没落国・日本で中小企業が生き残るための「逆説的」戦略とは?

本連載では、公認会計士・米国公認会計士の資格を持ち、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じて新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターCEOおよび一般社団法人M&Aテック協会代表理事である・久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るための経営戦略を提案していきます。

10年前の戦略はもちろん、最新の戦略論も役に立たない

まず最初に私がここ数年強く体感していることについてお話します。

 

自分自身の経験や、成功(※1)を収めている経営者からお話を伺うことによって、大きな気付きが3つありました。

※1 「成功」とは主観的なものでありさまざまな定義付けが可能だが、ここでは、業績を大幅に向上や改善させ、結果として経済的な富を獲得したことを指すものとする(「経営者」の成功の一般的なイメージ)

 

(1)「想像している以上に日本の国力は衰えている」

 

日本は完全に没落国なのです。公表される統計値よりも実感を大切にした方がよいと思います。特にアジア主要国の攻勢はとどまるところがありません。さて、誰が一番打撃を受けるのでしょうか? ご想像の通り、中小企業です。日本は中小企業国家なのです。

 

「日本は凄い国」、「日本は素晴らしい」といったテレビ番組をよく見る人も多いでしょう。確かにそういった面はさまざまに存在するでしょう(実際私も日本をこよなく愛しています)。しかし、それで思考停止になって惑わされてはいけません。自ら多面的に、できれば生の情報を取りに行ったほうがよいと思います。我々はみっともない無駄なプライドを脱ぎ捨てないといけない時期に直面しているのです。

 

(2)「セオリーを信じるものは救われない」

 

セオリーは所詮過去から導き出されたひとつのモノの捉え方・考え方です。机上の理論にしか受け止められない場合もあります。

 

一方、経営はナマモノです。セオリーは特段勝てることを保証してくれるものではありません。また、たとえ勝てるセオリーが存在したとしても、猫も杓子も追随するので「差別化」にはつながりません。

 

私は直近で、いわゆるグローバル大手と言われる企業の経営企画部門にいました。実務をこなしながら、企業戦略に関する文献を読み漁る毎日を過ごしていたのですが、そこで衝撃的な事実に直面したのです。

 

「企業戦略(全体戦略と事業戦略の双方を指すものとする)について書かれた既存の文献は役に立たないことが多い」

 

例えば、10年ひと昔と考えて、その頃に出版された書籍を今読み返してみると、途中で読むのが辛くなったり、目次を眺めた時点で使えないとわかるものが散見されます。これは簡単にいうと、時代の潮流が想像以上のスピードで変化したからです。ITテクノロジーの急速な進歩、GAFA一強時代の突入、グローバルで見た各国間のパワーバランスの変化、等々。

 

そこで、最新の戦略論を実務に当てはめようとしました。結果は…ほとんどうまくいきませんでした。これは何故でしょうか。どこにどのような問題があるのでしょう。使い方が悪いのか、単なる自らの本源的な実力不足のせいなのか、それとも、戦略論自体が間違っているのではないか…。嫌が応にも「反芻思考」(※2)に陥らざるを得ませんでした。

※2「反芻思考」…ネガティヴな記憶やマイナスなことを繰り返し考えてしまうこと

 

(3)「“失われたXX年”はこのままではいつまで経っても終わらない」

 

皆さん、失われたXX年という言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、こう思ったことはないですか? 「失われたXX年っていつまで続くの?」と。そして、大体このような問いをした時には、次のような回答が返ってきます。

 

「急速にデジタル化が進むなど環境が大きく変わってしまい、ついていけないんだよ」

「中韓などのアジア諸国がどんどん強くなり、相対的に日本が弱くなったんだよ」

「人口が減少し続けて、内需に頼れなくなってきているんだよ」

 

全て正解です。でも、これからどうすればよいのか、解決方法について誰も何も答えていません。

 

以上より、私は「これまでのやり方を踏襲しているとさらに“没落”してしまう」と強く感じるようになったのです。だからこの連載においてひとつ大きなチャレンジをしてみたいと思います。

 

「私が色々とソリューションを提案してみよう」

 

そこで、本連載において次のような仮説を設定しました。

 

「中小企業の場合、経営戦略の基本ロジックを逆説的に捉えた方が実は成功する場合が多いのではないか」

「常識」とはいつの時代も壊されるために存在している

冒頭に述べたとおり、本連載の内容は、成功を収めている経営者からのインプットや私自身の経験などから導き出されたものです。すなわち、決して座学ではなく、また、机上の論理にも囚われません。

 

「常識」とはいつの時代も壊されるために存在しています。そして、壊して築かれたものが、新たな常識になります。経営者目線でいうと、後に「常識」と呼ばれるものを先に築き、「先行者利益を取りましょう」という話です。

 

そのため、可能な限り「当たり前」や「ありきたり」のことは触れないようにしています。そのようなことを書いたとしても、読者は代わりに巷に溢れる本を読んだり、他のネット媒体で学んだりすればよいだけで、この連載は何も付加価値を生み出しません。

 

ちなみに、読者の皆さんが共感するか、納得するか、全くわかりません。また、読み手によっても反応が大きく異なるでしょう。さて、私が提示するさまざまな仮説は皆さんにとって、果たしてダイアモンドの原石になるのか、それとも、ただの石ころに見えるのか。

 

これはまさに中小企業を経営している私にとっての大きな問いでもあります。仮説は検証しなければ意味がありません。それがなければ、単なる思い込みで終わってしまいます。このプロセスにより、ロジックがさらに洗練され、昇華され、令和時代の新しい常識につながる可能性が高まります。本連載を通じて、少なからず「学び」を感じとってもらい、そのうちのいくつかを実践し、何らかのリアルな成果に結びつけば非常に嬉しい限りです。

 

(補記)
本連載において提示するさまざまな仮説について、批判、異論、反論…、大々歓迎です。

株式会社H2オーケストレーター・CEO
一般社団法人M&Aテック協会・代表理事
公認会計士久禮義継事務所・代表
 

1995年、同志社大学経済学部を卒業後、中央監査法人に入所。1998年、日本興業銀行ストラクチャード・ファイナンス部へ出向。2000年、同法人金融部に配属。2001年、ドイツ証券投資銀行本部に転じる。2006年、ミシガン大学ビジネススクールを卒業後、The Bridgeford Group(ニューヨーク)にて勤務。2007年に帰国し、JPモルガン証券投資銀行本部、みずほ証券グローバル投資銀行部門など数社を渡り歩く。2013年、NEC経営企画本部に転じ、2019年独立。これまで、退職給付信託(国内初案件)の開発、民事再生法下のプレパッケージ型事業再生スキーム(国内初案件)におけるM&Aアドバイザー、事業法人グローバルIPOにおけるジョイント・グローバル・コーディネーター(2002年度国内最大案件)、特殊法人の民営化関連アドバイザー等、投資銀行業務における重要案件を幅広く担当した経験を有する。NECでは、上級役員の参謀役として経営の中枢に携わり、中長期戦略・グローバル戦略の立案・実行部隊として、ダボス会議事務局、グローバルアライアンス推進などに従事。公認会計士・米国公認会計士有資格者。著書に『流動化・証券化の会計と税務』(中央経済社)等。「スモールM&Aの教科書(仮題)」(中央経済社)を今夏出版予定。

著者紹介

連載令和時代に生き残る!中小企業のための新しい経営戦略

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