今回は、金利の引き下げ交渉が成功しやすいタイミングなどについて見ていきます。※本記事は、2018年8月30日 (木)に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

金利動向を読む上で大切な指標「TIBOR」の見方

TIBOR(タイボ)は、東京の銀行間で日々、お金の貸し借りをする際の金利です。Tokyo Interbank Offered Rateの頭文字をとったものです。「東京銀行間金利」と言います。

 

融資を受ける際、TIBOR+スプレッド(上乗せ金利)で交渉しなさい、と言い続けております。この金利設定にすると、TIBORが基準金利となるのです。

 

TIBORは毎日、公開されています。日本経済新聞なら、19ページあたりに、コール市場の相場数値として、掲載されています。1週間、1カ月、2カ月、3カ月など、TIBORにはいくつか種類があります。金利交渉で最もよく使われるのは、1カ月TIBORです。

 

この1カ月TIBORの数字が、約5カ月ぶりに上昇しました。2018年の4月5日以降、ながらく0.05364%だったのが、8月21日に、0.05545%となり、8月28日には、0.06455%となりました。

 

グラフで見ると、こんな感じです。

 

[図表]TIBOR(1カ月)推移

 

2016年の9月から2017年の9月までの約1年間は、0.03%でまったく動きがありませんでした。2017年の9月下旬以降、数カ月ごとにじわじわ動き始めました。グラフで見ると、右肩上がりの形で上昇しています。

 

ただそれでも、マイナス金利が導入される直前が0.13%でした。それに比べると、まだまだ、「金利が上がってきてたいへんだ!」というほどのレベルではありません。

 

とはいえ、おそらく、このような形で時間をかけて、上昇傾向を描く動きを見せるだろうと、考えています。TIBORが上昇すれば当然、他の金利も上がります。TIBORは、金利動向を読む上での、大切な指標となるのです。

 

今は超低金利です。しかしその時代の終わりは、やがてやってきます。突然ではなく、このような予兆を見せて、脱してゆくと思われます。低金利ありきで借入金が過剰になっている会社には、今後コツコツ上がる金利が、ボディブローのように資金繰りを締め付けてゆきます。

 

TIBORがマイナス金利以前の水準に戻っても、問題のないような財務体質にしておく必要があります。

融資ノルマを確保したい「決算期前」が交渉のチャンス

ある会社の社長が、銀行金利を下げる交渉をしていました。既存の取引銀行は4行です。4行の平均金利は、1.6%でした。「いまどき1.6%は高すぎますよ!」との我々の指摘を受け、動き始めたのです。

 

最も交渉が停滞したのは、都道府県の名前がついた第一地銀でした。他の3行は交渉の結果、0.7%まで下がりました。私にすれば、それでも高いと感じるのですが、まずは半分以下には下がったのです。

 

しかし問題の第一地銀だけは、「うちでは1%以下の金利は出せないです」と言い張られていました。「じゃあ、他の銀行から借りておたくの借入は返します」と言ってみてください、と社長に伝えました。

 

数日後、「0.7%に下がりました!」との連絡を受けました。結局、1%以下にはできない、など、ウソだったのです。社長は「あまりにも簡単に態度を変えるのでびっくりしました!」と驚いていました。

 

しかし、「おたくには返します」と社長が第一地銀の担当者に伝えたのは、9月上旬だったのです。9月末は、銀行の中間決算があります。8月下旬以降は、融資担当者が借入のお願いに回る季節です。そんな時に、「返します」と言われて、担当者は青ざめてしまったのだと思われます。

 

それでなくとも、融資額のノルマを確保することに追われるのに、返済された分までカバーすることは、いくら第一地銀とはいえ、地方では至難の技なのです。

 

銀行交渉を仕掛けるときには、相手がどのようなタイミングなのか、ということを知ることも、大事な要素なのです。

 

日銀が毎月公表している平均金利を見ると、2018年7月末で0.73%です。なので、0.7%だと、まだまだ平均レベルの金利です。今回取り上げた会社が、本当に強い銀行交渉の腕を修得するのは、まだまだこれからなのです。

銀行に言われるままに決算資料を渡す必要がない理由

「銀行の言うがままに、決算資料を全部出さないでください!」と、言い続けています。

 

格付け(スコアリング)に使うのなら、損益計算書と貸借対照表で十分です。細かな科目明細一式まで、むやみに渡す必要はないのです。すると今度は、ある会社で、損益計算書と貸借対照表以外の資料を求める、丁寧な文書を銀行が用意してきたのです。

 

その内容がまた、3つの銀行で三者三様なのです。A銀行は、求める資料が明確で限定的です。B銀行とC銀行は、内訳明細一式と、幅広いです。しかもB銀行とC銀行は、資料の必要性について、決算内容把握の精度を高めるため、新たな提案に活かすため、などとあります。要は、新たな融資に繋げたいだけなのです。営業の匂いがプンプンする感じなのです。

 

A銀行は、有利子負債と人件費の明細のみだったのです。おそらく、3つの銀行の中でのシェア確認と、その会社はサービス業なので、人件費の増減確認、といったところだと思われます。

 

不思議なもので、文書で出されると、「提出しないといけないかな」と思ってしまいがちになります。銀行も、その心理をうまく読んでいます。

 

結局、A銀行に、B銀行とC銀行を、合わさせることにしました。ただ、提出するからには後日、「あの明細で何かわかりましたか?」と聞いてほしいのです。特に大したことがわかったわけでもないのなら、「じゃあ次回からは要らないですよね」と、釘を刺してほしいのです。そうしないとまた来年になると、「昨年いただいた資料をいただけますか?」となります。

 

そうなる前に、止めておきたいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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