街中に「コワーキングオフィス」…急増の背景にある様々な事情

今回は、「特別レポート コワーキングオフィス - 新たな働き方のプラットフォーム」から抜粋し、「コワーキングオフィス」の市場が急拡大している理由を探っていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

なぜ「コワーキングオフィス」は増加しているのか?

増加の社会的背景と増加の要因

~コワーキングオフィスは黎明期、普及期を越え、発展期へ

 

コワーキングオフィスの増加を支えた社会的背景をまとめると、以下の4つの要因にまとめられる。①起業数の増加、②ビルオーナー側の高空室率時のリーシング戦略、③リモートワークの必要性の高まり、そして④生産性向上の課題解決の一手段。

 

[コワーキングオフィス増加の4つの要因]

①起業数の増加

即時に、低コストでビジネスを開始できるオフィス需要の増加

②高空室率時のリーシング戦略

まとまった面積を使用するテナントとしてのコワーキングオペレーター

③リモートワークの必要性

災害リスクへの備えや、雇用の繋ぎ止め及び獲得策

④生産性向上の一手段

組織外のカルチャーに触れ、ノウハウを学び、さらには協働し、或いは優秀な人材を採用する

 

  [図表1]コワーキングオフィスの増減に関連する2000年代の主な出来事


[図表1]コワーキングオフィスの増減に関連する2000年代の主な出来事
 

 

[図表2]コワーキングオフィス開設面積、起業数*、空室率の推移 ※注:起業数は、会社設立登記の件数(株式会社、特例有限会社、合名会社、合資会社、合同会社)(出所:法務省、CBRE、2018年9月)
[図表2]コワーキングオフィス開設面積、起業数*、空室率の推移 ※注:起業数は、会社設立登記の件数(株式会社、特例有限会社、合名会社、合資会社、合同会社)(出所:法務省、CBRE、2018年9月)

 

それぞれの要因(ニーズ)に応えるかたちで、コワーキングオフィスのタイプも多様性が生まれている。現状、大きく4つのタイプに分けられる(図表3)

 

[図表3]コワーキングオフィスのタイプ *Small and Mid-size Enterprise(出所:CBRE 2018年9月)
[図表3]コワーキングオフィスのタイプ *Small and Mid-size Enterprise(出所:CBRE 2018年9月)

 

立地で見るコワーキングオフィス

~オフィス集積に比例するとは限らない

エリア別でコワーキングオフィス市場規模(図表4)が最も大きいのは、「丸の内・大手町」。次いで「六本木・赤坂」、「渋谷・恵比寿」と続く。

 

賃貸オフィス市場に対する割合で見ると、高い順に「城西」、「渋谷・恵比寿」、「六本木・赤坂」、「丸の内・大手町」と続く。IT、金融(Fintech)、スタートアップ企業の集積地を中心にコワーキングオフィスの浸透が進んでいる。

 

一方で、「神田・飯田橋」、「新宿」、「品川・田町」は、賃貸オフィス市場に占めるコワーキングオフィスの割合は相対的に低い。弁護士事務所や保険会社など、高い情報セキュリティが求められる業種が集積するエリアであることが主因と見られる。また、一般に大手メーカーが集積するエリアでも、コワーキングオフィスの開設の割合は低い。

 

[図表4]エリア別コワーキングオフィス市場規模と賃貸オフィスに対する割合(出所:CBRE、2018年9月)
[図表4]エリア別コワーキングオフィス市場規模と賃貸オフィスに対する割合(出所:CBRE、2018年9月)

 

規模で見るコワーキングオフィス

~利用者層に応じて伸縮するコワーキングオフィス

 

拠点数(図表5)は、多い順に「城西」、「渋谷・恵比寿」、「神田・飯田橋」、「八重洲・日本橋」、「六本木・赤坂」。

 

「城西」はほとんどが50坪未満の小規模なコワーキングオフィスである。地域密着型の小規模企業や個人が利用しているケースが多い。また、移動負担軽減のためのサテライトオフィスやタッチダウンオフィスとしての需要も厚いエリアである。保育施設併設のコワーキングオフィスも多く、子育て世代の就労負担を軽減するサービスが付加された形態も浸透している。

 

「渋谷・恵比寿」は拠点数も多く、面積帯も小規模から大規模まで幅広い。スタートアップ企業及びスタートアップから成長した企業まで幅広い受け皿があり、エリアへのこだわりが強い需要層に支えられている。

 

「丸の内・大手町」は拠点数は少ないが、高い水準のサービスが付加された大型のコワーキングオフィスが多く、一定規模以上の企業への訴求を志向していると考えられる。

 

[図表5]規模別拠点数出所 ※左から、市場規模の大きい順(出所:CBRE、2018年9月)
[図表5]規模別拠点数出所 ※左から、市場規模の大きい順(出所:CBRE、2018年9月)

 

ビルグレードで見るコワーキングオフィス

~大企業向けのコワーキングオフィスは未だ限定的

 

全346拠点のコワーキングオフィスのうち、276拠点(80%)がGradeB未満のオフィスビル、若しくはオフィスビル以外の用途の施設(住宅、ホテル、物流施設、公的施設)に入居している(図表6)。築年数の経過したビルに入居するケースも多く、そのような利用者の中には、築年数が経過したことによるガレージのような印象(ヴィンテージ感)を好み、敢えて古いビルを選択しているケースもあるようだ。

 

一方で、築年数が経過していることから、ビルの建替えのために入居中のコワーキングオフィスも閉鎖され、利用者にとってはコミュニティが消失するリスクもある。近時利用が進む企業による利用については、従業員の安全を担保するため、耐震性に不安のあるビルに入居するコワーキングオフィスの利用は難しい。そのため一定のグレードを有するビルに入居するコワーキングオフィスを選択することになるが、そのような選択肢はまだ極めて限られている。

 

  [図表6]入居ビルの傾向(出所:CBRE 2018年9月)


[図表6]入居ビルの傾向 ※各グレードは、図表7を参照(出所:CBRE 2018年9月)
 
[図表7]東京23区ビルグレード定義
[図表7]東京23区ビルグレード定義

 

コストで見るコワーキングオフィス

~ランニングコストは一般オフィスよりも抑制される傾向

 

ホームページで公表されているコワーキングオフィスのホットデスク(個室や固定席、固定ブースではない、フリーアドレスのデスク)の月額利用料と、一般オフィスの想定成約賃料との比較を行った(図表8)。一般オフィスと同じく坪単価同士の比較を行うため、1席当たりの平均面積(1.6坪)を用いて坪単価に引き直した。

 

コワーキングオフィスの利用料を坪単価に引きなおしてみると、ランニングコストは一般オフィス賃料をやや下回ると試算される。加えて、コワーキングオフィスは、入居時の内装工事や通信工事が抑えられること、退去時の原状回復費が原則不要なことなど、入退去時のコストメリットも大きい。

 

一方で、一つの席を複数の人が利用するホットデスクの特性上、満席となって利用できないリスクもある。コワーキングオフィスの利用料は、一般オフィス賃料と同じく、ビルグレードが料金水準を左右する要素になる。コワーキングオペレーターがビルオーナーに支払う賃料水準をベースに利用料が決定されるためである。

 

[図表8]入居ビルと利用料の関係 ※公表しているホットデスクを対象とした月額利用料金を、1席当たりの平均面積(1.6坪)で除して坪単価に引き直したもの ※Othersの一般オフィス想定成約賃料は集計していない(出所:CBRE、2018年9月)
[図表8]入居ビルと利用料の関係 ※公表しているホットデスクを対象とした月額利用料金を、1席当たりの平均面積(1.6坪)で除して坪単価に引き直したもの ※Othersの一般オフィス想定成約賃料は集計していない(出所:CBRE、2018年9月)

 

コワーキングオフィスの「メリット」と「デメリット」

コワーキングオフィスを導入することのメリットとリスクについて、利用者の視点とビルオーナーの視点から整理した。リスクは一般的なものを示したが、何らかの対策が施されているケースが多い。そのため、デメリットに直結するわけではない。

 

①利用者の観点

[メリット]

●初期コスト(内装工事費、通信工事費、什器)、ランニングコストが抑えられる

●原状回復費が原則不要

●拠点の開設及び撤退が迅速に可能

●組織外のカルチャー、ノウハウに触れることができる(ビジネス上のコラボレーションの可能性、“人と会うコスト”がかからない)

[デメリット]

●セキュリティ(Wi-Fiの共有、PC・資料の覗き見、電話)

●取引先企業への理解・印象(現時点)

●1つの席を複数の人が使うため、満席となって利用できないリスクがある

●BGM、会話、イベントなどで業務に集中できないリスク

●自社の意思と無関係に拠点が閉鎖するケースもあり得る

 

②ビルオーナー/自己運営の観点

[メリット]

●1つの席を複数の人が利用することになるため、一般賃貸オフィスよりもランニングの収入は高まる

●一般賃貸オフィスよりも、事業が成立する立地は広い(住宅地でも成立し得る)

●館内テナントの一時的な増床の受け皿になりうる⇒館内テナントのリテンションにつながる

[デメリット]

●内装工事費、什器などの初期投資コストと、メンテナンスコストがかかる

●オペレーションの難易度が高まる(短期の退去リスク、付加価値サービスの提供、適切な利用者数のコントロールにより使いたい時に使える環境を提供する必要がある)

●平常時だけでなく、イベント開催時に不特定多数の人が出入りするため、館内の他の一般テナントに敬遠されるリスクがある

 

③ビルオーナー/運営委託・賃貸の観点

[メリット]

●館内テナントの一時的な増床の受け皿になりうる⇒館内テナントのリテンションにつながる

●小規模テナントを多く抱える難易度の高いオペレーションを外部に委託できるため、直接・個別にエンドユーザーと契約するよりも、オペレーションが容易

[デメリット]

●テナントとのリレーションが弱まる

●平常時だけでなく、イベント開催時に不特定多数の人が出入りするため、館内の他の一般テナントに敬遠されるリスクがある

 

関連レポート:特別レポート コワーキングオフィス - 新たな働き方のプラットフォーム

 

CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。
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