「長期的な運用で安定した資産を形成できる」と誘われることが多い不動産投資。しかし、知識がないままスタートし、大きなマイナスを抱えてしまう投資家が多くいます。本連載は、株式会社CFネッツ副社長・アセットコンサルタントの山内真也氏の著書、『プロが教える 不動産投資の真実』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、ワンルームマンションへの投資を中心に、不動産投資とはどういうものか、またどのような目線で投資を進めていけばいいのか、多くの数字をもって解説していきます。今回は、中古ワンルーム投資について、不安要素を見ていきましょう。

内覧できずに購入…あとで思わぬ出費も

①オーナーチェンジ物件の場合は室内確認ができない 

 

入居者が居住中の物件を、居住中のまま、新しいオーナーに売却することを「オーナーチェンジ」といいます。中古ワンルームマンションでは、このオーナーチェンジ物件が過半数以上を占めます。入居者が居住中のため、すぐに家賃収入を得られることが、購入者にとってのオーナーチェンジ物件のメリットですが、逆に、入居者が現に住んでいるため、購入時に前もって室内確認することが困難なケースが一般的になっています。

 

このため、購入時に住んでいた入居者が退去した後に初めて室内確認をすると、室内の汚れや設備機器類の故障・破損などがとくにひどい場合が稀にあります。こうした物件では、キッチンやトイレ、浴室といった水廻り設備を含めた高額リフォームをしないと、次の入居者が決まらないため、予想外の出費を強いられることになります。

 

もちろん売主さんには過去の修繕履歴を確認して、今後かかるであろうコストを予測することもできますが、意外に売主さんも買ってから数年しか経過しておらず、これまで一度も室内を見ておらず、過去のリフォーム実績がわからないということもよくあるのです。

 

オーナーチェンジ物件というのは、買ったその日から家賃が発生するという安心感はありますが、その分の修繕リスクも隣り合わせであるということをわかっておきたいですね。あとは、現入居者の居住年数が10年を超えるなど、長ければそれなりの修繕コストは覚悟しておいたほうが良いと思います。

 

②新築よりも滞納リスクが高い 

 

新築に比べると、中古ワンルームマンションのほうが家賃滞納の発生割合が比較的高いでしょう。家賃の高い新築ワンルームマンションよりも、相対的に収入の低い入居者が多い中古ワンルームマンションの入居者属性が影響していると考えられます。

 

ただ、滞納リスクについては、入居者審査の厳格化や家賃督促などの適正な入居者管理をはじめ、滞納保証サービスを利用することによって、ある程度までコントロールすることが可能です。

 

そんななか、気を付けたいのは、管理会社や保証会社の滞納保証について、一般的に入居者が滞納をしだしてから、半年間の期間限定保証というケースが多く見受けられることです。要はそれだと長期滞納者への保証が半年でなくなることになり、それ以降は多額の自己負担が発生してしまいます。

 

また、その保証について事前に確認しておきたいのが、夜逃げなどによる動産の撤去費用負担についてです。もし仮に、ワンルームマンションでベッドや家財等一式を撤去しようと思えば、総額で20万円くらいの費用がかかってきます。融資を利用して物件を購入したケースであれば、年間のキャッシュフローはそこまで多くありませんから、その費用を回収するのに数年かかることも十分考えられるのです。

 

こういった費用負担については、買う前に想定することは難しく、実際に起こってから気付くケースがほとんどだと思います。賃貸管理料の中に、滞納保証や動産撤去費用が含まれているのかどうか、事前に管理内容の確認を行っておいたほうが良いでしょう。

 

管理手数料が安ければ一見魅力的に見えるかもしれませんが、それだけ補償内容も少なくオーナーリスクは上がるということです。

 

ついでに私がオーナーチェンジで購入した横浜の中古マンションも、実際に家賃の滞納がありました。幸い弊社の滞納保証サービスが無期限であり、動産撤去費用も管理料に含まれていたことから、大きな問題にはなりませんでしたが、もしこれらの保証がなければ、100万円以上の費用負担をするところだったのです。

 

あとこれまでの経験上、滞納者の室内というのは、想像以上に荒らされていることが多く、通常のリフォーム費用よりも幾分高額になると思っていただいたほうが良いでしょう。

 

③新築よりもローン金利は0.5%〜1%高い 

 

販売会社の提携する金融機関によって、2%程度の金利で借りられる新築ワンルームマンションより、中古ワンルームマンションのローン金利は0.5%〜1%ほど高い2.5%から3%台を求められるのが一般的です。融資期間も新築の35年に比べて短く、ほとんどの金融機関で、最長でも30年までのローンまでしか組むことができません。 

 

融資条件だけをみると、明らかに中古よりも新築に軍配が上がります。ただし、融資期間が長いということは、毎月の手残りが多くても、ローン元金の減るスピードが遅くなり、その分将来の投資リスクが高いといえます。とくに年配の方でこれから不動産投資を始めようという場合は、レバレッジを効かせることだけにとらわれず、場合によっては短期間で融資を組み、サラリーマン退職時にローン完済しているような組み立て方をご提案するときもあります。

 

たとえば1000万円のワンルームマンションを金利3%、融資期間30年であれば、10年後のローン残債は約760万円ですが、融資期間がその半分の15年であれば、10年後のローン残債は約380万円と、それだけ将来のリスクが低くなるわけです。「レバレッジ」といって効率を求めるのも良いですが、先々のことも考え、今と将来の自分にとって、どういった選択が一番なのかを冷静に検討することも大切です。

修繕に手が回らず「資産価値」が低下…

④管理状態に注意が必要 

 

中古ワンルームマンションの場合、とくに建物の管理状態についてはチェックが必要です。弊社が扱う物件でも、投資分析を終了し、ローンの調達も問題なく、投資家への紹介前にいざ物件を見に行くと、あまりの管理状態の悪さに、紹介を断念せざるを得ないケースがまれにあります。

 

エントランスやエレベーターホール、集合ポストといった建物の“顔”の管理状態は、入居者募集に確実に影響を及ぼしますし、共用設備や外壁、屋上、鉄部などの劣化は、将来の多大な修繕費用の負担につながります。目には見えない修繕積立金のチェックも必ず行う必要があります。積立金が圧倒的に不足していたり、管理費を含めた積立金の滞納者が多い中古ワンルームマンションだと、必要な修繕がままならず、将来の資産価値の低下は火を見るより明らかです。

 

⑤大規模修繕コストの負担 

 

一般的に、RC(鉄筋コンクリート)造のマンションでは、建物のライフサイクルに沿って、計画的に修繕を実施するための工程表である長期修繕計画を作成します。それによると、建物竣工から5~10年目に行う塗装工事などを経て、11~15年目に防水や外壁修繕を中心とした1回目の大規模修繕工事が発生。さらに25年目前後には外壁や屋根といった建物関係の修繕に加えて、老朽化した設備を改修・更新する2回目の大規模修繕工事を行わなければなりません。

 

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会によると、こうした修繕工事にかかる負担は、広さ21m2の1K(ワンルーム)マンションの場合で、30年間で約160万円にのぼるという試算もあります。仮に、物件が生み出すキャッシュフローが少ないと、この160万円の負担は過大に過ぎ、最終的な投資結果の大きな圧迫要因になります。

 

したがって、長期修繕計画に沿った積立金があるかどうかのチェックは欠かせません。

 

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