「将来のお金が不安だ」「寿命は伸びているが、自分は何歳まで稼ぎ続けられるのか?」といった、老後の心配は尽きません。本連載では、書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)より一部を抜粋し、そんな老後の不安を解消するための手段としての「米国つみたて投資」について解説します。本記事では、「つみたて投資」で100億円を築き上げた大学教授の事例を紹介します。

積立投資で最大の効果を得られるのは「若い人たち」

◆積み立ては、早く始めるほど楽に貯まる

 

書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』は、もちろん40代、50代の人たちにも読んでいただきたいのですが、読んだ後、「よし! 自分もやってみよう」と思って積立投資を始めることで最大の効果を得られるのは、やはり若い人たちです。

 

30代からのスタートでも十分です。たとえば35歳から定年までの30年間、ある程度、リターンが期待できそうなもので積立投資を続けていけば、定年を迎える頃には3000万円程度の資産は築けているはずです。

 

でも、20代から始めたらどうでしょうか。25歳からコツコツと積立投資を行って、定年を迎える40年後にはどのくらいの資産が築けるでしょうか。もし平均リターンが年5%で、40年後に3000万円をつくろうとしたら、毎月の積立額は1万9577円ですから、2万円弱で済みます。

 

もっと大きな資産を築きたいと言う野心があったとしましょう。頑張って毎月4万円を積み立てて、年平均5%で運用できたとします。この場合、40年後の資産額は、6130万円です。

 

「ろくせんまんえん」ですよ。65歳を迎える時、これだけの個人資産を持っていたら、老後の生活はかなり安心できるのではないでしょうか。だからこそ、若いうちから積立投資を始めた方が良いのです。これには実は、先人の実例があります。

 

 

本多静六(ほんだせいろく)という人物をご存じでしょうか。1866年生まれで、慶応、明治、大正、昭和という4つの時代を生きた方ですが、「公園の父」と言われています。日比谷公園の設計は彼の手によるものです。

 

職業は大学教授なのですが、その生涯を通じて、100億円という巨額の富を築き上げました。どうやら、ドイツ留学時代に師事した先生から、蓄財の方法を学んだようです。方法は実にシンプルで、その根底にあったのが「つみたて」なのです。彼は稼ぎの4分の1を貯蓄に回しました。もし純粋な手取りが20万円だったら、5万円を貯蓄する計算です。

 

そして、貯まったお金を、景気が悪くなって株価や不動産価格が安くなった時、思い切ってそれらに投資することを、長期にわたって繰り返したのです。当時の日本は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで欧米列強と肩を並べ、成長する新興国でしたから、不動産にしても株式にしても、かなり高いリターンが得られたのだと思います。

 

「当時だから100億円もの個人資産を築くことができたのだ」と言われれば、それはその通りなのですが、ものは考えようです。日本の成長が今後期待できないと思うなら、他の成長する国や地域の株式市場に投資すれば良いのです。長期の積立投資と、長期で成長が期待できる投資対象を選択できれば、100億円は無理だとしても、人生を全うするまで経済的に困らない程度の資産は築けるはず。

 

実は、本気で積立投資に取り組めば、3000万円なんて単なる通過点であって、1億円も夢ではないのです。本連載は、30年間で3000万円の個人資産を築くための方法を考えるのが第一の目的なので、これはあくまでも「ちょっとしたお遊び」としてお付き合いください。

 

たとえば前出の本多静六のように、収入の4分の1を貯蓄に回したとしましょう。20代のうちは手取り20万円程度で厳しいかもしれませんが、30代、40代、50代にもなれば、徐々に手取り収入が増えていきます。

 

65歳になるまでの生涯収入を2億2100万円だとすると、40年が480カ月なので、単純に割ると平均月収は46万416円になります。仮に46万円にしておきましょう。その4分の1、つまり11万5000円を毎月積立投資に回したら、どうなるでしょうか。40年間の平均リターンは年5%と想定します。

 

これが驚くなかれ、1億7622万円にもなってしまうのです。

 

ちなみに1億円を目標額に設定して、年平均リターンを5%にした場合、月々の積立額はいくらになるのかを計算すると、6万5259円になります。かなり現実的な数字だと思いませんか。「1億円」って、絶対に手が届かない、とんでもなく大きな金額のように思っている人が大勢いるのですが、実はそれほど高い目標でもないのです。1億円、欲しいですよね。1億円あれば、老後の不安はなくなるはずです。

 

ただ、それを実現するためには、2つの点に留意する必要があります。

 

第一の留意点は、積立額。25歳から積立投資をするとして、最初は収入が少なくて厳しいから毎月2万円の積立にするのは良いでしょう。大事なのは、ずっと2万円で通すのではなく、収入が増えたら、それに連動させて積立の額も増やしていくこと。

 

もうひとつの留意点は運用利回りです。何で積立投資をするかによって、「40年で1億円」を達成させる確率が変わっていきます。少なくとも、年0.01%の定期預金では、「絶対に不可能」であることはご理解ください。

「残ったお金で積立投資をしよう」は大間違い!?

 Q  投資したいけれど、今は資金がありません。

 

 A  月5000円でも1万円からでもOKです。半強制的に投資に回して早く始めることがコツです。

 

「投資を始めたいけれども、手元に余裕資金がないから、ある程度お金が貯まったら始めます」

 

このようにおっしゃる方は、結構大勢いらっしゃいます。でも、そのようにおっしゃる方は、きっと100万円、200万円のお金ができたとしても、結局のところ投資をせずに終わるようです。「手元に余裕資金がない」というのは、本当は投資をしたくないのが本音だったりするからです。

 

むしろ、私はお金がない人ほど投資をするべきだと考えます。年齢が若いうちはなおさらです。月1万円でも良いので、とにかく何とかしてそのお金を捻出して、投資に回すべきです。

 

「1万円で何ができるというんだ?」と思っている人もいるでしょう。大丈夫です。1万円もあれば十分、投資できます。そのための積立投資なのです。

 

1万円をどうやって捻出するか。恐らく多くの人は、毎月のお給料から衣食住に必要な生活費、電気・ガス料金、携帯電話などの通信費、自分のお小遣い、ローンやクレジット料金の返済、といったさまざまな支払いを行い、残ったお金で積立投資をしようと考えていませんか。

 

これ、大きな間違いです。この発想だと、いつまで経っても積み立てることができません。大事なことは、まず月々の積立額を決め、それは最初からなかったものとして、月々の生活設計を立てることです。たとえば、給料が手取り15万円で、毎月2万円を積み立てようとするならば、まず15万円から2万円を差し引き、残った13万円で生活する。すると、2万円は確実に積立投資に回せます。

 

米国株式を積み立てていくうえで、iDeCoや企業型確定拠出年金を真っ先にお勧めするのは、両方とも半強制的に月々の掛金が積み上がっていくからです。

 

もちろん節約したり、共働きにしたりして、積立投資に回せる資金的な余裕をつくることも大切ですが、人は不思議なもので、最初からないものとしておけば、大体において、残ったお金で生活するものなのです。その意味では、積み立てるお金を給料から自動的に差し引いてしまうのが、着実に資金を積み立てられる一番の方法だと思います。

 

 Q  それでは、どれぐらいの金額を投資すればいいのですか?

 

 A  最低でも給料3カ月分は、現金として残しておきましょう。

 

もちろん、株式投資にはリスクがつきものです。本連載第6回でも述べたように、株価も常に変動しています(関連記事『積立投資の投資信託で「複利効果」を最大限に活用するには?』参照)。そこで誰もが考えるのが、価格変動リスクがある株式に、自分が持っている資産のどの程度を投資すれば良いのか?ということでしょう。

 

これは年齢にもよりますが、本連載がメインの対象として考えている、ゴールまで30年くらいの時間がある若い人たちは、株式の比率をうんと高めても良いと考えます。とはいえ、いつでも元本割れしない状態で現金化できる資産も必要なので、これは預貯金に置いておきます。その金額は、人によって考え方はそれぞれですが、私なら最低でも月給の3カ月分は、預貯金で持つようにします。これは失業給付の問題があるからです。

 

 

新卒で働いて10年以内に自己都合で退職した場合、失業手当が給付されるのは、待期期間が終了してから3カ月後になります。つまり3カ月間は全く収入がありません。その間の生活費を賄うための資金として、最低でも月給の3カ月分を預貯金に置いておくというイメージです。

 

もし月給が手取りで15万円だったら、45万円弱です。その程度の預貯金があれば十分でしょう。そこが固まったら、あとは貯蓄に回す分を全額、「米国つみたて投資」に回しても良いと考えます。

 

 

太田 創

株式会社GCIアセット・マネジメント

投資信託事業グループ

執行役員

チーフ・マーケティング・オフィサー

 

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    本連載は、2019年3月18日刊行の書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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