オーナーになるメリットは?表参道・原宿の「期間限定店舗」

世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社が、ポップアップストアについてまとめた「ジャパンリテールビューポイント 開花するポップアップストア」より一部を抜粋して紹介します。表参道や原宿にポップアップストア(期間限定店舗)を出店、またはオーナーになることを考えた際、どのようなメリットやリスクが考えられるでしょうか。

「テナント企業」のメリットとリスク

企業が、テナント*1として路面店舗でポップアップストア(期間限定店舗)を出店することのメリットとリスクを考察した[図表1]。メリットとしては主に3つのことが挙げられる。

 

[図表1]テナント企業からみたメリットとリスク
[図表1]テナント企業からみたメリットとリスク

 

◆企業がテナントとして「ポップアップストア」を出店することのメリット

 

1つ目は、出店の時期や期間を、比較的柔軟に決められることだ。新商品の発売やリブランドのタイミングなどに合わせて、長期契約を結ぶことなく路面店舗スペースを借りられる。

 

2つ目は、常設店舗に比べて出店コストの負担を抑えられることだ。高額な敷金/礼金、ランニングコストが不要なため、資金のやり繰りが容易であり、常設店舗では予算が合わないような賃料単価が高いハイストリートへの出店も可能となる。

 

3つ目は、短い期間のなかで計画から消費者分析まで完遂する実践マーケティングがおこなえることだ。特定の商品やイベントのプロモーションとして使うことができるほか、実験的なコンテンツやサービスの提供も可能だ。また、消費者とのコンタクトポイントとして、反応をダイレクトに聴くことができるほか、収集データの分析をおこなうことで今後の商品開発や店舗運営に即時に活かすこともできる。

 

◆企業がテナントとして「ポップアップストア」を出店することのリスク

 

一方、リスクとして主に3つのことが挙げられる。

 

1つ目は、出店需要に比べて路面店舗スペースの供給が少ないため、必ずしも出店したいエリアや立地を自由に選べない可能性があることだ。特に、表参道や原宿の人気エリアでは、2020年のオリンピック期間中はすでに予約が入っているケースもある。また、たとえポップアップストアが好調だったとしても、次の契約が入っていて期間延長ができない場合もある。

 

2つ目のリスクとしては、出店コストの総負担額は抑えられるものの、賃料単価は相場を大きく越えてしまう可能性が高いことが挙げられる。理由は、賃貸オーナーとポップアップスペースを運営する企業との間に、路面店舗スペースを賃借するテナントとしてイベント会社が入っているケースが多いためだ。また、たとえそのような仲介業者がいなくても、短期間でテナントが入れ替わるポップアップストアで運用しているスペースであれば、空室期間のリスクヘッジのために賃料単価は高くならざるを得ないだろう。

 

3つ目は、想定どおりのプロモーション効果が得られない場合もあることだ。企業がターゲットとする消費者に訴求できない、または共感が得られない際に、ネガティブな情報が一気に拡散されるリスクがある。

 

*5:施設利用契約のケースもあるが、わかりやすさを重視し賃貸借契約のもとで不動産を借り受ける賃借人を指す“テナント”を使う

「不動産オーナー」のメリットとリスク

不動産オーナーがその物件にポップアップストアを出店させる際、オーナーが自らポップアップストアを運営するパターンと、イベント会社などに運営委託または賃貸するパターンの2つがある。[図表2]では、それぞれの方法のメリットとリスクをまとめた。

 

[図表2]不動産オーナーからみたメリットとリスク
[図表2]不動産オーナーからみたメリットとリスク

 

◆不動産オーナー自らが運営するメリット

 

まず、オーナー自らが運営するメリットとして、主に2つのことが挙げられる。

 

1つ目は、出店してほしいテナントを選べることだ。人気の高い、あるいはニュース性の高いブランドを誘致することは、所有物件の不動産としてのバリューアップにつながるだろう。

 

2つ目は、収益となる賃料収入が最大化できることだ。イベント会社などに運営委託または賃貸しないため、賃料の全額享受が可能となる。

 

◆不動産オーナー自らが運営するリスク

 

一方、リスクとしては主に3つのことが挙げられる。

 

1つ目は、出店テナントを探すリーシングにコストと時間が掛かることだ。オーナー自らがリーシングをするには、幅広い企業とのコネクションが必要であり、外部へ依頼するのであれば仲介手数料などのコストが掛かる。

 

2つ目は、空室期間が発生するリスクが高まることだ。現在は出店ニーズが旺盛であるため、テナントの引き合いは多いだろう。しかし、市況の動向次第では、空室期間が発生することも考えておく必要がある。

 

3つ目は、オペレーションの難易度が高いことだ。ポップアップストアのコンテンツやイベントの内容に合わせて、法令遵守の対応をとる必要がある。また、運営管理といったプロパティマネジメントのスキルも求められる。

 

◆イベント会社に運営委託・賃貸するメリット

 

次に、イベント会社などに運営委託または賃貸するメリットとして、主に3つのことが挙げられる。

 

1つ目は、空室期間が発生するリスクが低減できることだ。イベント会社などが賃借人となれば、常設店舗と同等期間の安定収入が得られる。また運営委託であっても、幅広いコネクションから優良テナントを誘致しやすいほか、煩わしい契約関連の業務も委託できる。

 

2つ目は、難易度が高いポップアップストアのオペレーションすべてを、ワンストップで依頼できることだ。過去からの経験の蓄積があり、高い専門知識に基づいた遵法性が担保されたストア運営が任せられる。

 

3つ目は、ストアのプロモーション効果を最大化するアイデアや企画を豊富に持っていることだ。そのため、ポップアップストアを使ったプロモーションに不慣れなブランドを誘致する際の強みとなり得る。

 

◆イベント会社に運営委託・賃貸するリスク

 

一方、リスクとしては主に2つのことが挙げられる。

 

1つ目は、ポップアップストアに入居する企業をオーナー自らが選ぶことができないことだ。自身の嗜好に合わない企業の入居を甘受しなければならないこともある。また、業態やブランドによっては、物件のバリューが下がってしまうリスクも考えられる。

 

2つ目は、賃料による収益が相場を下回る可能性があることだ。イベント会社などに賃貸する際の賃料単価は、相場水準ないしは好立地ではやや上振れることもある。ただし、エリアの市場感や所有物件の優位性を正しく把握しておかないと、相場を下回る賃料で契約してしまう可能性があり、注意が必要だ。

5Gサービス開始で、ポップアップストアはさらに増加か

路面店舗スペースのポップアップストアは、ハイストリートを中心とした出店から、ハイストリートから少しなかに入ったセカンダリーエリアにも拡大している[図表3][図表4]。そして今後も、増加の傾向が続くと考えている。

 

[図表3]表参道・原宿の路面店舗のポップアップストア(2015年)
[図表3]表参道・原宿の路面店舗のポップアップストア(2015年)
[図表4]表参道・原宿の路面店舗のポップアップストア(2018年)
[図表4]表参道・原宿の路面店舗のポップアップストア(2018年)

 

その主な理由は、次世代の無線通信システム、5G*1が2020年にも商用化されることだ。5Gの導入によって、「超高速」「超大容量」「超大量接続」「超低遅延」といった無線通信環境が整う。それにより、大容量の映像配信やVRと呼ばれる仮想現実を使ったポップアップストアの企画・運営が可能となることが想像される。

 

また、プロモーションの方法や実施の幅が広がることで、出店ニーズのみならず、出店エリアが拡大することも考えられる。“消費者嗜好の多様化”や、“モノが売れない時代”という言葉が散見されるなかで、メーカーや小売企業は消費者とのコンタクトポイントとなる実店舗を重要視している。特にポップアップストアは、特定の商品やイベントのプロモーションに向いている。また常設店舗に比べて柔軟な出退店が可能となるほか、コストを抑えることもできる。

 

新しい路面店舗スペースの貸し方として、ポップアップストアという選択肢が不動産オーナーに浸透することで、出店需要はさらなる広がりをみせるだろう。

 

*1:現在の最新モデル4G(第4世代携帯電話)あるいは4GLTEの上位に位置づけられる次世代の移動体通信の通信方式や携帯端末の通称

 

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CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本調査は、東京の主要リテールエリア(=銀座、表参道・原宿、新宿、渋谷)において、Webベースの調査結果をまとめたものです ※調査期間は2019年3月20日~4月8日 ※本文書は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社は、貴社又は第三者が本文書に基づいて行われた検討、判断、意思決定及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。

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