大仁田厚に学べ!中小企業が見習うべき「弱者の」戦略とは?

今回は、経営資源がない中小企業が、経営戦略をたてる上で重要な考え方について解説します。※本連載では、公認会計士・米国公認会計士の資格を持ち、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じて新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターCEOおよび一般社団法人M&Aテック協会代表理事である・久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るための経営戦略を提案していきます。

独自の戦略に基づき「真の意味での差別化」を

今回で2回目をむかえる本連載で、筆者がお伝えしたいことを一言でわかりやすくお伝えしましょう。

 

それは、「中小企業は馬場・猪木を目指してはいけない。大仁田厚を目指せ!」ということです。

 

皆さん、プロレスラーの大仁田厚氏をご存じですか? 実は彼こそが、我々が学ぶべきアイコンの一人なのではないでしょうか。 

 

初代タイガーマスクの全盛期に、全日本プロレス(=大企業)でチャンピオンであった人物です。しかし、主流ではないジュニアヘビー級のチャンピオンに過ぎず、初代タイガーマスクの対抗軸として存在していたものの、ハンサムでなく、体型もずんぐりしており、いわゆる「華」に欠け、決してスターと呼ばれるほどのレスラーではありませんでした。

 

その彼が独立後、FMWというインディーズ団体(=中小企業)を立ち上げたことを皮切りに、自分の人生を一変「させる」ことに成功したのです。電流爆破デスマッチなど、おおよそ王道から外れた「邪道」の戦い方を貫くことによって、熱狂的な信者を獲得していきます。プロレスラー引退後は、政治家、タレント、俳優として幅広く活躍しており、独自の戦略に基づき「真の意味での差別化」を実現させた好例です。

 

そして、皆さん、覚えてるでしょうか? 30万部を超えるベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著、KADOKAWA刊)です。

 

偏差値30以下という大学進学自体が現実的ではない学力の金髪ギャルが、ある教師との出会いによって1年で名門慶応大学に合格するという文字通りの実録サクセスストーリーです。弱者は強者の真似をせず、弱者の兵法で戦うべしという、これもまた好例ではないでしょうか。

 

ジャンルは違えど、これらをアナロジーとして捉えると、ヒト・モノ・カネ・情報といった一連の経営資源が欠けることが多い凡庸な中小企業であったとしても、弱者なりの戦略を練り、実行に移すことによって、「破壊的な成長」を遂げる可能性を示唆しているのです。

「経営資源」がなくても中小企業は戦える

中小企業は、令和元号時代に提供される「新たなゲーム」に対して、自分で「新たなルール」を設定して戦わないと楽しめません。そこで筆者は、中小企業が戦略を立案・実行する際に取るべき「新たなルール」を次の3点に分類してみました。

 

<中小企業が放つべき「3本の矢」> 

思考回路のフルモデルチェンジ

自らを勝ちパターンに誘導する独自の考え方や新しい概念を設定する。

 

逆説の戦略

差別化など表面的で耳障りのいい言葉に惑わされて本質を見失わないよう、あえてセオリーから逸脱した戦略を立案する。

 

自分だけの秘密の行動指針

企業の「あるべき姿」を最短距離で実現できるよう、正しい方角に向いて正しい行動をとる。

 

これからの連載で一つ一つ紐解いていきますが、一つずつ例示すると、以下のような感じです。

 

①「会社で一生懸命努力して仕事をする人」に無関心である。

②「ブルーオーシャン戦略」に力点を置いた時点で負け確率が高まる。

③会社の成長は与えられるものではなく、本来意図的に自身でコントロールすべき。

 

え、大丈夫ですか? 本気ですか? そう思う人も多いでしょう。非常識であったり、セオリーで考えると逆であったり、誤ったりするのでしょう。しかし、セオリーは勝てることを全く保証してくれません。なぜなら、机上の理論にすぎない場合もあり、所詮過去から導き出されたものにすぎません。そして、そもそも中小企業が大企業と同じセオリーを使った場合、直感的に勝てると思いますか?

 

加えて、このルールを適用していく上で大きな特長があります。

 

それは「経営資源の豊富さはほとんど問題とならない」ということなのです。前述した2つの事例と同じく、モノ・カネ・情報といった経営資源がほとんど必要ありません。お金をかけずに築くことができる見えない資本といえるかもしれません。唯一キーとなる経営資源はヒトでしょうか。これは本連載を読んでいただいて学び取ることを大いに期待します。

 

それぞれの矢はいずれも「新規性」を伴っていることでは共通していますが、それぞれを最も的確に表現しているキーワードを列挙してみると、①は「柔軟な発想力・天邪鬼な視点」、②は「破壊的進化・思い込みの排除」、③は「常軌の逸脱・ダントツの行動力」ということになるでしょう。いずれも経営資源の豊富さとは直接的には関係ないですよね。

 

[図表1]中小企業が放つべき「3本の矢」の相関図
[図表1]中小企業が放つべき「3本の矢」の相関図

 

では、次回から、前述の中小企業が放つべき「3本の矢」の内容について、一つ一つ具体的に提示していきながら、ポイントを解説しますので、楽しみにしてください。

株式会社H2オーケストレーター・CEO
一般社団法人M&Aテック協会・代表理事
公認会計士久禮義継事務所・代表
 

1994年、同志社大学経済学部在学中に公認会計士第2次試験合格。1995年、同校卒業後、中央監査法人に入所。1998年、日本興業銀行ストラクチャード・ファイナンス部へ出向。2000年、同法人金融部に配属。2001年、ドイツ証券投資銀行本部に転じる。2006年、ミシガン大学ビジネススクールを卒業後、The Bridgeford Group(ニューヨーク)にて勤務。2007年に帰国し、JPモルガン証券投資銀行本部、みずほ証券グローバル投資銀行部門、Deloitteなど数社を渡り歩く。2013年、NEC経営企画本部に転じ、2019年独立。これまで、規模・地域・業種を問わず数兆円超(企業価値)のM&Aアドバイザリー、民事再生法を活用した事業再生スキーム(国内初案件)におけるM&Aアドバイザリー、事業法人グローバルIPOにおける共同主幹事(2002年国内最大案件)、特殊法人の民営化関連アドバイザリー、退職給付信託や各種証券化スキームの開発等、投資銀行業務における重要案件を幅広く担当した経験を有する。NECでは、上級役員の参謀役として経営の中枢に携わり、中長期戦略・グローバル戦略の立案・実行部隊として、ダボス会議事務局、グローバルアライアンス推進、新規事業開発、中期経営計画立案などに従事。公認会計士、事業承継士、米国公認会計士(未登録)。著書に『流動化・証券化の会計と税務』(中央経済社)、「スモールM&Aの教科書 −売買当事者が安心して取り組める実務知識−」(中央経済社)など。

著者紹介

連載令和時代に生き残る!中小企業のための新しい経営戦略

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