今回は、サンフランシスコ・ベイエリアの環境対策で、今後の不動産市場にも大きな影響を及ぼす「ベイエリア計画2040」の詳細と、そこから読み取れる将来の展望について見ていきます。

大量輸送可能な公共交通機関近辺で新規・再開発を限定

前回はサンフランシスコ・ベイエリアにおける賃貸住宅(アパート)について、供給面から見た数値の検証と、そのバックグランドについて解説しました。今回は、サンフランシスコ・ベイエリアの環境対策として敷かれている厳しい不動産開発規制の根幹、「ベイエリア計画2040」を掘り下げてみたいと思います。

 

「ベイエリア計画2040」は、サンフランシスコ・ベイエリアにおいて、持続可能なコミュニティと2008年地球温暖化防止条例を実現化したもので、温室効果ガス削減を目的とした土地利用・交通・住宅開発を統合したものです。

 

なお、2013年7月、この計画は全市町村郡政府によって採択されています。

 

下記の図表1は、2010年に行われた国勢調査のデータと、「ベイエリア計画2040」にある予想値はUCバークレイ校等の調査機関が行った調査の数値です。

 

[図表1]「ベイエリア計画2040」の数値の概略

 

※サンフランシスコ・ベイエリアの周辺地図

 

「ベイエリア計画2040」の特徴として、以下のことが読み取れます。

 

①サンフランシスコ、オークランド、サンノゼの3大都市内を中心にPDA(優先開発地区)を指定し、BART等の公共交通機関の大量輸送が可能な場所に、アパートを中心とした住戸増加を伴う新規および再開発を限定することにした。

※シリコンバレーはこのおかげで、一般的な大都市で見られる、ダウンタウンへの通勤とダウンタウンからの帰宅にともなう交通渋滞が起きていない。朝のI-280 号線は、サンノゼダウンタウンからクパチーノ・マウンテンビューへの間で、夕方は逆方向で交通渋滞となっている。

 

[図表2]地区に見る戸建てとアパートの許認可の比較

青色は戸建てよりもアパートの許認可が多い地区。
オレンジ色はアパートよりも戸建ての許認可が多い地区。
青色は戸建てよりもアパートの許認可が多い地区であり、オレンジ色はアパートよりも戸建ての許認可が多い地区である。

 

②その結果、住戸増加分の80%、および雇用増加分の66%をPDAで吸収することになった。計画では、3大都市内で住戸増加分の14%、および、雇用増加分の17%を吸収する。残りは3大都市周辺の中小規模都市で賄う。

 

③一方、マリン・ナパ・ソノマ・ソラノ郡のベイエリア北部地区では、オープンスペースおよび農地を確保する観点から、極力開発を抑制することにした。

 

④計画では、市町村郡政府等による公共投資600億米ドル(約7兆円)は、ベイエリア南部地区における公共交通機関の整備を中心に割り当てられる。

IT企業の拡張志向でSF・B.A全体がシリコンバレー化

改めて全米におけるサンフランシスコ・ベイエリアの経済規模の位置づけと成長状況を数値で確認してみましょう。全米大都市圏GDPに関わるTOP20ランキングは、下記図表3の通りとなっています。

 

下記統計資料ではサンフランシスコ・オークランド都市圏とサンノゼ都市圏が分割表示されていますので、合算するとサンフランシスコ・ベイエリアの経済規模はロサンゼルスに次いで実質第3位になります。

 

[図表3]全米大都市圏経済規模(GDP)ランキングとその推移

単位は百万米ドル、円は1ドル115円換算。
地名のあとの(%)は2009年からの伸び率を表す。
単位は百万米ドル、円は1ドル115円換算。
地名のあとの(%)は2009年からの伸び率を表す。


サンノゼ都市圏(従来「シリコンバレー」と呼ばれる地域、〈サンフランシスコは含まない〉というのが一般的な定義ですが)の面積は4800平方kmと、東京都と神奈川県を合わせた程度の広さですが、GDPについては過去5年間の伸び率で43%と極めて高い成長を示しています。

 

これは以前の連載でもご紹介したとおり、イノベーションション産業の乗数効果によるものであると考えられます。それが今やIT企業の拡張志向が、従来シリコンバレーではなかったサンフランシスコ・オークランドまでに及んでおり、サンフランシスコ・ベイエリア全体がシリコンバレー化してきていると言えるでしょう。

 

繰り返しますが、この背景には、自動車から排出される二酸化炭素を削減のため、居住用不動産の供給が開発規制上極めて限定的であることが大きな要因となっているということが「ベイエリア計画2040」から読み取れます。

 

人口規模(2010年米国国勢調査)でいうと、

 

①ニューヨーク都市圏(2310万人〔内アジア系100万人〕、面積1万7405k㎡)

②ロサンゼルス都市圏(1790万人〔内アジア系60万人〕、8万7490k㎡)

③シカゴ都市圏(980万人、5498平方km)

④サンフランシスコ・ベイエリア都市圏(720万人〔内アジア系50万人〕、1万8808k㎡)

 

の順となっています。

 

ちなみに、サンフランシスコ・ベイエリアの人口動態実績(2010年)および予測は、「ベイエリア2040」によると、

 

①白人:45%(→31%)

②ヒスパニック系:23%(→35%)

③アジア系:21%(→24%※)

④アフリカ系:6%(→5%)

 

となっています(※2010年国勢調査によれば、米国におけるアジア系人口は1470万人であり、全体の4.7%にすぎない)。

 

アジア系の人口が多い地域は、

 

①ニューヨーク:104万人

②サンフランシスコ・ベイエリア:57万人(サンノゼ:30万+サンフランシスコ:27万)

③ロサンゼルス:43万人

④サンディエゴ:21万

⑤ホノルル:18万

 

など。

 

アジア系の人口比率の高い地域は、

 

①ホノルル:54.8%

②デイリーシティ(サンフランシスコ・ベイエリア):55.6%

③フリーモント(サンフランシスコ・ベイエリア):50.6%

④サニーベール(サンフランシスコ・ベイエリア):40.6%

⑤アーバイン(LA郊外オレンジ郡):39.2%

⑥サンタクララ(サンフランシスコ・ベイエリア):37.7%

 

など、カリフォルニア州、特にシリコンバレー周辺で高率になっています。

 

また、日本の都道府県別GDPのTOP5規模は、以下の通りです。

 

平成24年度の都道府県別GDPのTOP5(平成27年6月内閣府発表)

①東京都 92兆円

②大阪府 37兆円

③愛知県 34兆円

④神奈川県 30兆円

⑤埼玉県 20兆円

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