「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー
相続税支払いの回避策として有用な「生前贈与」だが…
高額な相続税の支払いを軽減する方策、つまり“相続対策”として有効な方法に、「贈与(生前贈与)の活用」があります。贈与とは、相続(本人の死亡)が発生する前に、あらかじめ資産を移す手続きをすることです。
たとえば、多額の資産を保有している方の場合、その資産を相続する際に発生する相続税も高額となってしまいます。その点、贈与を活用することによって、税の負担を軽くして、子どもたちに資産を残すことができるのです。
ただし、贈与のやり方によっては、あとで税務署から問題視されてしまうこともあります。とくに多額の資産を贈与する場合には、税務署にチェックされていると考えた方がいいでしょう。そこで今回は、税務署から問題視されない、“正しい贈与のやり方”についてご紹介します。
「贈与」をする際に押さえておくべき3つのポイント
財産を贈与する際に押さえておきたいポイントは、次の3つです。
(1)贈与はどのようにして成立するのか
まずは、贈与の定義について理解しておきましょう。民法では、次のように定められています。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。」(民法第549条)
つまり、父が自分の財産である現金を子に「あげる」と伝えて、子がそれを「もらう」と承諾した場合に、両者での贈与が成立したということになります。このように、財産を贈与する者(父)が「あげる」という意思を示し、一方の贈与される者(子)が「もらう」と受諾することを前提とした行為をいいます。
つまり、贈与が成立するためには、どちらか一方の意思表示ではなく、あげる側ともらう側の両方の合意がなければ成り立たないこととされています。たとえば、親が子どものことを考えてこっそりと子ども名義の口座に預金を移したとしても、それだけで贈与が成立するわけではありません。
もらった側の子どもがその事実を知っており、かつ、その預金を子どもが自由に使える状態になっていて初めて、贈与が成立することになります。
(2)贈与の方法とは
具体的な贈与の方法は、次の通りです。
1.書面による贈与
2.書面によらない贈与
贈与には「書面による贈与」と「書面によらない贈与」があります。すなわち、必ずしも書面による贈与契約が必要なわけではなく、口頭での約束でも当事者が合意すれば贈与は成立することとなります。
しかし、贈与者が死亡したあとで贈与の事実を証明するには、書面がなければ困難となります。そう考えると、あらかじめトラブルを防止するために、書面(贈与契約書)による贈与が望ましいといえるでしょう。
加えて、より証拠能力を高めるために、贈与契約書の末尾にある氏名欄に「贈与者及び受贈者の署名(自署)」をし、さらに公証役場(※)において確定日付をもらっておくことをオススメします。
※公証役場:公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う官公庁。各法務局が所管し、公証人が執務する。
(3)贈与実行時の注意点
現金の贈与を実行するにあたっては、その事実を残しておくために、贈与者及び受贈者双方の預金口座を通じて贈与するようにしましょう。
現金を贈与する場合でも、現金を贈与者の口座に一旦入金し、その後に受贈者の口座に振り込むようにしてください。その際、受贈者の口座は受贈者の管理下に置くことがポイントです。そのためにも以下の点に注意しておきましょう。
~贈与実行時の注意点1~
●贈与資金の振込口座は、受贈者本人が自分の生活圏内に所在する金融機関において開設した口座であること。
たとえば遠方に住む父が、父の自宅近くに所在する地元の金融機関において、子名義の口座に振り込む形で贈与したとしても、贈与された子の生活圏内にその金融機関の支店等が存在しないと、子がこの預金を管理し自由に使える状態にあったとは言い難いからです。
~贈与実行時の注意点2~
●贈与を受けた資金を他の金融商品へ切り替える際や、満期時等の更新の手続も、受贈者本人が行うこと。
贈与された現金(預金)を、その後も父が運用し続けていると、その預金を管理支配しているのは父自身ということになり、真の預金者は父であると税務当局から認定される危険性があります。そのため、子に贈与した財産は、子自身が管理支配しておきましょう。
以上のように、相続財産を贈与する場合には、「形式」(贈与契約書の作成)と「実態」(贈与財産を受贈者の支配下に置くこと)を意識することが大切です。そうすることで、税務調査の際に、親族間での現金贈与を否認されにくくなります。ぜひ、形式と実態を整えましょう。
服部 誠
税理士法人レガート 代表社員・税理士
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