投資家たちは何を目的に不動産投資を行おうと考えたのか、それに対して不動産会社はどのような提案を行ったのか…。本連載では、実際の事例をもとに、不動産投資の成功の極意を探っていく。今回は、不動産会社の営業主任として、日々不動産投資家に対し収支改善の提案などを行っている川越明日菜氏が、区分マンション投資を始めた会社員の事例を紹介する。

自己資金は少ないが不動産投資を始めたい

今回紹介するのは、30代の会社員T様です。自己資金はあまりないというT様でしたが、知り合いが不動産投資で成功しているのを見て、「資産を増やしていきたい。自己資金が少なくても始められる不動産投資法はないか」と相談がありました。実際にT様がどのような手法で不動産投資を始めたのか、見ていきましょう。

 

[T様のプロフィール]

年齢:30歳(当時)

性別:男性

未婚/既婚:未婚

職業:会社員/メーカー勤務

年収:720万円

金融資産:100万円

 

T様は不動産投資の初心者だったことから、最初は不動産投資の概要を知ってもらう必要がありました。まず説明したのは、代表的な不動産投資法である「区分マンション投資」と「一棟マンション投資」を特徴です。

 

区分マンション投資は、立地が最も重要な要素であり、地方では難しい不動産投資法です。人口維持が家賃下落を防ぎ、将来の売却にも直結するため、都内23区、駅徒歩7~10分圏内など、厳しい条件を見極めることが大切です。東京都内の区分マンションであれば、築40年以上でも融資がおりている実績があり、築古物件も検討範囲内になりますが、エリアの厳選が非常に重要になってきます。

 

またローン返済期間中の手取り収入は「±1万円/月」程度であり、修繕積立金などの支出は、将来増額する可能性も考えなければありません。

 

全額融資がつく、いわゆるフルローンの物件もあり、自己資金が少なくても不動産投資を始めることができます。年収は400万円程度あれば、金融機関の審査は通るケースが多いようです。

 

一方、一棟マンション投資は、投資家の住まいや年収、金融資産によって、購入できる物件や、融資を受ける金融機関が決まります。また収益性をとるのか積算性をとるのか、地方の物件か都内の物件か、単身向けの物件か家族向けの物件か、新築物件か中古物件か、売主から購入するか仲介会社から購入するのか…と、選択肢や判断基準が多いのが特徴です。

 

一棟マンション投資は10人の投資家がいれば、10通りの考え方・投資方法がありますが、全額融資は難しいため、少なくとも数百万単位での自己資金を拠出する必要があります。

 

以上のことを説明すると、T様は「ゆくゆくは一棟物件投資にもチャレンジしたい」という思いを打ち明けてくれました。確かに、T様の立場や年収を考えると、一棟物件投資にチャレンジできなくもありません。しかし自己資金額が少なく、いきなり一棟投資物件への投資はハードルやリスクが高いと説明しました。

 

それに対しT様は「時間をかけて規模を拡大していけるような、投資プランはないか」と要望されました。

投資経験を積んでいく長期的な投資プラン

T様の場合、30歳で年収720万円あるので、金融機関としては「将来有望な方」という認識をもってくれるはずです。年齢が若いため、今からしっかりと自己資金をためることができれば、一棟アパート・マンションの購入も現実となります。一方で「投資経験」も金融機関は重要な判断材料として見ています。


以上のことから、まずは投資経験を積むことを最優先事項と考え、管理の手間がほとんどなく、空室リスクも最小限におさえることができ、投資拡大に向けて本業に専念することが可能な「都内」「駅近」「築浅」の区分マンション投資からスタートすることにしました。 

 

T様が実際に購入した物件の概要です。

 

都内マンション 1室/2,410万円

立地:山手線駅 徒歩4分

築年数:12年

賃料:98,000円/月

 

区分マンション融資には、通常の生命保険に追加して疾病カバー、がん保険等が付帯できます。不動産を購入することで、毎月支払っていた保険料も、貯蓄やほかの投資に回し、資産づくりを加速させることができることも、T様にとって大きなメリットです。

 

現在、売却も視野に入れながら、区分マンションを運営している間に資産を増やし、金融・不動産市場のタイミングをみて、一棟物件投資へのシフトチェンジしていく投資プランを思い描いています。

 

 まとめ 

不動産投資を成功させるためのたった一つのコツ、それは

 

身の丈に合った投資プラン

 

で行うことです。「年間10万円の収益があれば目的達成」という方は、自己資金ほとんどない状況で、数千万の融資(借金)までして不動産投資をする必要はありません。なぜならば、万が一空室期間が出た場合、融資の返済ができなくなるというリスクがあるからです。融資を借金と認識せずに、フルローンまで組んで、返済ができず自己破産まで追い込まれるケースも少なくありません。

 

T様は、不動産投資に関してまったくの初心者でしたが、将来設計や現在の状況をしっかりと話してくれたからこそ、身の丈にあった長期的な投資プランをもって、不動産投資をスタートできたのです。

 

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本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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