アパートメーカーの「収支計画」は鵜呑みにしない
不動産活用を成功させるもう一つのポイントは管理力です。前回、アパートメーカーの計画の甘さを指摘しましたが、管理面でも落とし穴があります。
一般的に、アパートメーカーで建てた収益物件の場合は、そのまま管理も依頼することが多いでしょう。確かに収支計画も出ており、その中に管理費用も含まれていますので、安心なイメージがあります。そのまま依頼すれば、ブランド力で開業時には入居者をしっかり募集し、満室にしてくれます。
しかし前回も説明したように、アパートメーカーなどは建てることが目的ですので、収支が非常によく見えるよう修繕費を入れずに計算する、低く設定するなどしています。その収支計画を鵜呑みにしてしまうと、築年数を重ねていく中で予想外の修繕費が必要になり、資金調達にあわてる羽目に陥ります。
しかも修繕が発生すると、アパートメーカーの系列修繕会社が指定されるため、一般の業者に直接発注するよりもコストが高くなりがちです。さらにそこにアパートメーカーの手数料も上乗せされるため、格段に高くなります。
物件の老朽化に伴い修繕費は必ず必要になる経費ですので、収益物件を保有する場合には、はじめに万全な修繕計画に基づいて収支計画を練ることが大切です。
下記の図表1が、筆者の会社が実際にお客さまに提示している修繕計画表です。最大予想される修繕費をオーナーに認識していただき、資金計画を立てていただいています。
[図表1]
貸し手、借り手双方の立場を理解することが重要
また、安定的に収益を上げるためには、空室率を抑える管理力も必要です。たとえば、物件の立地が悪くて入居者が集まらない場合、アパートメーカーや不動産会社の場合、すぐに家賃を下げることを提案してきます。しかし、それでは属性が低い入居者が増えるなどし、不動産の価値を下げることにつながりかねません。
一方、コンサルタント会社の場合、企業や仲介業者との付き合いが広いため、比較的入居者が見つかりやすいというメリットがあります。
具体的には、一見人気のない物件でも、大手企業への通勤の乗り換えの駅に近い、人気の学区に立地するなど、物件ごとの隠れた価値を見出して借り手のきめ細かなニーズとマッチングしていくのです。
また時代や環境の変化により、当初の用途での収益確保がどうしても不利になってしまった物件であれば、その不動産の使用用途を変える、ほかの不動産に組み換えるなどあらゆる角度から収益性を高める提案をしていきます。
このようなフォローは、筆者の会社が企業のコンサルタント、不動産会社、ウイークリー・マンスリーマンション運営管理会社などを経営しているからできることです。収益不動産を安定的に運営するためには、貸し手、借り手双方の立場を理解できるからこそ、はじめて可能になるのです。
[図表2]