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いまや「物いわぬ株主」なんていない
◆どんな株であっても「価格下落」のリスクはつきもの
株式投資を始めるきっかけはいろいろある。「海外旅行が趣味のため、旅行会社の株式を購入して株主優待を利用してみたい」、「経済学部に進学したから、貯金したお年玉を勉強がてら投資に使ってみたい」など。また上場企業では、会社の一定の補助(賞与や給与補てん)のもと、毎年持株会を通じて自社株を購入する場合や、確定拠出年金(401k)で株式投資をする場合のように、「よく理解していないけど会社の制度だから」、「皆がやっているから」という理由で、なんとなく保有しているケースもある。
しかし、いずれのケースでも、会社の業績が悪くなれば株価は下がるというリスクぐらいは最低限誰でも知っている。
特に、自分が勤めている会社の場合、業績が悪化すれば、昇給停止になったり、賞与が支給されなくなったりする。そんなときに勤務先の会社に投資していたら、年収は減るわ株価は下がるわで踏んだり蹴ったりだ。リスクヘッジの観点からいえば最悪のポートフォリオとなり、Don’t put all your eggs in one basket.(全財産を1つの運用先に投資するな)という言葉の逆を張ることになる。
◆時代錯誤となった「物いわぬ株主」というスタンス
上場していない(または上場準備中でない)株式のケースを考えてみよう。このような会社では、自由に譲渡できないし(譲渡制限)、将来性も見込めないと従業員が判断することもあるはずだ。出口を考えたとき、つまり退職するときに、会社の業績がたまたま悪ければ、いくらで買ってもらえるかわからないので、どうしても株式の保有に対して消極的になってしまう。
昔の株主は「物いわぬ株主」。ましてや従業員株主は、総会屋から会社を守る頼もしい存在であったが、現在はパワハラ、セクハラ、未払残業代請求など、労働者であっても正当な権利を行使してくる時代。株についても、「物をいう」権利がある。
以上の従業員側の立場を考慮すると、オーナーサイド側は本当に「持たせてあげようと思ったのに残念だ」となるのだろうか? あとから考えると「断ってくれてありがとう」となるケースのほうが多いのではないか……。
税理士が解説!「株主の権利」が持つ影響力は甚大
◆株主の権利
株主には大前提として「株主平等の原則」が存在します。これは、主に「配当」や「議決権」を株式数に応じて求めているものです。あいつは嫌いだから配当しないとか、決議に参加させないといったことができないのです。
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また株主には、①配当を受ける権利、②残余財産の分配を受ける権利、③議決権を通じて経営に参加する権利が与えられています。つまり、従業員は株主になることで経営に参加できるようになるのです。しかし、もし本格的に経営に参加させたいと考えているのなら、まず役員にさせるべきではないでしょうか。
また、持株割合に応じてさまざまな権利が与えられますが、3%以上保有すると、「帳簿閲覧権」を有することになります。この権利を行使されると、「社長の交際費の使い方を確認したいので、総勘定元帳を見せてください」といわれたら、応じなければならないのです。元帳はもとより、自社の決算書も堂々と見せることのできる社長がどれほどいるのでしょう。
◆退職時の買取と買取価額
従業員が退職するとき、通常は株を売却して退職しますが、この場合買取価額が問題となります。時価の算定の説明が難しかったり、従業員側の理解不足から買取価額でもめたりと、理由は多々あります。「昨年退職した○○さんは△△円で買い取ってもらったそうじゃないですか?」とか「こんなに長い期間勤めたのにこんな金額ですか?」という具合です。
交渉に行き詰まった従業員が「じゃあヤバい奴に売っちゃいますよ」と脅してきたときに、「譲渡承認(株式譲渡の際における取締役会の承認)をしなきゃいいんだろ」と安心してはいけません。譲渡を承認しない場合は、会社が買い取りを迫られることになり、ここで株価算定が疑わしいと、裁判になる可能性もあるからです。
◆それでもというなら持株会を
未上場会社でも、持株会を設置している会社はあります。これは従業員が直接株を持つのではなく、持株会を通じて間接的に保有する仕組みです。規約で「持株会の会員資格(従業員であること)を失ったときには株を手放す」という決まりを設けておけば、退職時にもめることもありません。買取価額についても、あらかじめ決めておけばいいのです。しかし、退職者が置いていく株を持株会が取得しきれない場合には、オーナーが買い取らなければならないこともあるため、非上場会社にはなかなか難しいのも事実です。
持株会の構成員には、配当を優先する代わりに議決権を与えない(配当優先無議決権株)などの工夫が必要となってきます。
内藤 克
税理士法人アーク&パートナーズ 代表社員/税理士
著書に『残念な相続』(日本経済新聞社)など
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