旧来型組織の改革が進んでいくなか、なかなか変わらないと揶揄される「教育現場」。しかし、常識に捉われず改革を進めている千代田区立麹町中学校の手法は、あらゆる組織の改革にも通じると話題を集めています。本連載は、千代田区立麹町中学校長・工藤勇一氏の著書『学校の「当たり前」をやめた。』(時事通信社)から一部を抜粋し、麹町中学校の「学校改革」について紹介していきます。今回は、学校の仕組みやルールについて考えていきます。

「ルールや仕組み」は時代に合わせて見直す必要がある

■ルールを見直す

公立学校という組織は、10年もすれば、ほぼすべての教職員が異動で入れ替わります。そのため、誰が何のために作ったか分からない仕組みやルールが、至る所にあります。

 

例えば私が麹町中学校に赴任した当初、自転車を駐輪できるスペースがあるにもかかわらず、「保護者は自転車で学校に来てはならない」という規定がありました。誰が何のために作ったルールなのか、まったく意味不明です。長く麹町中にいる教員に聞いても分かりませんでした。私は保護者からの要望を受けて規定をすぐに変更し、自転車で学校へ来ても構わないようにしました。

 

こんなこともありました。冬にセーターを着てきてもよいにもかかわらず、「授業中、セーターを一番上に着てはいけない」というルールがあり、生徒たちはそのルールを守るために、セーターを着るときは、その上に学生服を着ていました。まったく意味がない規定です。また、生徒がプール授業の後に、髪を乾かすために「タオルを頭や肩に巻いてはいけない」というルールもありました。生徒たちは服をびちゃびちゃにしながら授業を受けていました。私は、「今日から変えましょう」と先生たちに言って、そのルールをすぐにやめさせました。

 

本来なら、こうした不要なルールや仕組みは時代とともに、常に見直していく必要があります。しかし、学校という組織はとかく硬直的で、前例踏襲に陥りがちな側面を持っています。結果として、意味不明なルールが、何年も残り続けたりしがちなのです。

作った制度に縛られがちな「教育行政」

話は変わりますが、教育行政においても同様のことがあります。

 

例えば、学校に勤務する非常勤講師は、受け持つ授業時間で給与が計算されるため、授業以外の校務を受け持つことは一般的にありません。当然、学級担任や部活動を任されることもありません。この点については、「給与制度を考えれば現状のままで仕方がない」と多くの関係者が受け入れています。

 

しかし、非常勤講師は教員採用試験の合格を目指す「浪人組」であることが多く、講師として働きながら、次年度の試験に備えています。教員を目指しているのだから、担任や部活動を経験した方がよいに決まっています。

 

加えて、教員採用試験では、面接や小論文試験などがあります。ここでは、受験者の教師観や教育観が問われ、教員としての実践経験をどれだけ持っているかが問われます。その点で、授業しかできない(担当させてもらえない)非常勤講師という立場は、本人にとっても貴重な学びの機会が奪われることになっています。

 

学校としても、やる気のある非常勤講師に、学校の教育活動に深く関わってもらえることの意義は大きいのです。このジレンマを解消すべく、私は区の教育委員会に掛け合い、区の非常勤講師が授業以外の校務にも関われるように、規定を変えてもらいました。その結果、非常勤講師が生徒たちと触れ合い、指導する場面が増えました。彼らにとってはもちろんのこと、学校にとっても、良い影響がもたらされました。

 

こんなこともありました。私が新宿区教育委員会の指導課長をしていたときに、ある学校の事務職員組合から「補助員を雇う予算を増額してほしい」との提案がありました。現状の人員では仕事がこなしきれない時期があるというのが、主たる理由でした。しかし、要望を受けて各校に予算を付けてみたところ、予算の執行率はまちまちで、学校によってはむしろ、消化しきれていないケースもあったのです。

 

同時期に、養護教諭部会からも、「健康診断のある繁忙期に、非常勤職員を雇う予算を付けてほしい」との話がありました。また、副校長会からも、「校務をサポートするスタッフを雇う予算を付けてほしい」との依頼がありました。

 

そこで私は、それぞれの要望について担当する課が別々だったので、それぞれの課と調整し、一つにまとめ上げて、その予算を学校単位で配当し、学校が個々の実情に応じて、柔軟に活用できるようにすることを提案しました。そうすれば、ある学校は事務職員を雇い、ある学校は校務をサポートするスタッフを雇うといった形で、学校の実情に応じ、最適化された措置が講じられると考えたからです。結果として、執行率は上がりました。

 

日々の仕事においては、そのルールや仕組みが何のために存在するのかを最上位目的に照らして常に問い掛けることが大切です。また、問題があるときに、その本質を見極めて、優先順位を付けて、迅速に対応することがとても大切です。

 

区教委の指導課長をしていたときに、よく言っていたのは、こういったことです。

 

何か問題があったとき、教育委員会は学校を支援しなければならない。作った制度に縛られるのではなく、学校を支援するために変えなくてはいけないことがあれば、制度そのものを作り替えるのが教育委員会の仕事だ。その際に、考えるべき優先順位は、①子どもたちのため、②保護者のため、③区民のため、④学校や教職員のため、であり、最後に、⑤教育委員会のため、が来る。そこを間違えてはいけないと話していました。

 

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    工藤 勇一

    時事通信社

    宿題は必要ない。固定担任制も廃止。中間・期末テストも廃止。 多くの全国の中学校で行われていることを問い直し、本当に次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求する、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長。 …

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