法律上の定義はない?急増する「コワーキングオフィス」とは

“コワーキングオフィス”は法律上の定義もなければ、業界の統一された定義も存在しない。あいまいであるが故に、その実態も把握し切れていないのが現状である。本記事は、様々なフレキシブルオフィスとの比較からコワーキングオフィスの定義を導いたうえで、その実態を把握していく。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

大企業の関心が高まり、市場規模が急速に拡大

東京の賃貸オフィスマーケットでは、ここ1、2年前から、「テナントとしてコワーキングオフィスが内定した」、ということをよく耳にするようになった。企業の関心度も高い。

 

CBREがオキュパイアーに対して実施したアンケート結果*によると、東京23区に拠点を置く企業の23%が、コワーキングオフィスなどのフレキシブルオフィスをすでに利用しているか、又は今後1年以内に利用する予定と回答している(図表1)

 

足元でもコワーキングオフィスの開設は相次いでおり、突如として爆発的なブームが生じているかのようにも見える。

 

[図表1]コワーキングオフィスの利用状況(出所: *JAPAN OCCUPIER SURVEY REPORT 2018, CBRE, 2018年9月)
[図表1]コワーキングオフィスの利用状況(出所: *JAPAN OCCUPIER SURVEY REPORT 2018, CBRE, 2018年9月)

 

■大企業の関心の高まりから急速に拡大するコワーキングオフィス

東京都内におけるコワーキングオフィスの市場規模は、346拠点、6.6万坪。これは東京23区の賃貸オフィスマーケット市場規模に対して、面積ベースで1.0%の割合(2018年9月時点推計)。

 

東京23区における賃貸オフィス成約面積に対するコワーキングオフィスの開設面積の割合は年々高まっており、直近2018年は7.9%。賃貸オフィスマーケットにおけるコワーキングオフィスの存在感は急激に高まっている。

 

市場規模が急速に拡大した理由は、大企業の関心が高まったためだ。これまでは個人やスタートアップ企業がオフィスコストを抑える目的で利用する小規模なコワーキングオフィスが多数を占めていた。しかし近年は、大規模なコワーキングオフィスが出現してきたことで、生産性向上や従業員の利便性を高める手段のひとつとして、大企業もコワーキングオフィスの利用を検討するようになり、このような新しい需要が市場規模の拡大を後押しした。

 

■コワーキングオフィスは従来のオフィスのあり方を変える

働く場所、時間、賃貸借契約の柔軟性が益々求められるようになっていることや、会計基準の変更など、今後もコワーキングオフィスが増加する要因は多く、当面は市場規模の拡大が続くだろう。大企業にも利用が浸透すれば、従来のオフィスのあり方にも変化をもたらす可能性もある。

 

市場規模の拡大が見込まれ、賃貸オフィスマーケットにおける存在感が高まる中で、コワーキングオフィスの動向は引き続き注視していく必要があるだろう。

 

■コワーキングオフィスの定義

いまだ、コワーキングオフィスの定義について共通認識はない。現在、コワーキングオフィスを称する施設を見渡しても、空間造りやサービス内容は多岐にわたる。そこで、本レポートの目的であるコワーキングオフィスの実態を把握するために、まずその境界線(定義)を明確にしておきたい。

 

そもそも、机や椅子、会議室などを他の利用者とシェアする形態は、従来からシェアオフィスとして認知されている。コワーキングオフィスは、シェアオフィスの特徴に加えて、スペース内でイベントを催したり、利用者同士の交流を促進する機能をもった、コミュニケーションに重点を置くものである。そうだとすれば、コワーキングオフィスとは下記のように定義付けられる。

 

「異なる企業に属する者或いは個人同士が、共通の場で机、椅子、会議室などの諸設備をシェアし」、「利用者同士のコミュニケーションを促進するハード面及びソフト面の仕組みが構築されている」ワークスペース

 

「利用者同士のコミュニケーションを促進するハード面及びソフト面の仕組み」とは、スペース内でのイベント開催スペース、利用者のスキルや業務分野がコミュニティ内で共有される仕組み(掲示版、専用SNSなど)、利用者のビジネスをマッチングさせるコミュニティマネージャーの存在、などを含む。

 

■コワーキングオフィスとその他のフレキシブルオフィスとの違い

 

[図表2]フレキシブルオフィスの形態 ※注:実際は、コワーキングオフィスの定義に該当するものでも、サービスオフィスやレンタルオフィスとのハイブリッドの形態が多い。当レポートでコワーキングオフィスを集計するにあたっては、コワーキングオフィスの必須条件を満たす拠点を対象とした
[図表2]フレキシブルオフィスの形態
※注:実際は、コワーキングオフィスの定義に該当するものでも、サービスオフィスやレンタルオフィスとのハイブリッドの形態が多い。当レポートでコワーキングオフィスを集計するにあたっては、コワーキングオフィスの必須条件を満たす拠点を対象とした
 

オフィスの開設面積に占める割合が、10年で20倍に

■ストックで見るコワーキングオフィス

~賃貸オフィスマーケット市場では未だマイノリティ

 

コワーキングオフィスの必須条件を満たすオフィススペースを集計した結果、東京都内の現時点における市場規模は、346拠点、6.6万坪(図表3)。これは、東京23区における賃貸オフィス床面積*の1.0%に相当する(ただし、コワーキングオフィスの全てが、CBREの集計対象となっている賃貸オフィスビルに入居しているわけではない)。

 

このようにオフィスストック全体との比較で見ると、賃貸オフィス市場におけるコワーキングオフィスの存在感は必ずしも大きいとはいえない。

 

[図表3]賃貸オフィス市場規模とコワーキングオフィス市場規模の比較 * 2018年Q2時点。都内主要オフィスエリアに所在し、延床面積1,000坪以上かつ新耐震基準に準拠したビルが対象(出所:CBRE, 2018年9月)
[図表3]賃貸オフィス市場規模とコワーキングオフィス市場規模の比較 * 2018年Q2時点。都内主要オフィスエリアに所在し、延床面積1,000坪以上かつ新耐震基準に準拠したビルが対象(出所:CBRE, 2018年9月)

 

フローで見るコワーキングオフィス

~急速に高まる存在感

 

ストックとの比較で見ると未だ小さいコワーキングオフィスだが、フローとの比較で見ると存在感は急速に高まっている。2010年以降、コワーキングオフィスの開設数は増加基調にあり、特に2017・2018年に市場規模は急拡大した(図表4)。2000~2016年の17年間に開設された面積(合計3.3万坪)を、わずか2年間で超えた。

 

東京23区の賃貸オフィスビル成約面積に対するコワーキングオフィス開設面積の割合(図表5)は、2009年頃までは毎年0.5%を下回る水準で推移。2010年以降は割合が高まり始め、直近2018年上半期は8%近い水準に急上昇した。

 

[図表4]コワーキングオフィス開設面積と開設数の推移 ※東京都内 ※開設時期不明のコワーキン(出所:CBRE 2018年9月)
[図表4]コワーキングオフィス開設面積と開設数の推移 ※東京都内 ※開設時期不明のコワーキン(出所:CBRE 2018年9月)

 

[図表5]東京23区成約面積に対するコワーキングオフィス開設面積の割合 ※開設時期不明のコワーキングオフィスは含まない(出所:CBRE、2018年9月)
[図表5]東京23区成約面積に対するコワーキングオフィス開設面積の割合 ※開設時期不明のコワーキングオフィスは含まない(出所:CBRE、2018年9月)

 

関連レポート:特別レポート コワーキングオフィス - 新たな働き方のプラットフォーム

 

CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。
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