今回は、市中病院や大学病院に勤務する医師の退職金事情を見ていきます。※医師を取り巻くキャリア環境が激変しています。医局に頼ってきた従来とは異なり、自らキャリアを形成し、開業医を目指す医師が増えているのです。しかし、安易な開業が取り返しのつかない失敗を招く場合もあります。本連載では、開業医を志す医師に向け、開業を成功に導くポイントと、開業を磐石なものにする資産形成の方法を解説します。

大学病院の教授でも、年収は1200万~1500万円程度

大学病院の出世コースのゴールである教授でも、給料は1200万円から1500万円程度しかもらえません。一方、大学病院の医局を出て、比較的給料が良いと言われる市中病院に勤務したとしても、出世コースの頂点に立つ院長は約2000万円で頭打ちが来てしまいます。

 

仮に医局の権力が全盛期だった時代なら、割の良い教授バイトも掃いて捨てるほどありました。また、製薬会社の接待や講演料などで収入がさらに増えるケースもあったかもしれません。

 

しかし、もはや医局の権威は崩壊。割りの良い教授バイトの報酬相場は低くなり、製薬会社の接待も規制されてしまいました。今後は教授の年間収入も大きく低下していくのではないでしょうか。

 

市中病院でキャリアを形成しても2000万円の壁が訪れます。責任が重くなれば、当然のことながら長時間労働に加え、医療訴訟などの心がすり減る業務にも従事しなければならず、自分の理想の医療を実現することからはますます遠ざかってしまいます。

 

たとえば、30代前半で専門医資格を取得し、そのまま市中病院で60歳まで働いた場合と、開業医で60歳まで働いた場合の差を見ると、その間で稼げる賃金は倍ほども違います。また開業医の場合は稼ぎ方次第ではさらに多くの収入を効率よく稼ぐことができるのです。

 

もちろん、一般のサラリーマンと比べたら、得られる労働対価は大きいものではありますが、医師の労働対価としては非常に低いものだと言わざるを得ません。

民間病院では、勤務医の「退職金規定」がない場合も

医師の年収は一般の会社員と比較して高水準ですが、退職金の支給水準は決して高いとは言えません。医師の場合、給料や退職金が支払われるケースとして次の3つがあります。

 

1 大学病院にずっと勤務する場合

2 医局を通じて病院を転々とする場合

3 医局を抜けて直接、病院に雇用される場合

 

それぞれ説明をしていきましょう。

 

1 大学病院にずっと勤務する場合

大学の学校法人から給与、退職金、共済年金が支給されます。給与の水準は一般企業のサラリーマンに比べ低いものの、退職金や共済年金がサラリーマン並みに支給されます。

 

2 医局を通じて病院を転々とする場合

医局を通して就職を斡旋してもらうケースです。給料はやや低いものの、学会の費用などは医局が持ってくれるのでトータルで見るとそんなに低くはありません。ただし、市中病院を転々とするような雇用形態になるために、退職金相当期間その都度リセットされ、退職金はあってないようなものになってしまいます。

 

3 医局を抜けて病院に直接、雇用される場合

医局を抜けて直接、病院に雇用される場合、給料は高いものの、医局を一旦抜けると、いざ転職になった場合、次の就職先も自分で探さなければならないなどの問題が発生しやすい状況にあります。退職金や年金はそれほど高くありません。

 

では、退職金はいくらぐらい支給されるのでしょうか。雇用される病院によって異なりますが、常勤医師として10年勤務しても200万円から500万円といった水準です。医師の採用時点では、退職金制度の点はあまり問題にはならず、その分、現在受け取る年収の水準を高く設定することが多いのです。

 

医師については一般のスタッフとは就業規定が別に作成されている場合や、退職金規定が設けられていない場合があります。このため、退職金については、規定として払うというよりは慣例として支払われているだけ、というケースもあります。

 

一方、公立病院の場合は民間の病院に比べ退職金の支給水準は高い傾向にあります。公立の場合で800万円から1000万円程度支給されることもあります。退職金規定などの制度も整備されています。

 

その分、通常の年収は民間のサラリーマンに比べると低いというのが一般的になります。

 

 

藤城 健作

ウェルス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長

 

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