複数の金融機関と取引する不動産会社が情報ソースに
前回述べたように、金融機関の動きによって、刻一刻と状況は変わります。木造アパートが注目されたり、積算評価の高い物件が注目を集めたり・・・と、その動きを個人投資家がひとりで追うことは、なかなか難しいものです。
トレンドに合わせて物件を売りに出せば、有利になります。金融機関がどのような姿勢で融資をしているかという情報を持っていれば、それに合わせた作戦が立てられるのです。
売却価格を不動産オーナーから提案するのには限界があります。しかし「どの銀行を選ぶべきか」「銀行がどこまで融資を出すか」という観点であれば、不動産会社が知り尽くしていますから、希望の売却価格に応じて相談してみるのもよいでしょう。
その際に注意すべき点は、特定の金融機関とのみ付き合っている不動産会社ではなく、必ず複数の金融機関と取引している会社から情報を得ることです。たとえば収益不動産専門の会社であれば、様々な金融機関と密接に付き合っています。
そこで重要になるのは、やはりコミュニケーションです。たとえビジネスでも人間関係が最重要なのは、本連載で繰り返し伝えてきたとおりです。
最初から「金融機関の情報だけを教えてくれ」などといえば、不動産会社の心証を害すのは間違いありません。不動産会社にも付き合いがあります。顧客の融資を通すために、各金融機関との関係性を築いているのです。自分がサポートすべき顧客として認められなければ、気持ちよく情報を渡してくれません。
要はコミュニケーションの問題で、「所有物件の売却を検討していて、その売却で得た現金で次の物件を購入したい」といったビジョンを伝えるなら、まったく状況が変わるはずです。きっと気持ちよく金融機関の動向を教えてくれるでしょう。
不動産会社も人の子です。自分の利益優先の身勝手な顧客は避けたいと思うのは、当然のことでしょう。
筆者自身、ただ「高く売りたい」「安く買いたい」「情報だけくれ」と要求するお客様とは、気持ちよく仕事をすることができません。そしてやはり長期的に見れば、そういったお客様とはご縁が続いていません。
もちろん、不動産投資の目的はお金もうけ。「とにかくもうけたい」という人は多いと思います。それは不動産会社も認識しています。
しかし大切なのは、共通の目標に向かって、ともに頑張っているのだという感覚なのではと思います。まず、達成すべき目標を設定する。そしてそれに向かって、不動産会社を気持ちよく巻き込んでいけばよいのです。「この人は、うちの会社のファンになってくれているのだな」と思えれば、不動産会社も奮起するはずです。
多くの不動産会社は顧客と接する際、そういった点を見ているものです。いろいろな会社に節操なく顔を出している人というのは、存外わかるものです。
物件情報は基本的に市場に公開されており、どの不動産会社でも扱えるようになっていることが多いです。究極的にいえば、売買のたびに仲介会社を変えることもできます。
しかし、自分が一番信頼できる会社を見定めて関係を築き、顔なじみとなることで、より良い結果を導くことができるはずです。「自分を一番頼ってくれている」と感じる人に一生懸命になるのが、人情というものです。
「不動産投資家コミュニティ」を活用する手も
昨今は、不動産投資家のコミュニティも隆盛を極めています。大家同士の勉強会も盛んです。SNSを通じて、情報交換も容易になっています。こういったところでも、金融機関の情報は多く流れます。
「C銀行のD支店ならオーバーローンが出る」
「E銀行なら木造でも30年出る」
「F銀行の年収制限が上がった」
など・・・その信憑性はともかく、こういった情報を集めることは無駄ではありません。正確な判断をするのに役立ちますから、情報は多ければ多いほど良いでしょう。
ただし、そのすべてが自分に当てはまると思わないほうが安全です。本来、不動産投資を成功させる戦略は、自分の属性や物件タイプ、エリアなど、様々な条件を勘案して立てるべきもの。三者三様のやり方があります。そしてそのどれかひとつでも異なれば、金融機関からの対応は変わってきます。
また、一般的にいわれている銀行の基準が、支店によって変わるということもあります。
情報は多角的に集めてよいとは思いますが、不動産投資の成功は、オーダーメイドの作戦でのみ実現することができます。そしてその際、自分の情報を知り尽くした上で、最適な戦略立案のサポートを行ってくれる不動産会社を上手に活用していくことが必要不可欠です。