「目先の融資実績」が欲しい営業マンの姿が浮き彫りに
昨年のスルガ銀行を筆頭とする、投資不動産への不正融資問題を受けて、金融庁は昨年、各銀行へアンケートを行いました。その結果が、3月28日、金融庁のホームページで公表されました。詳細内容は、こちらを参照・印刷してください。
まず、この公表内容をどう読むか、です。アンケート結果というものは、会社内でもそうですが、公表する際にはある程度、オブラートに包みます。つまり、この公表内容より、実態はもっとひどいものだと思われます。
アンケート結果から、金融庁が問題視している要点は、次のとおりです。
(資料の3ページから4ページです)
・銀行営業マンが、不動産業者に改ざん行為を能動的に働きかけていた
・多くの銀行営業マンが、不正に作成されたデータを黙認して融資していた。
多くの不動産業者による不正行為に対して、銀行のチェック機能がないどころか、それを助長していた、ということが、アンケート結果からも、明るみに出ているのです。特に、平成27年度以降、相続対策として高齢者の富裕層、ならびに、高収入の給与所得者を対象に、不正融資が極端に実績を伸ばしました。
しかも、銀行が紹介を受ける不動産業者に対して、取引基準を設けているという答えは、14%という結果が出ています。つまり、融資さえできるならなんでもいい、ということだったのです。加えて、融資の相手は多くが相続対策の高齢者やサラリーマンです。
銀行交渉など、まったくの無防備な方々です。それをいいことに、不動産業者は投資物件の売価を吊り上げ、それを銀行が高金利で全額融資する、といったことが横行していたのです。
結局、銀行の営業マンにすれば、事業性よりも目先の融資実績が欲しいのです。支店長も同様です。銀行にとって申し分のない高金利で設定しても、交渉もされず、文句もない、となれば、カネ余りの昨今、銀行が飛びつくのも、当然だったのです。
要は、声を挙げない借り手には、めっぽう強気で仕掛けてきます。それが銀行です。ということを申し上げたいのです。
銀行交渉の際には、この資料を机の上に出し、
「金融庁が公表したこの資料を読ませてもらったけど、ひどい内容ですね。金融庁が改善へ向けて躍起になるのも、無理ないですよね。おたくは大丈夫でしょうね」
と、言い放ち、ゆさぶりをかけてほしいのです。
《銀行がどんなことをしていたのか、こっちはわかっていますよ》
ということを、遠回しに伝えることで、こちらの立場をより有利な状況に、立たせてほしいのです。交渉は、心理戦なのです。
高金利と手数料…銀行が失った2本の大黒柱
約1年前、投資不動産への、スルガ銀行の不正融資が明るみにでました。仲介業者の不適切行為だけでなく、銀行も加担していたことが発覚し、大問題になったのです。しかも、それはスルガ銀行だけでなく、他の地方銀行でも同じ形の不正融資が続々とでてきたのです。
当然、金融庁は銀行に対して、投資不動産への融資姿勢見なおしを促しました。その結果、銀行は融資の大きな柱を失ったのです。
カネ余りのなか、平成27年度以降、相続対策として投資不動産への融資は実績を伸ばしました。平成28年度にマイナス金利が導入され、法人融資はますます利幅を失い、各地方銀行はますます、投資不動産に力を入れたのです。
と、もうひとつ、同じ時期から銀行業績の柱となっていたのが、生命保険の販売代行業務です。全額損金商品を売り物に、手数料稼ぎをしまくったのです。しかしそれも、ご存知の通り、この2月には国税庁からの「お前らやりすぎだ!」との一喝が入り、今や全額損金保険の商品が、すべてストップした状態です。
つまり銀行は今、最大の窮地に追いやれているのです。投資不動産融資の高金利、保険販売代行の大きな手数料、という、ここ数年の稼ぎの大黒柱が、2本とも消え去ったのです。となれば、借り手にとって、ますます有利な状態です。
これまでは「その業界への融資は、うちでは控えています」と敬遠されていた業界でも、融資を受けられる可能性が出てきたのです。銀行はもう、そんなことを言っている場合ではなくなってきているのです。
加えて、低金利、個人保証・担保は無し、保証協会も無し、くらいの条件は要求して当然の状態です。これから設備投資を検討されている会社は、このあたりの銀行の実情を踏まえたうえで、強気の銀行交渉に取り組んでほしいのです。