今回は、不動産投資をするなら、「中古物件」と「新築物件」のどちらが有利か、考えていきましょう。※本連載では、資産運用のプロが、投資初心者に向けて不動産投資の基本を分かりやすく解説していきます。

「中古」と「新築」…それぞれのメリット、デメリット

一棟物件投資を検討する時に、「中古」にするのか、「新築」にした方がいいのかと悩まれている方も多いのではないでしょうか。 それぞれにメリットとデメリットがあり、また実際に物件の状況によって、ご自身の投資目的によっても選ばれる物件が異なります

 

前回の「成功する一棟物件投資のエリアは?「都心」VS「地方」」に続き、今回は「中古」VS「新築」について書いていきます。日ごろから数多くの物件を見てきた私だからこそ、お伝えできる物件の築年数に対する考え方をお伝えします。ぜひ最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

 

1、中古物件のメリットとデメリット

 

まず最初に、中古物件のメリットとデメリットをお伝えします。

 

(1)中古物件の5つのメリット

 

中古物件には大きく以下5つのメリットが挙げられます。

 

①新築より価格が安く、利回りが高い

 

中古物件は、築年数が古くなるにつれ、建物の評価が低くなるケースが多く、新築物件より価格が安くなることによって、利回りが高くなります。

 

②入居者がいることによって、稼働状況や、過去の入退去履歴を確認することができる

 

中古物件の場合、今までの運営実績があるため、購入前に稼働状況や、過去の入退去履歴を確認することができます。 事前に稼働実績などが分かれば、収支シミュレーションもしやすくなるでしょう。

 

③購入した当日から家賃収入を得ることができる

 

中古物件は既に入居者がいて、オーナーチェンジ物件が多いため、購入した当日から家賃収入を得ることができます。

 

④築年によるが減価償却期間が新築より短いため、1年間の減価償却費が高くなる

 

物件の建築基準によって法定耐用年数が異なっていますが、築年数が古くなるにつれ、残された減価償却期間が短くなるため、原価率が高くなり計上できる減価償却費が高くなるメリットがあります。 一般的には、法定耐用年数は以下のようになっています。

 

●鉄骨鉄筋コンクリート造:47年

●重量鉄骨造:34年

●木造:22年

 

詳しくは下記一覧表から確認してみてください。

 

[図表]法定耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(建物・建物付属設備)」より抜粋  なお、償却率にはついては「減価償却資産の償却率表」より確認してみてください。
出典:国税庁「耐用年数(建物・建物付属設備)」より抜粋

なお、償却率にはついては「減価償却資産の償却率表」より確認してみてください。

 

⑤土地の比率が大きく、値下がりが緩やか

 

物件の売買価格の割合としては、建物よりは土地の比率の方が大きくなり、土地の評価は大きく変動しないため、価格の値下がりは緩やかになります。

 

(2)中古物件の3つのデメリット

 

一方、中古物件には下記3つのデメリットが挙げられます。

 

①中古のため、購入後すぐに修繕が発生するケースがある

 

築年数にもよりますが、屋上や外壁など未修繕の物件もあるため、購入後すぐに修繕に突発的な出費が発生する場合があります。 一般的には、10年前後で大規模な修繕が発生すると言われています。大規模な修繕の前に売却するオーナーも多いため、きちんと見極めることが必要です。 修繕が必要と分かった場合、修繕費用を含めた価格交渉をするといいでしょう

 

②新築より物件当初の資料が無いケースが多い

 

中古物件は何回もオーナーチェンジしているので、物件の資料も新築で購入されるより少なくなるケースが多いです。 確定申告の時に資料が足りないなどのケースもありますので、可能な限り前のオーナーから物件に関連する資料をもらうようにしましょう。

 

③新築と比べて減価償却期間が短くなる

 

上記メリットとして挙げましたが、新築と比較して残された年数が少ないことから、減価償却ができる期間も短くなるというデメリットが挙げられます。

 

2、新築物件のメリットとデメリット

 

続きまして、新築物件のメリットとデメリットを見ていきましょう。

 

(1)新築物件の4つのメリット

 

まずはメリットを見ていきます。

 

①瑕疵保険により、10年間の建物保証が付く

 

新築物件の場合、最初の10年間は瑕疵保険がついている物件がほとんどです。 10年間のうち、万が一瑕疵を見つけた場合、売主が無償にて対応してもらえることから、目に見えない瑕疵に対する安心ができると言えるでしょう。

 

②新築は銀行の評価が高く融資年数も取りやすい

 

新築物件の場合、建物も新しいことから銀行からの評価が高く、長く融資年数も取りやすいと言えます。 法定耐用年数22年の木造物件でも、新築だと劣化等級をすることにより30年の融資年数をとれるケースもあります

 

③減価償却期間が長くなる

 

中古物件でデメリットとなっていた減価償却期間が短いに対して、新築物件は法定耐用年数まで減価償却期間としてフルフルと享受することができます。

 

④大規模な修繕が当面かからない

 

新築物件は瑕疵物件を除き、一般的には10年前後は大規模な修繕がないため、修繕費の出費もなく、キャッシュフローがよくなるでしょう。

 

(2)新築物件の5つのデメリット

 

一方、新築物件にはどのようなデメリットがあるでしょう。

 

①物件価格が高いため利回りが低い

 

新築物件は、建物の費用が高くなるため、同じエリアの中古物件よりは高くなります。 そのため、利回りが低くなる傾向が高いです。

 

②入居者0からのスタートなので、最初は賃料収入が無い

 

新築物件は入居者募集からスタートなので、購入当初から家賃収入を得ることはほとんどないでしょう。 満室になるまで、数ヶ月間はキャッシュフローは悪い場合が考えられます。

 

③土地購入後から竣工までの間は、土地の利息分の支払いをしなくてはならない

 

建売の物件を購入されるのならいいのですが、土地から購入してその後建物を建てるケースもあるでしょう。 その場合、建物が竣工までの間は、家賃収入が無い状況の中、土地の利息分の支払いをしなくてならないです。 従って、ある程度手元に資金がない方は厳しいでしょう。

 

④減価償却期間が長くなるため、一年間の減価償却費が低くなる

 

新築物件の減価償却期間が長いというメリットがある一方、1年間での償却費は(定額法の場合)建物価格÷残存年数となり、あまり金額が取れなくなってしまいます。

 

⑤建物の評価が高く、年数と共に建物の価値が下落していく

 

新築物件の売買価格の割合として、土地よりも建物の割合が大きい物件が多いです。 従って、建物は築年数が古くなるにつれ下落し、物件の価値も下落しやすいと言えるでしょう。

「中古」と「新築」どちらの物件に投資すべき?

3、自分に合った物件の選び方は?

 

上記を読んでいただけければ分かりますが、中古、新築ともに安定稼働が見込める立地であれば、投資という観点からは一長一短です。以下にて、それぞれの物件に適している方の特徴を紹介しますので、参考にしてみてください。

 

(1)中古物件が適している方

 

投資として、安定したインカムゲイン、キャピタルゲインと両方を狙いたい方は、中古物件の方が適していると言えるでしょう。 新築と比べて建物の価値が落ちているため、売買代金の中で土地が占める割合が大きくなり、そのため購入金額と売却金額の乖離が少なくなります。

 

また、中古物件は既に入居率などのデータが揃っているため、事前に安定した家賃収入得られるかどうかの判断ができます。 最近ですと、築古ボロアパートを購入される方が増えている傾向があります。築古ボロアパートの利点は、土地値程度の価格で一棟を購入できますので、売却時に利益を確保しやすいです

 

(2)新築物件が適している方

 

長期保有をされる方や、相続税対策に購入される方は新築物件が適していると言えます。 中古と違い融資年数が取れるため、多少利回りが低くても、キャッシュフローは確保できます。 しかし、賃料の下落率は中古と比べると大きいので、利回りを長期にわたり確保することは難しいです。超低金利で融資を引き出すか、自己資金を使い借入金を減らす等の対策を取りキャッシュフロー率を上げる必要があります。

 

また、建物価値は減少し、利回りも下落していくので、売却時に利益を確保することは難しくなる場合もあるので、利益を得るというより相続税対策などの方が適しているでしょう

 

4、プロが教える危険なポイント

 

中古と新築は、我々不動産業社の目から見ても甲乙つけがたい部分は大きいです。 どちらを購入するにしても、しっかり利回りがでて、キャッシュフローが確保できる物件であればいいと思います。

 

(1)「新築だから利回りが低くてもしょうがない」という考え方は危険

 

「新築だから利回りが低くてもしょうがない」という考え方をされている方もいるようですが、これは危険です。 中古であろうが新築であろうが「きっちりキャッシュフローが出る物件」をルールにすること大切です。

 

(2)部屋面積を小さくし、戸数を増やすやり方は危険

 

利回りを確保するために1部屋辺りの面積を小さくし、戸数を増やす方もおられますが、これも危険です。 狭小物件の場合はよっぽど立地が良くないと、将来的に空室に悩む可能性が高まります狭くても20㎡以上というのが最低ラインにするようにしましょう。 20㎡以上というのは一都三県、名古屋、大阪といった大都市の話であり、地方都市の場合では30㎡以上は確保した方がいいでしょう。

 

 まとめ 

今回は「中古」と「新築」について書きましたが、参考になりましたでしょうか。 中古も新築にもそれぞれにメリットとデメリットがありますので、きちんと自分の投資目的を決め、その投資目的に合った物件選びをするようにしましょう。 一棟物件となると物件価格も高くなるため、一回の失敗が自己破産まで陥ってしまうリスクが高いため、ご自身だけではなく、プロに相談するようにしましょう。

 

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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