「融資」は購入時のみ気にすればいいとは限らない
最適な出口戦略は、その物件の持つ特性などによって変わります。たとえばRCマンションのような規模の大きな1棟物件は、融資の状況に左右されます。木造アパートであれば、とくに収益が重視されます。融資関連は購入時に気にするものというイメージを持っている人も多いと思いますが、有利に売却を進める上でも、融資に対する考え方は重要です。
その解説をするため、まずは購入者目線で考えてみましょう。
融資をフルに使いたい投資家が購入を希望する物件の価格帯は、1億円前後です。1億円前後の物件は、人気の的です。融資についての考え方は投資家の価値観にもよりますが、せっかくなら最高額で借り入れたいという意見が大勢のようです。たとえば前述の1億円前後の物件の場合、中途半端に7000万円程度借りるとなると、次の物件購入時に借りづらくなります。そのため、中途半端な物件はなるべく買いたくないと考える人が多いのです。
一般的な個人投資家が購入できる物件は、だいたい3億円が上限です。4億円以上になると、なかなか手が出なくなります。1億円程度なら、身近にある物件との比較で高いのか安いのか判断しやすいのですが、数億円の規模にまでいくと、金額の妥当性がわかりにくくなります。その先の10億円、50億円ともなれば、未知の世界です。
こうした購入者の心情もあり、1億~3億円以内の物件は、融資が付きやすい時期に高く売れるチャンスが訪れます。高く売るならば、銀行が融資に積極的で、たくさんの人が「買いたい!」と手を挙げてくれるタイミングです。
銀行が閉じてしまえば、手を挙げる人たちが限られてしまい、思うように売れないかもしれません。それでも購入希望者が1人もいないということは、この金額規模ではまず考えられません。
ですから高く売ることにこだわらなければ、この価格帯の物件は、売りたいときにいつでも売ることができます。「いつでも出口がある」という強みも持っているのです。
物件を購入する際は「誰が買うのか」という目線を持つ
このように、物件の価格帯と融資、市況は密接な関係にあります。そして使える融資によって買える人が変わります。昨今の活況は、融資の出やすさが背景にあります。やはりタイミングを見ることが重要です。金額が高いほど、融資が出やすいときにこそ高値売却のチャンスがあります。
物件を購入するとき、「この先、誰が買うのだろう?」という出口の目線を持つことは重要です。私自身、物件を扱うときには、どの銀行に融資を出してもらえるかといったことを考えています。「□■銀行のお客さんなら、こんなものを好むかな?」と想像します。金融機関ごとの特性を理解し、それに合わせて準備を行えば、有利に売却を進めることができます。