ポイント
2019年の米国株式市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派スタンス転換や、米中貿易協議の進展期待などを背景に、昨年末から今年3月末時点までのS&P500指数の騰落率(配当含まず)は+13.1%上昇しました。しかし、年初3ヵ月間の累積騰落率が10%以上となった年は、年末までのいずれかのタイミングで大きく下落する傾向がありました。
FRBのハト派スタンス転換が米国株式市場を大きく押し上げた
昨年10月以降の米国株式市場は、米中貿易摩擦懸念やFRBの利上げ姿勢などを嫌気するかたちで、年末にかけて大きく下落する展開となりました。しかし、今年に入ってからはFRBが金融政策方針を一転、利上げについては様子見とし、保有債券の縮小も今年9月までとしました。また、米中貿易協議において進展があったとの報道が相次いだことも、米国株式市場の支援材料となったと考えられます。
このため、S&P500指数(配当含まず)は年初来(3月末時点)で+13.1%上昇し、過去5年の累積騰落率と比較しても突出して高い騰落率となりました(図表1)。
年初から3月末まで10%以上上昇した年は、年末までに反動安が出やすい
図表2は、1928年以降でS&P500指数の累積騰落率(1月~3月)が+10%以上だった年を抽出したものです。
過去91年間でS&P500指数が1月~3月に10%以上上がった年は計12回ありました。興味深いのは、その当該年の4月以降のパフォーマンスです。4月から12月までの月間騰落率の中で、最も下落した月間騰落率を抽出したところ、平均値で-8.8%、中央値で-7.1%、最小値で-2.9%、最大値で-21.8%という結果になりました。つまり、年初3ヶ月間で好調だった年は、年末までに月間騰落率が大きくマイナスになる可能性がある、ということが分かります。
今後のポイントは、マクロ経済指標に改善の兆しが表れるか
年初来の米国株式市場は、FRBがハト派スタンスに転換する中で、米中貿易協議の進展や、英国のEU(欧州連合)離脱延期観測など、期待先行で上昇してきた点が否めません。そのため、今後はこれらの政治イベントが市場関係者の期待通りに合意されることが重要になります。また、米中貿易摩擦によって悪化したマクロ経済指標も、市場関係者の期待通りに改善する必要もあります。1-3月期の企業決算が控える中、文字通り「不安の壁」をよじ登ることができるか注目です。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略…年初3ヵ月間の「累積騰落率」に見る注意点』を参照)。
(2019年4月8日)
田中純平
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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