「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー
遺言では実現できないことも「信託」ならば可能
Q 相続・事業承継対策においてなぜ信託の活用が有効なのか?
A 信託は財産管理とともに資産の承継を行うことができます。特定の財産を特定の者に承継したいときや相続時に速やかに資産を承継したいとき、遺言などの他の制度に比べて有利なことがあります。
Point
□資産の承継先を信託契約に定めることができ遺言と同様の機能がある
□特定の財産のみ信託することもでき遺言と併用できる
□企業オーナーが亡くなる又は認識力が弱くなっても自社への議決権行使が滞らない
□特定の財産を特定の者に承継することができる
一般的な信託は、委託者が受益者となる信託です。委託者の所有していた財産を受託者が管理・処分し、委託者である当初受益者に信託財産に係る運用益等を給付していきます。財産の管理に加え、信託を活用して資産を承継する信託には、遺言代用信託と受益者連続信託があります。
遺言代用信託は、当初受益者が死亡した後、次の受益者として定められている者が受益者となる信託です。遺言と同様に資産の承継が可能です。
\「民事信託の活用」「事業承継」正しく進める方法とは?/
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受益者連続信託は、当初の受益者が死亡したら次の受益者(第2受益者)の指定があり、第2受益者が死亡したら、次の受益者(第3受益者)の指定のある信託です。信託の設定者である委託者が第2受益者、第3受益者と受益者を連続して指定できるのは、信託ならではの有効な仕組みで遺言では実現できないことです。
[図表1]遺言代用信託
[図表2]受益者連続信託
いざ遺言を書こうとなると迷う方は多いと思います。遺言を書く者が所有する財産について、家族それぞれにどの財産を相続させるのかをその時点ではなかなか決めきれないという問題があります。特定の財産を特定の者に承継したいというニーズはありながら、全ての財産の承継先を決めきれないからといって遺言を書かないでいたら、いざ相続が発生したときに特定の財産を承継したい者に承継できなくなり、遺産の分割にもめ事が生じる可能性もあります。
信託を活用すれば、特定の資産のみを信託財産とし、その財産を承継させたい者を当初受益者が亡くなった後の受益者と定めることで、その者にその財産を承継させる仕組みを作ることができます。
事業承継の際「株式の議決権の行使」も滞らない
事業承継において信託の活用も有効です。事業承継における信託の活用では、信託財産は企業オーナーの有する自社株式です。自社株式を信託すると、所有権は受託者に移転するため、株主は受託者となります。
企業オーナーが元気なうちは議決権の行使に問題はありませんが、意思行使の能力を失ってしまうと議決権の行使ができなくなります。企業オーナーがそのような状況になると、会社の重要な意思の決定ができなくなり自社の経営がうまくいきません。信託を活用し、あらかじめ受託者に株式の名義を移転しておけば、企業オーナーの意思能力がなくなった後も株主である受託者が議決権を行使することができ、議決権行使の停滞がありません。
一般的にこのような自社株式を信託財産とする場合、受託者に対し議決権行使の指図をする「議決権行使の指図者」を定めておきます。企業オーナーの意思能力がなくなってしまったときは、後継者を議決権行使の指図者とすることを定めておけば、いざというときは後継者の指図を受けて受託者が議決権を行使するため議決権の行使は滞りません。
[図表3]自社株信託の仕組み
●信託するとその財産は委託者の相続財産ではなくなる
信託を設定し財産を受託者に信託譲渡すると、その財産は受託者の名義となります。本書(『民事信託を活用するための基本と応用』(大蔵財務協会))で考える民事信託のほとんどは、委託者と受益者が同一の信託です。信託期間中に受益者がなくなると次に指定されている者が受益者となりますが、信託財産の名義は、当初の受益者が亡くなる前も亡くなった後も受託者のままで変わりません。すなわち、信託財産とすることでその財産は委託者(=当初の受益者)の遺産ではなくなります。遺産ではないことから、相続時の遺産分割の対象ではなくなります。特定の者に特定の財産を引き継ぎたい場合、遺産分割の手続きをせずにその財産の権利を引き継ぐことができます。ただし、他の相続人の遺留分侵害については信託を設定することで回避できませんので注意が必要です。
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