売上げを伸ばすことだけ」に集中する社長も多いが…

◆経理部長の役割とは?

 

昔から社長は営業出身者が多く、「経理が苦手」の人も少なくない。そのため「銀行への決算報告や資金繰りなどは、経理部長に任せっきりでいい。というか、それは経理部長の仕事だから、自分は売上げを伸ばすことだけ考えればいい」と信じている経営者もいることだろう。確かに、経理とは、取引を仕訳に分解・記帳処理し(会計システム入力)、決算書(試算表)を作成する作業であるため、社長が行う必要はなかった。

 

しかし、今はそういう時代でもなくなってきた。会社のマネジメントとなると、その試算表をもとに業績を分析、改善へと導かねばならないため、決算書を読み解く力、そして株主や債権者に説明する力も必要となる。単なる「優秀な元営業マンの社長」で終わらないためのは、このスキルは必須といえる(裏を返せば、この力がない社長には、優秀な経理部長が必要となる)。

 

◆銀行は社長から聞きたがっている

 

銀行は、会社から提出された試算表などの資料を自行のシステムに入力し、財務分析をする。そのため、最近の銀行員は決算書が読めなくなっているとも聞く。今までは銀行支店長(または課長)への説明は、経理部長または銀行の担当者が行っていたが、これをシステム(いずれはAI)が行ってくれるとすると、銀行の担当者も経理部長もいらなくなる。

 

むしろ銀行は、会社が将来にわたりどう利益を出していくのか、どの方向に進むのかを中心にヒアリングすることになる。つまり、将来を具体的に語れる社長が存在すれば十分というわけだ。経理部長も、最終的には会計士や税理士に判断を仰いでいるのだから(社長+会計専門家)のタッグでも十分かもしれない。

税理士が解説!「簿記の知識」がいらない時代に

◆会計事務所の提案力が試される

 

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ネット環境が整備されてきたことにより、ここ2、3年でクラウド会計も進化してきました。また、今年の消費税改正に伴い、会計プログラムを更新しなければならず、多額の更新料や保守料を負担しなければならないケースも発生するため、さらにクラウドへシフトしてゆくものと考えられます。クラウド会計では、ネット環境さえあれば会計システムにアクセスでき、パソコンそのものにソフトウェアをインストールする必要がないため、これからのリモートワーク時代には欠かせないものと考えられます。

 

導入にあたって「基礎入力は会社で行い、困ったときは会計事務所」ということであれば、会計事務所主導で行うべきでしょう。進歩的な会計事務所では、ITコーディネーターも配置し、事務所そのものの業務効率化を図っています。このような事務所にお願いするのが最適でしょう。

 

◆重複作業の排除がポイント

 

筆者自身、eファイリングの視察でエストニアへ赴いた際感じたことですが、効率化のポイントは「データ入力は1回、あとはそのデータを共有する」ということです。

 

「給与計算システムの結果を会計仕訳に転換して流し込む」や、「売上管理システムのデータを会計システムに連動させる」などはかなり前からありますが、「インターネットバンキングのデータをクラウド会計で自動仕訳する」や、「クレジットカードなどの電子決済に変更しデータを取り込む」などは、最新のアプリを活用することにより導入が可能となりました。現金払いをなくすことにより領収書の処理が不要となりますし、消費税導入に伴うポイント還元の対象にもなります。

 

また、すでに業務用のPOSシステムを利用している場合には、会計システムに入力しなおすのではなく、データを仕訳変換するブリッジシステムを活用すれば手作業もなくなります。通帳コピーや領収書をスキャンするだけでデータ化できるAI入力システムも実用化されているため、導入すれば人員を大幅に削減できます。簿記の知識がなくても、これらを組み合わせることにより、決算作業を行える時代になってきたのです。

 

あとは、社長が自分の会社の財務諸表を読みこなせるようになれば「経理部長のいらない会社」になるでしょう。

 

 

内藤 克

税理士法人アーク&パートナーズ 代表社員/税理士

著書に『残念な相続』(日本経済新聞社)など

 

 

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本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2019年7月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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