前回は、相続人にとって不利にならない土地の評価方法について説明しました。今回は、土地評価を下げるために、「土地の欠点」が活用できる理由を見ていきます。

簡単に評価できる「完璧な土地」は少ない

相続税法では、土地の評価は市街化区域では路線価(市街化調整区域では倍率評価)で行うことになっています。道路ごとに1平方メートル当たりの単価(路線価)が決まっており、原則としてそれに土地の面積を乗じると土地の評価額が求められます。

 

路線価は国税庁のホームページで公示されており、毎年7月に新しいものが発表されます。ちなみに、ここ30年近くは、東京都中央区銀座の「銀座中央通り」が最高路線価で、平成26年7月の発表では1平方メートル当たり2360万円、はがき大の面積でなんと23万円にもなります。


さて、土地の評価は路線価でするとして、単純に路線価20万円×100㎡=2000万円で良いかというと、実際にはそうではありません。


土地はそれぞれ形状も違えば周囲の状況も違います。正方形の土地もあれば、三角形の土地もあります。平坦な土地もあれば、斜面になっている土地もあります。道路に面している土地もあれば、道路とは接していない土地もあります。上を高架が走っていたり高圧電線がかかっていたりする土地もあります。土地の評価というのは、そうした個々の状況を鑑みて決定すべきものなのです。


土地の評価では正方形や長方形に近くて、平坦で、地盤がしっかりしていて、大きな道路に接していて、周囲の環境も良い土地がベストです。しかし、実際にはそんな完璧な土地がそこかしこにあるわけではありません。大半の土地が何らかのマイナスポイントを含んでいるものです。


所有している土地にマイナスポイントがあれば、その分だけ評価は下がります。たとえば、いびつな形の土地では、面積いっぱい建物を建てることができず必ず余白が残ります。余白の分を考慮するために、「補正率」というものを用いて評価額を修正します。補正率は土地の形や状況によって変わるので一概に何%とはいえませんが、いずれにしても「路線価×地積」の値よりは下がります。

土地評価を下げるマイナスポイントとは?

さまざまなマイナスポイントを見逃すことなく、評価に反映させていけばほとんどの土地の評価は下がるはずです。評価減ができる土地のポイントとしては、たとえば次のようなものがあります。いずれも建てられる建物に制限ができたり、有効活用するための対策が必要だったりする土地です。

 

①間口が狭い土地

袋地から延びる細い敷地で道路に接するような土地。いわゆる旗竿地と呼ばれる形状の土地


②帯状地

間口が2メートルで奥行きが30メートルなど、細長い形状の土地


③がけ地

山の斜面を切り拓いて作った土地や、大きめの川沿いの土地など、斜面を含んだ土地


④私道として供されている土地

所有している土地の中で、不特定多数の人が通行する道として使われているもの


⑤無道路地

道路に接していない土地。建築基準法では、道路との接地は2メートル以上でないと建物の建築は認められません。そのため、道路との接地が2メートル以下である土地も無道路地に準じます


⑥都市計画道路予定地

都市計画法にもとづいて都市の健全な発展と機能的な都市活動を確保するために定められた道路(都市計画道路)の計画に含まれる土地。将来的には道路用地として行政に買い取られます


⑦セットバック

無道路地に建物を建築しようとする時、道路として提供しなくてはならない部分の土地

 

⑧林地や雑種地など

山林になっている土地や、宅地、田、畑、山林、原野などのいずれの地目にも該当しない土地


⑨定期借地が設定されている土地

期限付きで人や企業に貸している土地。定期借地権は、期間が満了すると更新がないので、借地上の建物に制限が生まれます


⑩市街化調整区域

市街化を抑制されている土地。自由に建物を建てることができません


⑪容積率いっぱい建てられない土地

各土地ごとに容積率が決まっていますが、さまざまな事情からその容積率未満でしか建築できない土地


⑫近隣と比べて著しく広い土地

いわゆる広大地


⑬忌み地

墓地が近くにあったり、以前は墓地だった土地


⑭騒音公害

交通量の多い幹線道路や、線路や工場の近くで騒音がある


⑮地盤が低い土地

低い地盤によって、盛土工事をしないと利用が難しい土地


他にもまだまだ評価が下がるポイントはあります。興味のある方は土地評価専門の書籍なども参考にされると良いでしょう。


ただし土地の評価は専門家でも難しく、また同じ土地でも専門家によって意見が分かれることが度々あります。土地の評価をめぐって裁判になることも珍しくありません。それほど土地の評価は専門性の高い分野です。その土地の評価がいくらなのか、実際は不動産鑑定士や税理士などへ調査を依頼してください。

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    本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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