ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

ポイント

FRB(米連邦準備制度理事会)がハト派スタンスに転換して以降、米国株式市場はボラティリティ(変動性)が低い状態でジリ高が継続、米10年国債利回りも年初来で低下基調となっています。期待インフレ率が低位で安定する中、緩和的な中銀スタンスは株式市場にとって「心地よい状態」になりつつあるようです。しかし、適温相場の過度な織り込みにはリスクが伴います。

「いいとこ取り」の様相を呈してきた米国株式市場

4月9日に発表されたIMF(国際通貨基金)の2019年の米国経済成長率見通し(図表1)は2019年1月時点の+2.5%から+2.3%へ下方修正されたほか、米国の2019年予想EPS成長率見通しも昨年末時点の+7.6%から4月11日現在で+3.3%まで下方修正されるなど、ファンダメンタルズは決して良好ではありません。

 

[図表1]IMF世界経済成長率見通し 出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]IMF世界経済成長率見通し
出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、それでも株高、すなわち株価バリュエーションの上昇が起こる理由は、FRBの流動性供給(観測)に他なりません。FRBは利上げについては休止、保有債券の縮小については停止を前倒しする方針を示すなど、昨年12月時点のタカ派スタンスから一転した金融緩和政策を打ち出しています。その姿勢の大幅な変化は、 ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁もFRBの独立性に懸念を示すほどです。

 

このFRBのハト派スタンスは、米国株式市場にダイレクトに影響を及ぼし始めています。例えば、米国の経済サプライズ指数は低下傾向(図表2)ですが、市場参加者は3月米ISM製造業景況指数や3月雇用統計の上振れなど、ポジティブ・サプライズのみに反応しているように見受けられます。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表2]S&P500指数と米国経済サプライズ指数 日次、期間:2018年4月19日~2019年4月18日 ※S&P500指数は米ドル建て、配当なし ※米国経済サプライズ指数はシティエコノミックサプライズ指数 出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]S&P500指数と米国経済サプライズ指数
日次、期間:2018年4月19日~2019年4月18日
※S&P500指数は米ドル建て、配当なし
※米国経済サプライズ指数はシティエコノミックサプライズ指数
出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

また、1-3月期の米国決算発表においても、JPモルガン・チェースの決算上振れは市場全体を押し上げるきっかけとなりましたが、見通しが悪化したゴールドマン・サックスの決算後の株安はあまり材料視されませんでした。

 

このように、米国株式市場ではFRBのハト派スタンス転換によって、下値リスクの警戒感が後退した結果、経済指標や企業決算の「いいとこ取り」の様相を呈してきたと考えられます。

 

 

パウエル・プットはVIX先物ポジションにも明確に表れはじめた

パウエルFRB議長が相場を下支えするという期待感を表した「パウエル・プット」は、VIX指数(S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティをもとに算出した指数)の先物ポジションにも表れています。

 

図表3に示したように、VIX指数先物のショート・ポジション(VIXの低下を見込む取引)の足元の水準は2017年のピーク時に迫っています。これは、適温相場が今後も続くと見込む市場参加者の期待の表れであり、急激な相場変化に対して脆弱な状態であることも示しています。

 

[図表3]VIX指数投機筋先物ポジションとVIX指数 週次、期間:2014年4月22日~2019年4月9日 出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]VIX指数投機筋先物ポジションとVIX指数
週次、期間:2014年4月22日~2019年4月9日
出所:IMF、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

今後のポイントは、マクロ経済指標に改善の兆しが表れるか

年初来の米国株式市場は、FRBがハト派スタンスに転換する中で、米中貿易協議の進展や、英国のEU(欧州連合)離脱延期観測など、期待先行で上昇してきた点が否めません。そのため、今後はこれらの政治イベントが市場関係者の期待通りに合意されることが重要になります。また、米中貿易摩擦によって悪化したマクロ経済指標も、市場関係者の期待通りに改善する必要もあります。1-3月期の企業決算が控える中、文字通り「不安の壁」をよじ登ることができるか注目です。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略 適温相場が織り込まれつつある米国株式市場』を参照)。

 

(2019年4月19日)

 

 

田中純平

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録