資産家のタイプによって有効な相続対策は変わってくるが、企業経営者が自社株を引き継がせる「事業承継」は民法・税法のみならず会社法まで関わり、難解なイメージが付き纏う。そこで本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長であり、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役の岸田康雄公認会計士/税理士が「企業経営者」の相続対策を解説する。第26回のテーマは、親族外承継で企業オーナーから金融資産家へ転身する方法について。

事業承継における「後継者不在」という問題

近年、事業承継における後継者不在という問題がクローズアップされてきています。従来、わが国の中小企業は、親族内承継を基本的な方向だと考えてきました。しかし、子供が人生の選択肢として他社でサラリーマンとして働くことを望むケースもあります。また、そもそも現経営者に子供がいないケースが増えてきています。それゆえ、現在、わが国の中小企業経営者の「3人に1人」は後継者不在だといわれることもあります。

 

このような場合、次世代の経営者が不在ということになりますから、親族外から後継者を見つけるしかありません。すなわち、役員・従業員が後継者になること(従業員承継、MBO)か、第三者が後継者になること(第三者承継、M&A)です。

 

[図表1]中小企業の後継者が決まっているか
[図表1]中小企業の後継者が決まっているか

 

親族外承継とは事業価値を「現金化」すること

親族外承継とは、親族外の役員・従業員または第三者へ非上場株式とそれに伴う経営権を承継することです。この際、親族内とは異なり、無償で贈与というわけにはいかず、「事業」を有償で譲渡することになります。法人(会社)であれば、その「株式」の売却によって承継させることもできます。

 

事業の譲渡によって、企業オーナーは、対価としての現金を受領します。つまり、これまで築いてきた事業価値が、現金という財産に交換され、「金融資産家」という分類の資産家に転身するということです。

 

その際、個人の利益最大化の観点から、次の3つのポイントを検討しなければなりません。

 

第一に、事業を譲渡する対価としてどれだけ多額の現金を獲得することができるかという点です。これは、買い手に事業価値をどれだけ高く評価させることができるかということです。事業価値によって非上場株式の譲渡価額が決まります。事業を高く譲渡できるかどうかは、事業価値の大きさによります。加えて、譲渡(M&A)のタイミングや、その際の価格交渉や条件交渉の巧拙によって決まります。うまく交渉を行えば、事業価値を大きく上回る、高い譲渡価額を実現することもできるでしょう。

 

第二に、事業の譲渡に伴う税負担を最小化できるかという点です。M&Aには事業譲渡と株式譲渡の2つの取引スキームが想定されますが、どちらの取引スキームのほうが税負担を小さく抑えることができるか、検討しなければいけません。これは、自社株式を直接保有している場合と、持株会社を通じて間接保有している場合では、税負担が異なってきます。

 

第三に、現金を受け取って金融資産家に転身した後、どのように相続税対策を講じるかという点です。金融資産を相続財産とする場合、遺産分割と納税資金の観点からは全く問題はありません。しかし、相続税対策の観点からは不利な状況となります。M&Aを行う時点から、相続税対策を行っておく必要があるでしょう。

 

[図表2]企業オーナーにとっての親族外承継の考え方
[図表2]企業オーナーにとっての親族外承継の考え方

 

 

 

岸田康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

\10/5開催・WEBセミナー/
節税ではない画期的な活用法とは?
遺産分割対策となる「法人契約の生命保険」

あなたにオススメのセミナー

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    会員向けセミナーの一覧
    TOPへ