高利回りにつられて…外貨建ての「投資信託」で大損した富裕層

「高金利」をうたう金融商品は魅力的に見えます。しかし、その言葉だけを捉えて投資、運用を行うと、大きな損失を負うことも…。本記事では、富裕層の資産運用サポートを手がけるペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社代表取締役の山口聰氏が、多額の損失を被ったある富裕層の失敗事例を紹介。「高金利」をうたう金融商品との正しい向き合い方を考えていきます。

「新興国債券に投資する」毎月分配型の投資信託に注意

世界的に低金利が続くなかで金融資産運用を考えたときに、候補の一つになるのが外貨建て資産での運用です。金利の高さが魅力であるトルコリラやブラジルレアル、南アフリカランド建ての債券に投資をする投資信託も、各社からずいぶん多くの商品が販売されてきました。

 

金利が高いという理由で、このような高金利通貨建て債券に投資をする投資信託を購入した結果、思うように利益を得られず、数年後には大きな損失になっていたというケースは少なくありません。

 

その結果、一時期に比べて、この種の投資信託が売れ筋ランキングに顔を出すことはあまりなくなりました。これには、毎月投資残高から投資家に分配金として資金を払い出す仕組みが、「長期運用に向いていない」という側面が見直されていると考えられます。高金利外債に投資をする際には、十分に注意する必要があるでしょう。

 

建設業オーナーであったU様が、引退したあとに退職金を、高金利通貨建て債券に投資をする毎月分配型投資信託に投資したものの、高金利を享受できるどころか結果的に資産を減らしてしまった事例があります。

 

U様は地方で建設業を営んでいましたが、すでにご子息に経営を譲り、自身は顧問として隠居生活をしていました。高齢になったことで、ゴルフなどで外出する機会も減り、収入も減った一方、時間的には余裕が出てきました。そして銀行などの金融機関は、U様個人の資産運用の提案のため、相変わらず熱心に日参していたようです。

 

2013年秋、U様は金融機関の担当者のすすめで、当時非常に高い分配金利回りで人気だった新興国債券に投資する毎月分配型の投資信託、1億5000万円分を購入しました。その商品は「通貨選択型」と呼ばれる仕組みで、米ドル建ての新興国国債を中心に投資をしつつ、他の新興国通貨への為替取引も組み合せる複雑な仕組みの商品でした。

 

U様は、投資額に対して最も分配金額が高いと説明されたトルコリラコースを選択していました。その額は1万口あたり毎月150円。2013年秋ごろの基準価額はおおよそ5300円くらいだったので、150円の1年分は1800円となり、極端にいえば5300円投資をすれば1年間で1800円ももらえる計算でした。年率にしてなんと33%にもなる計算です。

 

当時のトルコリラ建て10年物債券の金利は10%くらいと高かったのですが、運用コストもかかる投資信託でいくら高金利のトルコリラへ投資をするからといっても、年間利回り30%を見込むのは不可能です。それでも実際に払い出される額を見て、高額の分配金が得られると期待する傾向がありました。U様も現役当時と比較して収入が減った点や年金を補う点で、毎月振り込まれる分配金が何よりも楽しみになっていたようで、投資元金が減少していくという実感はあまりなく、たいして気にもしなかったそうです。

 

U様は、2014年春にさらに7000万円分追加購入しました。しかし、追加購入直後の4月分から分配額は120円に減額、純資産残高は2014年秋をピークに急激に減少に転じ、翌年には分配額も80円、50円と減額され、2018年にはとうとう15円になってしまいました。ちなみに2019年4月15日時点では基準価額は1521円、分配金額は5円です。

 

数字だけ見れば大きく資産は減少しているように感じますが、2013年秋から投資をしたU様は保有を継続した結果、おおよそ15%ほど元本割れしている状況です。払い込んだ投資資金の大部分が分配金として返金されてきたようなものなので、資産運用としての効果は薄く、元本割れしていることは事実なので、運用としては失敗です。

 

しかしここで取り上げたい問題は、非常に金利の高い債券や通貨で運用したはずなのに、なぜ思うような結果になりにくいのか、ということです。

金利の高い国は「通貨の価値」が減りやすいワケ

金利の高い国の資産や通貨に投資をすれば有利なのかというと、実は必ずしもそうではありません。金利が高い国では、通常、物価の上昇率(インフレ率)も高い傾向にあります。物価が上がれば通貨1単位で買えるモノの量は減ります。つまり通貨1単位当たりの価値が減る(安くなる)ことになるので、長期的に見ると金利の高い国の通貨は通貨安方向に進む傾向があるのです。

 

いわゆる購買力平価説といわれる理論で、金利の高い国の通貨に対して、長らくデフレ傾向が続いてきた日本では円高傾向であったことをイメージするとわかりやすいでしょう。ブラジルレアルや南アフリカランドなどは、新興国通貨としてはおなじみですが、長期的に見ればやはり通貨安円高傾向にあります。

 

つまり、とても高い金利が得られるからといって、また、その国の通貨が以前の半値ほどの水準になっているからといって、投資のチャンスだとは必ずしもいい切れないのです。高い金利収入や分配金を得られたとしても、保有するタイミングや期間によっては結果的に為替差損の拡大で帳消しになってしまう場合があり、注意が必要なのです。

 

もちろん、為替相場の動きを決める要素はインフレ率だけではなく様々ですが、長期的に見た場合は、このようなインフレ率の格差をベースにした動きにおおむね沿っています。これは、為替の変動に対する基本的な考え方の一つでもあるので、知っておくと「高金利だからお得です」といった商品をすすめられた場合、投資をするかどうかの判断材料の一つとして生かすことができます。

 

では、長期的に為替差損を被りやすいのであれば、高金利債券や通貨に投資をすることは避けたほうがよいのでしょうか。確かに外貨投資は為替の影響を大きく受けますが、投資対象を選ぶという視点が有効な場合があります。

 

外貨建ての株式への投資について、考えてみましょう。インフレ率が上昇するような局面では経済情勢が好調で、企業業績も拡大しやすいといえます。株式が現地通貨ベースで値上がりすれば、為替差損を吸収することにもなります。一般的にはインフレ率が日本より高い海外のほうが、株式価値は高まりやすいといわれており、長期では同じ外貨建てであっても債券に比べて株式は報われやすいといえるでしょう。ただ、株式は状況によっては大きく下落する可能性もあり、やはり投資目的に応じた金額や資産の組み合わせを検討するなどの工夫は必要です。

 

U様は約5年間保有されましたが、最も評価額が下落したとき(2018年8月)には4割以上の含み損となり、2019年3月末時点でも投資金額からすると約16%の損失という状況です。多くの分配金を受け取ってきたとはいえ、通貨などの価格変動幅も大きく、投資した資金の大部分を毎月引き出しながら資産を減らしてしまったという結果となっています。

 

 まとめ 

高金利の金融商品を検討する場合の注意点は、下記のとおりです。

 

●金利が高い国に投資をすることが必ずしも有利とはいいきれない

●高金利の国は一般的に物価上昇率(インフレ率)も高く、長期的には通貨安の傾向がある

●高金利の通貨や資産に長期投資をする際には、インフレ率格差や経済情勢による通貨安の影響に注意する

●高金利の通貨や資産に投資を検討する際は、債券だけでなく株式も対象としてみる

●高金利の通貨や資産に投資を検討する際には、価格変動の幅が大きい点にも注意する

 

外貨建て資産は資産運用においては有効な選択肢の一つですが、金利が高いからといってそれだけに注目しても投資がうまくいくとは限らず、投資先国の状況や投資目的、資産の種類などをチェックした上で慎重に判断したいものです。

 

U様のケースからも、長期保有で分配金を得ることが投資の大きな目的であっても、価格変動の大きさには注意しながら、投資対象国を分散したり、一部株式などを組み合わせたりすることを慎重に検討するのがよいといえるでしょう。

 

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ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社
 代表取締役

1978年生まれ。同志社大学法学部卒業後、大和証券株式会社入社。大阪、東京での支店勤務と人事部付きインストラクターを経験後、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー営業教育本部にてコンサルティングセールス研修の企画実施業務に携わる。その後バークレイズ・ウェルス・サービシズへ移り、日系メガバンクとの協働部門にて超富裕層向け資産コンサルティング業務に従事。クレディ・スイス証券ブライべートバンキング本部を経て2017年にIFA法人ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社を設立。これまでの経験を生かし、独立系金融アドバイザーとしてお客様の気持ちに寄り添う資産運用コンサルティングサービスの提供を心掛けている。
国際公認投資アナリストCIIA(R)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員CMA(R)

著者紹介

連載【GW特集】平成の世に「富裕層から滑り落ちた」情報弱者たち~彼らが失敗した理由

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