ブラジル最新事情、年金改革への期待が上回る

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

ブラジル中銀も政策判断で注目するのが年金改革です。最新動向は市場の期待が懸念をやや上回っています。2月は軟調だったレアルや株価が、3月に回復傾向だからです。ただ、年金改革の議論が議会で本格化するのはこれからです。ボルソナロ大統領の思惑通り審議が進むか不透明なため、政策金利は当面据え置かれる可能性が考えられます。

ブラジル金融政策:市場予想では据え置きが見込まれているが注目は年金改革の動向

ブラジル中央銀行は2019年3月20日(日本時間では21日早朝)、金融政策会合の結果を公表する予定です。市場では、ブラジル中銀が政策金利を過去最低の6.50%に据え置くことを見込んでいます(図表1参照)。

 

[図表1]ブラジルレアル(対ドル)レートと政策金利の推移

日次、時点:2018年3月19日~2019年3月18日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、時点:2018年3月19日~2019年3月18日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

なお、前回(2月)の会合では、インフレ率はインフレ目標(中央値4.5%)を下回り、GDP(国内総生産)も1%台と回復が鈍く、経済的には政策金利を引き下げても不思議ではない環境です。しかしブラジル中銀は、議会が年金コスト削減策を確認する必要があると指摘しています(図表2参照)。

 

[図表2]ブラジルのインフレ率とGDP(国内総生産)の推移

月次、時点:2014年3月~2019年2月、前年比、GDPは四半期 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、時点:2014年3月~2019年2月、前年比、GDPは四半期
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:年金改革、CCJ、審議、憲法改正、受給資格

ブラジル中銀も政策判断で注目するのが年金改革です。最新動向は市場の期待が懸念をやや上回っています。2月は軟調だったレアルや株価が、3月に回復傾向だからです。ただ、年金改革の議論が議会で本格化するのはこれからです。ボルソナロ大統領の思惑通り審議が進むか不透明なため、政策金利は当面据え置かれる可能性も考えられます。

 

 

ブラジル年金改革の動向は以下の通りです。

 

まず、3月に年金改革への期待が高まったのは、法案審議が最初に行われる憲法司法委員会(CCJ)が3月13日に設置されたためです。反対に、CCJの設置には年金改革に反対の勢力からの消極姿勢が見られため市場に不安感が台頭しましたが、ようやく設置にはこぎつけました。

 

ただ、これから年金改革に向けて長いプロセスが必要です。簡単に流れを述べれば、まず、先のCCJにおける審議、採決をへて、次は特別委員会でも同様のプロセスが求められます(6月頃?)。その後下院本会議で採決された後(夏頃)、上院で(10月頃?)の最終採決が必要です。

 

この長い年金改革のプロセスに伴う今後の不透明要因として次の点が挙げられます。

 

1点目は年金改革案の骨抜きです。ボルソナロ政権は10年間で1兆レアル(約30兆円)超の削減を提案しました。提案された削減額は想定を上回り、先の長い審議の間に削減額が下方修正される可能性も考えられます。

 

2点目は年金受給資格の見直しです。例えば、通常女性は55歳、男性は60歳で受給資格を獲得できるイメージですが、受給資格は12年かけて女性62歳、男性65歳に引き上げることが提案されています。世論が受け入れるか不安がある中、議員の態度も不明確です。ブラジルの年金改革は憲法改正を伴うため308議席(定数513)必要ですが、現地の報道を見ると無条件で支持を表明しているのは150人前後、反対が140人強、200人以上が態度を保留しています。

 

3点目は年金制度の公平性確保に向けた動きも必要なことです。民間に比べ優遇されていた公務員や、軍人の年金との調和をボルソナロ大統領は提案していますが、元軍人のボルソナロ大統領にとって、軍は大切な支持母体でもあるだけに政治的な影響も懸念されます。

 

市場でも、ある程度の修正は想定していると見られますが、どの程度まで許容するかのコンセンサスは形成されておらず、当面は年金改革の動向に注視が必要と見ています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル最新事情、年金改革への期待が上回る』を参照)。

 

(2019年3月19日)

 

 

梅澤利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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