資産家のタイプによって有効な相続対策は変わってくるが、企業経営者が自社株を引き継がせる「事業承継」は民法・税法のみならず会社法まで関わり、難解なイメージが付き纏う。そこで本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長であり、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役の岸田康雄公認会計士/税理士が「企業経営者」の相続対策を動画付でやさしく解説する。第8回のテーマは「贈与すべき株式数」について。

後継者が発行済株式の3分の2を確保することが条件

事業承継税制の特例措置は、「事業承継によって、後継者は発行済株式の3分の2は確保しなさい」と考えています。

 

①受贈者が1人の場合

受贈者が1人の場合、贈与すべき株式の最低数は、以下のとおりとなります。

 

現経営者の所有する株式数のほうが、(発行済株式の2/3−後継者の所有株式数)よりも大きい場合、贈与すべき最低株数は、(発行済株式の2/3−後継者の所有株式数)となります。つまり、少なくとも3分の2に達するまでは一括して贈与することが条件とされています。

 

現経営者の所有する株式数よりも、(発行済株式の2/3−後継者の所有株式数)のほうが大きい場合、贈与すべき最低株数は、現経営者の所有株式をすべてとなります。つまり、3分の2に満たないことは許してあげるが、その代わり全株を手放しなさいということです。

 

たとえば、発行済株式総数100株を父親がすべて所有している場合、贈与すべき最低株数は、(発行済株式の2/3−後継者の所有株式数)となります。したがって、最低でも67株(=67株−0株)は贈与しなければなりません。もちろん、それを超えることは任意ですから、100株すべて贈与しても納税猶予制度を適用することができます。贈与によって67株を承継した後、先代経営者は33株を所有していますから、その33株については、その後、相続税の納税猶予制度を適用することができます。

 

[図表1]

 

岸田康雄氏 登壇セミナー>>12/18開催
「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

 

これに対して、贈与者が複数いる場合、たとえば、父親が60株、母親が40株を所有する場合は、贈与すべき最低株数は、先代経営者の所有株式数のすべてとなります。したがって、父親の所有する全株式である60株となります。また、その後に行われる母親からの贈与では、(発行済株式の2/3−後継者の所有株式数)となります。

 

したがって、追随する母親は、最低でも7株(=67株−60株)は贈与しなければなりません。もちろん、それを超えることは任意ですから、母親の所有する40株すべて贈与しても納税猶予制度を適用することができます。

 

[図表2]

 

受贈者が複数いるケースでの条件は?

②受贈者が複数の場合

 

一方、受贈者が2人または3人の場合、贈与すべき株式の最低数は、贈与後におけるいずれの受贈者の所有する株式数も発行済株式の10分の1以上となり、かつ、いずれの受贈者の所有する株式数も贈与者の所有する株式数を上回ることになる株数となります。

 

たとえば、発行済株式総数が100株を父親がすべて所有していて、後継者が長男と次男の2人である場合、各後継者に10%以上、かつ各後継者が先代経営者の株数を上回ることが求められることから、贈与すべき最低株数は、長男34株と次男34株を合計した68株となります。もちろん、それを超えることは任意ですから、100株すべて贈与しても納税猶予制度を適用することができます。

 

[図表3]

 

 

【動画/筆者が本記事の内容をわかりやすく解説!】

 

 

 

岸田康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

関連記事

 

 

岸田康雄氏 登壇セミナー>>12/18開催
「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録