本連載は、株式会社CFネッツ副社長・アセットコンサルタントの山内真也氏の著書『プロが教える 不動産投資の真実』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、不動産投資とはどういうものか、またどのような目線で投資を進めていけばいいのか、見ていきます。今回は、2018年に社会問題化した「かぼちゃの馬車事件」で注目を集めた「シェアハウス投資」についてのコラムを取り上げます。

なぜ、サブリースで安心してしまったのか?

日々、物件の仕入れをしていると、シェアハウス型の売りアパートを見かけることが多くなりました。一般的なイメージとして、ドラマ等々で取り扱われていることもあり、美男美女の恋愛模様を見ているとやはり絵にもなることでしょう。そんな生活に憧れる気持ちもわからないではないのですが、ではこのシェアハウスが流行っているのはよいにしても、不動産投資として考えたときに、本当に魅力的な投資といえるのか? もちろんそれはまた別の話です。

 

「シェアハウス」といえば高利回りのイメージが強いと思うのですが、そこには何らかの理由があります。そもそもこれまで私が見てきた物件や相談を受けたシェアハウスについては、立地に難あり、大きな問題を抱えています。その問題とは、社会問題になりつつある空室リスクです。

 

企画する工務店や業者側としては、いかに利回りを高く見せるかということに重きを置いており、そのためには安価な土地にアパートを建築する必要が出てきます。土地が安いということは、立地が悪くなり、そうなると一般的には空室リスクが高くなります。投資利回りが高いということは、そこには多くのリスクが隠れていると疑ったほうがよいのです。

 

そして、シェアハウスの各部屋の専有面積はワンルームタイプよりも狭く、好立地ならまだしも、すでに需要と供給のバランスが崩れているような地域に建築をしていたりするので、近い将来を見据えても、本当に安定した運用ができるかどうかは大いに疑問が残ります。

 

以前、このようなシェアハウスを所有しているオーナーさんから「売主がサブリースをしてくれるから安心でしょ」という話を聞きましたが、そもそもサブリースは2年ごとに賃料の見直しがあるわけで、運用がうまくいかなければ、大幅な家賃減額も十分に考えられるので、決して楽観視はできないのです。サブリースを前面に出し購入を促すケースも実際にあるので、よい話には注意が必要です。

 

また、他のオーナーさんから見せてもらったサブリース契約書には、一般的によくある2年ごとの賃料見直しというものがなく、今後30年間は現況賃料を継続するという覚書を交わしたものもありました。

サブリース業者の賃料減額請求が法的に許される理由

5年先、10年先も読めないこの情勢で30年もの間賃料見直しナシ! そこには何か裏があるのじゃないの?と逆に怖くなってきます。そのサブリース会社が倒産すればどうなる? 目先の利回りだけにとらわれてはいけないということ。

 

もちろん一見すると、30年間現状の家賃を継続してもらえるから安定運営ができるように感じるし、それだけリスクの低い物件のように思えてきます。しかし日本の場合、新築から15年くらいまではジワジワと家賃が下がることが一般的であり、30年先まで新築当時の家賃を継続してサブリースしてくれるといったような、普通に考えればそんなうまい話などあるわけがないのです。

 

それを裏付けるかのように、過去に同じような問題があり、すでに最高裁で争われている事例がありました。

 

最高裁の判例としては、サブリースが事業的委託であったとしても、サブリース業者とオーナーとの契約は建物賃貸借契約であることから、サブリース業者からの賃料減額請求は許されるというものです。

 

よって、2018年に起きた問題のような賃料の減額を許さない旨の特約(=賃料不減額特約)は無効であるということになり、結果30年間家賃を減額しない旨の特約は無効になるのです。これはあくまでも私の想像になりますが、自社で新築のシェアハウスアパートを企画して、「30年も家賃減額しませんよ! それだけよい物件なんですよ!」という営業トークを使い、オーナーに安心感を持たせようとしているのではないかと思うのです。

 

一般的なアパートよりシェアハウスのほうが賃料が高く取れるので、価格を割高にしても収支の合うように見せかけて、その分利益を上乗せてしていると考えられるのです。実際に見せていただいたシェアハウスの建築見積書では、木造のアパートコストよりも高くなっており、普通に考えればシェアハウスというのは、水廻りが共同であることから、割安になってもおかしくないはずなのです。

 

もしその業者が、賃料の減額を許さない旨の特約は無効であると知っていたうえで、自社のサブリース契約書に記載していれば、かなりの悪徳であるといわざるをえません。不動産投資にかかわらず、くれぐれもうますぎる話には気をつけたいものです。ハイリターン=ハイリスク、これが投資の基本であり、ぜひ購入前にご相談いただきたいのです。

 

プロが教える 不動産投資の真実

プロが教える 不動産投資の真実

山内 真也

プラチナ出版

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