新興国通貨 アジア通貨を中心に、再び見直しの機運が高まるか

トルコリラ、アルゼンチンペソの大幅下落の影響もあり、2018年は下落傾向にあった新興国通貨が、2019年に入り上昇の兆しを見せている。米中貿易摩擦を受けた貿易量の減少に関する懸念は、織り込みが進み、米中協議の着地点によってはインセンティブの発生もありうる。また、米長期金利の先高観が薄れ、インフレ率が落ち着いた動きであることも追い風だ。特にアセアンのGDP成長率は高く、アジアの成長国通貨は長期的な上昇トレンドに入る可能性が高い。

2019年、新興国通貨にとっての支援材料は多い

2018年は、新興国通貨にとっては厳しい一年だった。6月以降、米国が仕掛けた貿易摩擦がエスカレートしていったことで、貿易(輸出)主導で経済成長を実現する政策を採っていた新興国への懸念が高まったことや、米FRBによる断続的な米ドル政策金利の先高感が新興国通貨との金利差縮小を懸念させたことに加え、一部新興国を取り巻く地政学リスクの高まりや、対外債務増加に対するデフォルト懸念などが、新興国通貨の下落を主導し、新興国通貨ショックとして世界的に拡散した。

 

しかし、2019年に入り、そうした下落要因にはそれぞれ変化が見られる。まず、貿易摩擦については、米中通商交渉次第というリスク要因は残るものの、貿易量の減少からの影響は一定程度の織り込みが進んだことや、対応策により、新興国の一部にはむしろ利益がもたらされる可能性もある。また、米中協議において米中経済のダウンサイドリスクを回避するために、双方が妥協するインセンティブは相応にある。

 

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そして、米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月FOMC終了後の声明で、金融政策に関して、「辛抱強く」検討していくとして、ハト派的な姿勢を示した。2019年内でも更に2回の利上げを示唆していた前回までの記述からは、表現に変化が見られた。市場が懸念していた、金融政策に関してタカ派一色という雰囲気はなくなり、FOMCでの議論のトーンは随分と変わったことは明らかである。米長期金利の先高観が薄れたことや、原油価格が落ち着いたことによりインフレ率が落ち着いた動きになってきていることで、新興国通貨にとっては支援材料となるだろう。

 

昨年は、夏場にアルゼンチンペソとトルコリラが大幅な下落を演じる形で、新興国通貨の下落を主導した。両国とも、債務問題に加え、地政学的なリスクへの懸念が高まったことも背景にある。2013年のバーナンキショックの時にも、債務残高の大きさから、債務返済への懸念が増大し、資本が流出する流れが加速し始めて、リスク回避の資金逃避行動が他の新興国へと伝播していった。しかし、今年初めからは、過度の懸念が徐々に後退に向かい始め、新興国通貨にも資金流入の動きが見られる。これととともに、全般に、新興国通貨が持ち直しに転じる展開となっている。

 

先進国と新興国の成長率の格差を見てみよう。IMFが予想するGDP成長率(1月発表)は、新興国市場は2018年+4.6%から2019年は+4.5%とほぼ横ばいだが、先進国は2018年+2.3%から2019年は+2.0%と、成長率格差で見れば2.3%(2018年)から2.5%へと拡大する。2020年に至っては、新興国の+4.9%に対して先進国+1.7%と、3.2%にまで拡大すると予想されている。こうした見通しの中で、新興国への資金の流入は徐々に回復していくだろう。

アジア成長国通貨は長期的な上昇トレンドに入る

新興国通貨を語ることは難しい。新興国通貨危機というと、押しなべて売り圧力にさらされてしまうという側面もある。本来、経常赤字を抱える国と経常黒字を確保している国では、それら通貨への影響を別に論じるべきである(【第41回】 トルコリラ急落でクローズアップされる「経常収支」の重要性 2018/08/18)。

 

新興国それぞれの経済力や財政力はさまざまに異なる。各国の耐性の強弱により、本来、通貨下落圧力の波及の程度は違うべきだろう。経常収支や成長率等の見通しをふまえ、投資対象としての選別は、今後、新興国間でも際立ってくるだろう。相対的に高い成長率を維持し、経常収支でも好転してきているアジアの国の通貨などは、ショック耐性でいえば、よりしっかりしてきている。

 

因みに、成長率格差で見れば、アセアンの成長率は2018年+5.2%、2019年+5.1%と、新興国全体の成長率を上回る。今年、アジアの成長国通貨への見直し買いが強まる可能性は高く、成長率格差拡大を背景として、長期的な上昇トレンドに入る可能性は、十分にあると見ている。

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長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。
シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

長谷川建一氏登壇のセミナー https://gentosha-go.com/articles/-/13973

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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