昨年、スルガ銀行を筆頭とする投資不動産への不正融資問題を受け、金融庁から各銀行へ「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」が行われ、先ごろその詳細が公開されました。今回は、そのアンケートから浮き彫りになった銀行の融資の実態について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。※本記事は、2019年4月 2日、4月4日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

「目先の融資実績」が欲しい営業マンの姿が浮き彫りに

昨年のスルガ銀行を筆頭とする、投資不動産への不正融資問題を受けて、金融庁は昨年、各銀行へアンケートを行いました。その結果が、3月28日、金融庁のホームページで公表されました。詳細内容は、こちらを参照・印刷してください。

 

まず、この公表内容をどう読むか、です。アンケート結果というものは、会社内でもそうですが、公表する際にはある程度、オブラートに包みます。つまり、この公表内容より、実態はもっとひどいものだと思われます。

 

アンケート結果から、金融庁が問題視している要点は、次のとおりです。

(資料の3ページから4ページです)

 

・銀行営業マンが、不動産業者に改ざん行為を能動的に働きかけていた

・多くの銀行営業マンが、不正に作成されたデータを黙認して融資していた。

 

多くの不動産業者による不正行為に対して、銀行のチェック機能がないどころか、それを助長していた、ということが、アンケート結果からも、明るみに出ているのです。特に、平成27年度以降、相続対策として高齢者の富裕層、ならびに、高収入の給与所得者を対象に、不正融資が極端に実績を伸ばしました。

 

しかも、銀行が紹介を受ける不動産業者に対して、取引基準を設けているという答えは、14%という結果が出ています。つまり、融資さえできるならなんでもいい、ということだったのです。加えて、融資の相手は多くが相続対策の高齢者やサラリーマンです。

 

銀行交渉など、まったくの無防備な方々です。それをいいことに、不動産業者は投資物件の売価を吊り上げ、それを銀行が高金利で全額融資する、といったことが横行していたのです。

 

結局、銀行の営業マンにすれば、事業性よりも目先の融資実績が欲しいのです。支店長も同様です。銀行にとって申し分のない高金利で設定しても、交渉もされず、文句もない、となれば、カネ余りの昨今、銀行が飛びつくのも、当然だったのです。

 

要は、声を挙げない借り手には、めっぽう強気で仕掛けてきます。それが銀行です。ということを申し上げたいのです。

 

銀行交渉の際には、この資料を机の上に出し、

「金融庁が公表したこの資料を読ませてもらったけど、ひどい内容ですね。金融庁が改善へ向けて躍起になるのも、無理ないですよね。おたくは大丈夫でしょうね」

と、言い放ち、ゆさぶりをかけてほしいのです。

 

《銀行がどんなことをしていたのか、こっちはわかっていますよ》

 

ということを、遠回しに伝えることで、こちらの立場をより有利な状況に、立たせてほしいのです。交渉は、心理戦なのです。

高金利と手数料…銀行が失った2本の大黒柱

約1年前、投資不動産への、スルガ銀行の不正融資が明るみにでました。仲介業者の不適切行為だけでなく、銀行も加担していたことが発覚し、大問題になったのです。しかも、それはスルガ銀行だけでなく、他の地方銀行でも同じ形の不正融資が続々とでてきたのです。

 

当然、金融庁は銀行に対して、投資不動産への融資姿勢見なおしを促しました。その結果、銀行は融資の大きな柱を失ったのです。

 

カネ余りのなか、平成27年度以降、相続対策として投資不動産への融資は実績を伸ばしました。平成28年度にマイナス金利が導入され、法人融資はますます利幅を失い、各地方銀行はますます、投資不動産に力を入れたのです。

 

と、もうひとつ、同じ時期から銀行業績の柱となっていたのが、生命保険の販売代行業務です。全額損金商品を売り物に、手数料稼ぎをしまくったのです。しかしそれも、ご存知の通り、この2月には国税庁からの「お前らやりすぎだ!」との一喝が入り、今や全額損金保険の商品が、すべてストップした状態です。

 

つまり銀行は今、最大の窮地に追いやれているのです。投資不動産融資の高金利、保険販売代行の大きな手数料、という、ここ数年の稼ぎの大黒柱が、2本とも消え去ったのです。となれば、借り手にとって、ますます有利な状態です。

 

これまでは「その業界への融資は、うちでは控えています」と敬遠されていた業界でも、融資を受けられる可能性が出てきたのです。銀行はもう、そんなことを言っている場合ではなくなってきているのです。

 

加えて、低金利、個人保証・担保は無し、保証協会も無し、くらいの条件は要求して当然の状態です。これから設備投資を検討されている会社は、このあたりの銀行の実情を踏まえたうえで、強気の銀行交渉に取り組んでほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

古山 喜章,井上 和弘

東峰書房

数字が苦手な人にこそ読んで欲しい! 本書では、会社経営にまつわる数字を読み解き財務力をアップさせる方法を解説します。数字が苦手だからこそとことんわかりやすく理解する方法を見出した筆者。そのノウハウをお伝えし、経…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧