中国、プライベート・エクイティの資金調達額急落の背景

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

ポイント

英フィナンシャル・タイムズに3月中旬「中国のプライベート・エクイティ(PE)が大幅減」という内容の記事が掲載されました。同記事によると中国PEは18年に人民元建て資金調達が前年比でマイナス86%と急落したと報道されています。中国PE市場の現状認識並びに、資金調達額急落の背景を述べます。

中国経済全体の資金調達:中国全体では大幅改善、ただ一部セクターの改善は鈍い

中国人民銀行(中央銀行)が2019年4月12日に発表した3月の経済全体のファイナンス規模は2兆8600億元と、市場予想( 1兆8500億元)、前月(約7000億)を上回りました。ただ、資金調達の内容を見ると、シャドーバンキングの一部である委託貸付の回復は鈍いままです(図表1参照)。

 

[図表1]中国委託貸付による資金調達額の推移 月次、期間:2014年3月~2019年3月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国委託貸付による資金調達額の推移
月次、期間:2014年3月~2019年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

次の点に注目:中国PE、資金調達額、IPO、人民元建PE

英フィナンシャル・タイムズに3月中頃「中国のプライベート・エクイティ(PE)が大幅減」という内容の記事が掲載されました。同記事によると中国PEは18年に人民元建て資金調達が前年比でマイナス86%と急落したと報道されています。中国PE市場の現状認識並びに、資金調達額急落の背景を述べます。

 

中国のITもしくはインターネット関連市場が急拡大した背後に、PEもしくはベンチャーキャピタル(VC)が黒子の役割を果たしてきています。PEの運用資産残高をマッキンゼー社の調査で地域別に見ると、北米が約52%、欧州約23%、中国とインドで大半を占めるアジアが約20%となっており、中国PEの規模は世界的に確固たる地位となっています。

 

しかし、先に指摘したように18年の中国の資金調達額は急落しました。

 

1つ目の理由はIPO市場の不振が資金調達に影響したと見られます。中国のPEの出口戦略はIPOもしくはM&Aが通常ですが、18年の中国株式市場は米中貿易摩擦の悪化などにより下落傾向となり、IPO市場も軟調でした。例えば、スマホメーカーの「シャオミ」(香港上場)や、フードデリバリーの「美団点評」は上場後の株価が低迷しました。

 

 

2つ目の理由として、中国政府が進める債務圧縮政策の中で、シャドーバンキング対策がPEファンドの出資者を圧迫した可能性があります。中国当局は昨年、シャドーバンキングで残高が大きく、PE投資の資金源の一つである委託貸付(図表1参照)を厳しく制限したことが資金調達額急落の原因と見られます。

 

ここで中国のPE市場を通貨建てで見ると、人民元建てとドル建てがあります(図表2参照)。2009年までは外貨建(ドル建)が主流でしたが、09年にシンセン証券取引所に創業板市場が開設されてからは人民元建てが急激に増加、17年には資金調達の大半は人民元建てでした。今回の資金調達で急減したのは人民元建てのみで、外貨建PEに影響が見られません。この急増した人民元建PEには、新規で経験やスキルが不足するPEが多数いるとも言われています。中国当局の一連の対応の背景には、単に過剰債務の抑制以上に、一部PEの淘汰を意図した可能性も想像されます。

 

[図表2]中国(PEとVC)による通貨建別資金調達額の推移 年次、期間:2014年~2018年(18年は11月迄)、通貨建はドル換算 出所:Preqinのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国(PEとVC)による通貨建別資金調達額の推移
年次、期間:2014年~2018年(18年は11月迄)、通貨建はドル換算
出所:Preqinのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

中国は経済的ダイナミズムにPEやVCを今後もフル活用すると見込まれますが、若干の試行錯誤も必要なようです。

 

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、プライベート・エクイティの資金調達額急落の背景』を参照)。

 

(2019年4月24日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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