今回は、シリコンバレーが次々にIT企業を呼び込む集積の場となっている理由と、サンフランシスコ・ベイエリアの住宅が公共交通機関の延長によって受ける影響について見ていきます。

高コストでもシリコンバレーをビジネス拠点にする理由

前回までは、グーグル、アップル、フェイスブック等に代表されるイノベーション産業に牽引される形で、リーマン危機後全米の中でいち早く回復・成長を遂げてきたサンフランシスコ・ベイエリアの経済と不動産価値の関係、特に賃貸住宅(アパート)市場に関わる特徴を、需要と供給の面から確認しました。

 

それにより、限られた供給と高い需要のおかげで、全米でも屈指となる高い家賃成長と不動産価値の上昇という現象が見られることがわかりましたが、その反面、シリコンバレーに進出(投資)をしようとする事業会社(〈個人〉投資家)にとっては、ますます参入障壁、特に人材獲得面の難しさともに生活コストが高くなっていることがわかりました。

 

実例を挙げましょう。

 

先日筆者が参加した研究会では、シリコンバレー進出を遂げた日系中小ソフトウエア開発会社の幹部のプレゼンがありました。それによれば、米国商務省の対米投資プログラムに関して、ITエンジニアの給与は日本の3倍(シリコンバレーの人材紹介会社によると標準的な年棒2000万円弱+ストックオプション等)にもなりますが、それでもシリコンバレーに拠点を出す意義は大きいというのです。

 

日本でエンジニア向けアプリ開発ソフトに多額の宣伝広告費をかけたものの、売り上げはさっぱりだったのですが、一旦シリコンバレーで認められると、ダウンストリームに乗り、口コミによって簡単に全世界へと広がって行ったそうです。

 

これは人・物・金がシリコンバレーに集まっている証左であり、一旦そのサークルに入ってしまえば効果は大きく、IT企業がIT企業を呼び込む集積の場となっていることがわかります。

開発が進む公共交通機関沿線に生まれる新たな住宅需要

さて、サンフランシスコ・ベイエリアにおける住宅事情の現状と、過去の推移を数字で検証してみましょう。以下のデータは2011年に行われた米国勢調査に付随した住宅調査の結果です。

 

[図表1]サンフランシスコ大都市圏 (単位:千戸)

 

サンフランシスコ市内に限って言うと、2010年には37万3000戸のみの住宅在庫で賃貸比率が65%、1980年以前の建築時期のものは91%を占めております。また、2004年から2013年の10年間で取り壊し・竣工となった純増加戸数は1万9316戸で、年平均2000戸弱。「ベイエリア計画2040」で割り当てられた増加戸数は9万2000戸(年平均3000戸)です。1850年代からゴールドラッシュで栄えだしたサンフランシスコですが、住宅のほとんどは1906年サンフランシスコ大地震以降に建てられたものばかりです。

 

サンノゼ大都市圏はサンフランシスコ・オークランドに比べると建物年齢が若いですが、それでも1980年以前のものは69%となっています。


[図表2]サンノゼ大都市圏 (単位:千戸)

 

前回の連載でご紹介した「ベイエリア計画2040」によれば、今後3大都市部を中心にBART等の公共交通機関沿線で行われる再開発・新規開発により、賃貸住宅が徐々に増加するものと考えられます。

 

特にBARTの延長計画のうち、シリコンバレー地区にある、フリーモント→サンノゼ→サンタクララの区間延長が注目するべき地域となるでしょう。ここはサンノゼ大都市圏であり、賃貸住宅(アパート)の絶対的な戸数が限定的です。

 

多少新規供給も期待される場所ではありますが、次回以降の説明となるグーグル、アップル等巨大IT企業の事務所拡張が計画されている場所で、シリコンバレーの中でも需要が見えている場所だといえるでしょう。

 

[図表3]鉄道・BARTのWarm Springs駅以降の延長計画

 

[図表4]鉄道・BARTのdowntown San Jose駅以降の延長計画と周辺詳細地図

 

次回は、今回の続きであるオークランドの米国国勢調査による住宅調査結果と、サンフランシスコ・ベイエリアの不動産価格の推移について詳しく見ていくことにします。

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