事業承継税制適用の際、相続時精算課税を使うべきか
Q1.贈与税の納税猶予制度を適用する場合、暦年贈与よりも相続時精算課税で贈与すべきなのでしようか?
A1.一般措置と特例措置は、いずれも贈与税が100%免除となります。暦年贈与であっても相続時精算課税であっても、税負担は同じ(=ゼロ)ですので、どちらの贈与を行っても構いません。
認定取消リスクを考慮すれば、相続時精算課税を適用すべきという意見もありますが、暦年贈与の110万円控除を使えなくなるデメリットも考慮すれば、暦年贈与を適用するほうがよいケースがあります。
第三者の相続財産が後継者に見られることはあるのか
Q2.第三者が後継者に対して非上場株式を暦年贈与し、贈与税の納税猶予制度を適用した場合、第三者の相続発生時に相続税申告を後継者に見られることはありませんか?
A2.贈与税の納税猶予の特例を受けると、相続時精算課税だけでなく、暦年贈与でも対象株式が相続税の課税価格に算入されることになるため、先代経営者以外の者からの贈与の場合であっても、「みなし相続」の相続税申告が必要となります。それゆえ、第三者の相続発生時には、第三者の相続財産が後継者から見えてしまうことになります。
一般措置と特例措置に関する、よくある疑問点
Q3.もともと、先代経営者(父)が発行済株式の100%を所有している場合において、すでに事業承継税制(一般措置)の適用を受けて、先代経営者(父)から3分の2の株式の贈与を受けた後継者(息子)が、2018年以降、先代経営者の残り3分の1の贈与を受ける際に、特例制度の適用を受けることはできますか?
A3.一般措置を適用した場合、特例措置を適用することはできません。一般措置と特例措置は併存しているからです。
Q4.一般措置の事業承継税制についても複数贈与者からの贈与を認めるということは、先代経営者(父)から贈与を受けて一般措置の適用を受けている後継者(息子)が、先代経営者以外の同族株主(叔父)から株式の贈与を受けるに際して、特例措置の適用を受けることはできますか?
A4.一般措置であっても改正前の旧制度を適用していた場合、改正後の新制度を適用することはできません。
Q5.一般措置の贈与税の納税猶予の適用を受け、先代経営者(贈与者)から後継者に株式の贈与が行われていた場合において、その贈与者の死亡に係る相続税については、特例措置に係る相続税の納税猶予制度に切り替えることができますか?
A5.一般措置を適用していた場合、特例措置を適用することはできません。一般措置と特例措置は併存しているからです。したがって、対象となる株式は3分の2まで課税価額80%となります。
複数後継者へ贈与する際の順番について
Q6.複数後継者による特例承継計画を提出している場合、その贈与の順番は問われないのですか?
たとえば、1位(長男)、2位(次男)、3位(三男)の内容で特例承継計画を提出している場合、まず2018年に次男へ贈与し、次に2019年に三男へ贈与して、さらに2022年に長男へ贈与するという順番で贈与してもよいですか?
A6.先代経営者からの贈与の時期は同時であることが条件です。複数年度に分散して贈与することはできません。つまり、先代経営者は株式を一括して長男・次男・三男へ贈与する必要があります。
なお、先代経営者以外の者からの贈与については、経営承継期間内であれば、いつでも可能です。
【動画/筆者が本記事の内容をわかりやすく解説!】
岸田康雄
島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士