DIYにより「自宅の資産価値」を高めるのが一般的
◆DIYを楽しみながら、住宅の資産価値を上げる
アメリカ人が不動産の価値を守るためにしていることは、ゾーニングやHOAといった、行政やエリアレベルでの管理だけではありません。
「DIY(Do It Yourself)」、つまり「手作り」で家の修繕や改装をして、住み心地を良くしつつ、売却価格を維持、上昇させることは、実に多くのアメリカ人が実行しています。自分たちに必要なものは自分たちで作るというのは、そもそもイギリスから東海岸に移住してきて、西部の荒野を開拓していった時代から続く、アメリカ人のDNAのようなものかもしれません。
アメリカには、SEARS、THE HOME DEPOT、LOWE'Sといった巨大なホームセンターが各地にあり、DIYに必要な素材や、工具がなんでも売っています。それこそ、やる気さえあれば、自分だけで家一軒を建てることができるくらいの品揃えです。
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私の実感では、家を持っているアメリカ人の10人のうち8人は、DIYを趣味にしています。ちょっとした家具を作ったり、建具の修理、壁を塗り替えたりといった程度のことから、フローリングの張り替え、使っていないガレージをベッドルームに改装する、果ては、部屋を付け足す増築(これには行政の許可も必要ですが)といったレベルまで、多くの人がDIYを楽しんでいます。
アメリカの住宅は基本的に日本よりも大きく、部屋数も多いので、使っていない部屋があることもよくあります。そこで使っていないひと部屋を全面的にリフォームして、それが終わったらその部屋を使いながら、今度は隣の部屋をリフォーム、という具合に、ひと部屋ずつリフォームを進めていき、数年かけて家全体を新しくしてしまうというやり方がされることもあります。
このようにアメリカ人の間では、家は自分で、自分たちの好みに合った暮らしやすいものに変えていくという考え方が主流です。それも、そのリフォームの工程自体を趣味として楽しみながら行います。そこで、基礎や構造体、エアコンや配管といった部分さえしっかりしていれば、中古であるからといって避けられることはなく、中古であることはあまりマイナスの評価になりません。
これも、中古の建物でも価格が下がるとは限らない理由の一つです。
さらに、同じ築年数の中古住宅で、ボロボロの建物と、綺麗にリフォームされている建物とがあれば、他の条件が同じなら後者の方が高く売却できるでしょう。つまり、DIYによるリフォームは自宅の資産価値を高める意味もあります。
このように、アメリカ人にとって、住宅のDIYは、
●その作業自体が楽しく
●自分たちに暮らしやすい家がつくれて
●資産価値を高めることができるという
「一石三鳥」の趣味なのです。アメリカで家を持つ人の8割がDIYを楽しむのも頷けます。ちなみに、私は2割の方です(とても不器用なので)。
建物評価において「築年数」は重視されない
◆100年住めることもある木造住宅
アメリカで中古住宅の価格が落ちない理由の一つ目は、新築物件の供給が少なく、住宅市場において中古物件が占める割合が8割以上だという点、二つ目は、DIYによって住人が建物をリフォームして価値を高めることが広く行われている点でした。そして三番目の理由は、建物の寿命が長いことです。
アメリカで生まれ育った私が日本に来て感じたことは、同じ木造住宅でも、日本の家の方が平均的な大きさが小さいのは当然ですが、それだけではなくて、全体的に建材が「きゃしゃ」だということです。もちろん、耐震性能などの構造計算はしっかりなされており、その点ではおそらくアメリカの住宅よりも優れているのでしょうが(アメリカは地震が非常に少ないので耐震性能が日本ほど厳密に求められない)、建材がきゃしゃであることから、寿命は短い場合が多いようです。
日本の木造住宅の法定耐用年数は22年です。一方アメリカでは、27.5年です。そこからもアメリカの住宅の方が長寿命であることは推測できますが、22年と27.5年という差以上に、日米の住宅の利用可能期間には差があると思います。
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イギリスでは、住宅は主にレンガでつくられます。そのため、建物は非常に長持ちし、築200年、300年といった家でも普通に住んでいるものもあります。イギリスからの移住者がつくった国、アメリカでは、カナダから安価で良質な木材が豊富に輸入できることもあり、木造住宅が主流です。しかし、イギリスで培われた「家は長く使う」という文化風土が根付いているため、木造住宅であっても長期間使える頑丈さに重きが置かれています。
非常にしっかりした耐久性の高い建材が使われ、(地域によりますが)ほとんど地震が発生しないといったことから、住宅は大切に使えば100年はもつと考えられており、80年~100年前の木造住宅が現役で使われていることも、珍しくありません。日本の奈良県にある法隆寺が、建てられてから1400年の木造建築であることを考えれば、100年もつことはなんら不思議ではないでしょう。
もちろん、物件によって異なり、すべての家が必ず100年使えるというわけではありませんし、手入れや修繕によっても状態は大きく変わります。しかし、少なくとも日本の住宅のように、平均寿命が30年程度ということはありえません。
「築40年の木造住宅」と聞いたとき、日本なら「もうボロボロじゃない?」という印象を受けると思います。しかしアメリカでは、まだまだ長く使えるね、と見られるのです。平均的な使用可能年数が長いため「築何年」という数字自体をアメリカ人はあまり気にしません。それは、インスペクション(建物状況調査)という仕組みが、普通に用いられることとも関係していると思います。築年数というある意味「あいまいな数字」を判断基準にせず、客観的な調査であるインスペクションによって問題点があるかないかを判断するのです。
ブロドスキ・ザクリ
株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部 エグゼクティブコンサルタント