中小企業の競争戦略…「差別化」と「模倣」を融合させるには?

※本連載では、公認会計士・米国公認会計士の資格を持ち、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じて新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターCEOおよび一般社団法人M&Aテック協会代表理事である・久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るための経営戦略を提案していきます。

「差別化戦略」と「模倣戦略」は相反する戦略なのか?

今回から、中小企業が競合他社(特に大手)に挑む際に有効となる「差別化戦略」と「模倣戦略」について解説していきます。

 

「差別化戦略」と「模倣戦略」は、文字通り、相反する戦略と考えられます。しかし、両者は一見相反する戦略ではありつつも、うまく融合させることで、中小企業の勝ちパターンとなり得るのです。本稿より4回にわたり、説明していきましょう。

 

(1)「差別化戦略」vs.「模倣戦略」の図式は果たして成立するのか?

 

まずは「差別化戦略」と「模倣戦略」の定義を簡単に確認してみましょう。感覚的にはなんとなくわかるけれども、本当のところはなんだっけ?と思う人もいるのではないでしょうか。

 

わかりやすくするために、まずはあえて極端な言い方をしてみると、前者は「パクらない戦略」であり、後者は「パクる戦略」です(ただし、この言い方はあとで根本から訂正しますが…)。

 

これは中小企業の競争戦略を考える際の重要な分岐点になるので、きちんと整理して説明します。

 

「差別化戦略」とは、「ある特定の製品・サービスの基本機能は同じであっても、次のような打ち手をとることにより、顧客への提供価値が優れていることを強調して、競合に対する競争優位性を獲得しようとする戦略」です。

 

・ 斬新なデザイン

 

・ 顧客ニーズに合致した製品・サービスの提供(例. 機能の絞り込み)

 

・ ブランドイメージの向上

 

・ 特定の顧客セグメントに焦点を当てたマーケティング活動

 

競合の中でも「強豪」に対し正面突破で戦いを挑むのは、あまりにも無策であることから、上記のような戦略をとって対抗するのです。この場合、低価格を差別化の軸とすることも選択肢の一つですが、競合もそれに乗っかって戦われると、業界全体が値下げ競争という泥沼に陥るリスクがあるため、慎重に判断する必要があります。

 

一方、「模倣戦略」の定義はシンプルで、「競合と同じ製品・サービスを展開する戦略」を指します。

 

なお、模倣戦略の目的はプレイヤーの特性によって二分されます。「差別化を無効化するための模倣」と「他に選択肢が不在であるための模倣」です(本来は「業界トップ vs. 業界2、3番手」、「業界中堅 vs. 弱者」など、より詳細に分けることが考えられますが、ここでは単純化のために、ある程度抽象化させて説明しています)。

 

[図表]模倣戦略の目的
[図表]模倣戦略のイメージ

 

面白いのは、強者にとって、「模倣戦略」はされるものでも、するものでもあることです。つまり「模倣する」場合は、競合中堅や競争力のある弱者が差別化戦略で挑んできた時に、自らの経営パワーを活かして、同じ戦略を採用することで相手の差別化を無効化する(ツブす)戦略です。

 

一方「模倣される」場合は、模倣戦略の本来持つイメージの通り、圧倒的弱者が、戦略上の選択肢が限られているために、死亡フラグが立たないよう、止むを得ず採択する戦略です。

 

日本の高度経済成長期は、市場自体が継続的に拡大していたため、業界プレイヤー全員が模倣戦略を採用しても、皆が幸せな立場で共存することができました。

 

しかしながら、ご存知の通り、今の日本は内需が低迷し、海外に目を向けてもアジア諸国がひたすらマッチョになる一方で、GAFAといったグローバルジャイアントにコテンパンにやられている状況です。

 

そんな状況で、模倣戦略で戦いに挑むことは、限られた市場でのパイの奪い合いで消耗戦に陥るという、まさに血を見る戦いになってしまいます。

自らが有する特性に従って「戦略展開」するためには

(2)中小企業にとって「差別化戦略」vs.「模倣戦略」の図式は果たして成立するのか?

 

さて、前段の整理のもと、貴方は「差別化戦略」と「模倣戦略」のどちらの方向に向かって走り出しますか?

 

ただ、耳触りがいいため何となく周りから賛同が得られやすいからといって、「差別化戦略」に焦点を絞って勝負するのは、経営基盤が脆弱な中小企業にとって少し大変かもしれません。

 

別の見方をしてみると、結局は(最初から強者に降参して)真似をする・(強者に対し頑張って差別化しても)真似されるのであれば、最初から「差別化戦略」を採用することなく、「模倣戦略」を取れば良いのではないでしょうか?

 

しかしながら、ここではあえて「差別化戦略」vs.「模倣戦略」というデジタルな前提を取っ払いたいと思います。つまり、中小企業は自らが有する特性に従って戦略展開することが自然ではないかというスタンスです。

 

したがって、本連載では次のような段階的なステップを取ることを提案してみます。

 

中小企業は基本的に模倣戦略路線を取りつつも、うまく舵取りをしながら(※)、状況を捉えて差別化戦略で勝負にでるべき

※当然ではありますが、企業が立案・実行する戦略というものは単発で終わるものでも、未来永劫同じ戦略を使わなければいけないということでもありません。

 

さて、このような整理を前提として、次回以降、この2つの戦略についてより具体的に見ていきましょう。

 

 

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株式会社H2オーケストレーター・CEO
一般社団法人M&Aテック協会・代表理事
公認会計士(再登録手続中)
 

1995年、同志社大学経済学部を卒業後、中央監査法人に入所。1998年、日本興業銀行ストラクチャード・ファイナンス部へ出向。2000年、同法人金融部に配属。2001年、ドイツ証券投資銀行本部に転じる。2006年、ミシガン大学ビジネススクールを卒業後、The Bridgeford Group(ニューヨーク)にて勤務。2007年に帰国し、JPモルガン証券投資銀行本部、みずほ証券グローバル投資銀行部門など数社を渡り歩く。2013年、NEC経営企画本部に転じ、2019年独立。これまで、退職給付信託(国内初案件)の開発、民事再生法下のプレパッケージ型事業再生スキーム(国内初案件)におけるM&Aアドバイザー、事業法人グローバルIPOにおけるジョイント・グローバル・コーディネーター(2002年度国内最大案件)、特殊法人の民営化関連アドバイザー等、投資銀行業務における重要案件を幅広く担当した経験を有する。NECでは、上級役員の参謀役として経営の中枢に携わり、中長期戦略・グローバル戦略の立案・実行部隊として、ダボス会議事務局、グローバルアライアンス推進などに従事。公認会計士・米国公認会計士有資格者。著書に『流動化・証券化の会計と税務』(中央経済社)等。

著者紹介

連載令和時代に生き残る!中小企業のための新しい経営戦略

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