「戸建て分譲用地」と判断された場合に適用できる特例
今回は、「広大地」について説明します。標準的な宅地と比べて著しく広い土地をお持ちの場合は、「広大地」に当たらないか調べてみます。広大地に該当すると、通常評価の最大35%にまで評価が下がるからです。
広大地は、その土地を有効活用しようとした時に「戸建て分譲用地」がベストであると判断される場合に適用される特例です。戸建て分譲用地は、広い土地をいくつかの区画に分けてそれぞれに戸建てを建てるための土地です。そのためにはどの戸建てからも出入りがしやすいように道路を造ったり、一定の規模であれば公園を造ったりなどの開発をしなくてはなりません。
そういった公共の施設用地とすべきところを設けたり、開発にコストがかかったりするため、「広大地」として評価減がなされるのです。ちなみに広大地の評価額は正面路線価「広大地補正率」を乗じて算出されます。
広大地補正率は0.6−0.05×面積/1000の計算式で求めることができます。
500平方メートル以上の広さが必要
広大地となるためには最低限、次の条件をすべて満たしている必要があります。
①著しく大きい地積の土地であること
三大都市圏の市街地区域では一般に500平方メートル以上、三大都市圏以外の市街化区域では1000平方メートル以上、それ以外は3000平方メートル以上が基準です。ただし、それ以下の広さであっても広大地と認められたケースが過去にはあります。
②マンション適地でないこと
中高層階の集合住宅を建てるのにふさわしくない土地であること。周辺にマンション開発が行われているとマンション適地となり、広大地にはなりません。また、過去にマンションとして使われていた経緯があっても認められません。
③宅地開発に当たって潰れ地が出ること
宅地として使うためには、道路や公園、ゴミ置き場などの公共公益的施設が必要になります。いわゆる“潰れ地”です。
宅地以外の利用価値のある土地は対象外
④原則として容積率が300%以上の地域でないこと
容積率300%というと、中層階の集合住宅が建てられる可能性が出てきます。マンション適地に当たるため、広大地にはならない可能性が高いです。
⑤大規模工業用地に該当しないこと
周囲が大きな工場ばかりだと宅地開発には適さないため広大地にはなりません。
⑥大型商業施設に利用できるような土地でないこと
国道など幹線道路沿いにある広い土地は大型のショッピングセンターや遊興施設などを建築する方が利用価値はあります。宅地以外の利用価値のある土地は広大地には当たりません。
⑦路地状(旗竿地)開発として分譲するのが標準的な地域にある土地
旗竿地は道路開発が行われないので広大地とは見なされないという判例が過去に多数あります。
広大地はこれ以外にも、さまざまな条件を個別に判断しなくてはなりません。単に「広いから」とか「戸建て分譲地になりそうだから」という一元的な見方では通らない制度です。土地評価のプロでさえも「これは広大地だ」と判断したものが、税務署で却下されるケースが珍しくありません。
われわれの税理士向けセミナーでも、広大地に関するものは関心度が極めて高く、いつも話題や議論にあがります。それほどに広大地は手ごわい相手と言えるでしょう。言ってみれば広大地は土地評価における最大の難所なのです。
ですから、①~⑦の条件をざっと見て当てはまるからといって「うちの土地は広大地だ」と思い込まず、必ず専門家に見てもらってください。広大地のつもりで相続税を考えていたのに、実は広大地でなかったとなると痛い目を見ることになります。
【図表 広大地適用のための区画割り例】