長期的な運用で安定した資産を形成できるといわれている不動産投資ですが、知識がないばかりに大きな損失を抱えてしまう投資家もいます。本連載は、株式会社CFネッツ副社長・アセットコンサルタントの山内真也氏の著書、『プロが教える 不動産投資の真実』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、ワンルームマンションへの投資を中心に、不動産投資とはどういうものか、またどのような目線で投資を進めていけばいいのか、多くの数字をもって解説していきます。

中古ワンルームなら「都心」で「安定収益」が実現

①購入後に手間がかかりづらい 

 

中古ワンルームマンションも新築と同様に、管理会社が管理する区分所有建物であり、管理会社さえしっかりしていれば、購入後の手間はほとんどかかりません。また、新築時でもお伝えしましたマンション全体の修繕積立金総額を確認し、その修繕積立金が少なければ、管理組合で借入れを起こして大規模修繕を行っているようなケースもあるので、注意が必要です。

 

5年くらいで借入れを完済し終わるケースがほとんどですが、その間、修繕積立金の貯まるペースが遅くなり、次回の大規模修繕工事にはさらなる多大な借入金が必要になることも考えられますので、毎月の修繕積立金の増額や一時徴収金を検討したほうが良いでしょう。

 

私自身の所有する自宅マンションも、もともと修繕積立金総額が少なく、将来的には借入れを起こし修繕維持していくようになることが目に見えていましたので、理事長になってから先手を打って、毎月の修繕積立金の値上げを提案し、それを実行してきました。

 

そして特に覚えておいていただきたいのは、銀行によっては、マンション全体の修繕積立金総額が少なかったり、また借入れがあることによって、融資の受けられない場合もあることです。これには、注意が必要です。もし仮にそのようなことに陥ってしまえば、売却時に買い手を見つけることが難しくなり、そのマンションの価値自体が下落することも考えられます。特に投資用のマンションについては、総会等に参加する所有者さんも限られており、長期的に健全な管理運営を維持できていない物件も多く見受けられます。

 

②好立地物件を購入できる

 

これも新築ワンルームマンションと同じく、山手線内側や、さらに都心部など、一棟アパートではほとんど不可能な好立地の物件を購入できるのが、ワンルームマンションならではのメリットといえます。

 

③賃料が安定しているため「購入価格≒売却価格」の可能性も

 

新築時の賃料下落が避けられない新築ワンルームマンションとは対照的に、中古ワンルームマンションは、賃料の下落リスクが低いのが新築にはないメリットです。

 

とくに築20年程度の中古ワンルームマンションの賃料は安定期に入り、以降はほぼ一定水準で推移するケースが多くあります。たとえば、築20年で購入した中古ワンルームマンションの家賃が6万円だったとして、この物件を10年後の築30年で売却しようという場合、よほど管理状態が悪い物件でなければ、同じ家賃水準で貸せていることはよくあります。このため、前述したとおりの収益還元評価から中古ワンルームマンションの価格も下がりにくく、購入した価格と同水準で売却できることが決して珍しくありません。購入価格と同じ水準の価格で売却できるということは、売却損が生じるリスクも低いということです。

 

出口戦略をそれほど気にせずに、運用中のキャッシュフローをコツコツ積み上げていくインカムゲイン中心の投資を可能とする点が、中古ワンルームマンションのメリットです。ただし、この安定した家賃というのは、東京や横浜などの一等立地の話であり、築20年以降であったとしても、家賃下落の止まらないエリアは増大していくと思われます。

 

今後、日本全国で二極化はさらに広がり、そういった意味でも、慎重にこの投資すべき立地を選択していきたいところです。

規制で価値が高まる「中古」&「極狭」のワンルーム

④25m2規制によって、それ以下の面積には希少価値がある 

 

「25m2規制」とは、首都圏を中心とした自治体のほとんどが新築ワンルームマンションを対象に設けている面積規制を指します。ワンルームマンション入居者が起こすゴミ出しなどの生活マナーの悪さが一時期問題となり、これを契機に、ワンルームマンションの供給を規制しようという動きが首都圏一帯に広がりました。

 

現在、都区内で20m2の新築ワンルームマンションが建築できるのは、豊島区と品川区だけ(豊島区は1戸当たり50万円のワンルーム課税が開発業者に課せられる)。ほかはすべて25m2以上に規制され、なかでも渋谷区は、28m2以上と規制が最も厳しくなっています。今後、供給される新築ワンルームマンションは、こうした規制に沿ってワンルームとしては大型化していくことが必至と考えられています。

 

これに対して、かつて建築された中古ワンルームマンションの中心面積帯は15~20m2であり、最近の新築マンションより小ぶりな面積の住戸が市場で流通しています。面積が大きくなれば、当然、賃料は高く、借りられる人も限られます。大型ワンルームは居住性には優れるかもしれないものの、同じような駅前の好立地物件なら、面積を犠牲にしても、より賃料の安い物件を選ぶワンルームマンション入居者が少なくないのが、現在の賃貸住宅市場です。

 

とくに都心の単身者のライフスタイルは、面積よりも立地条件を優先する傾向が強く、駅から徒歩15分の住まいより、多少面積が小さくても駅から徒歩圏の住まいを選ぶ入居者のほうが圧倒的に多いでしょう。

 

[図表1] 渋谷区ワンルームマンション条例

 

図表1のようなワンルームマンション条例により、たとえば渋谷区の場合、今後28m2未満のワンルームを建築するには、小ぶりなアパートやマンションに限られてしまいます。土地値の高い一等地に対して小規模な物件では、収益性がかなり悪化してしまいます。よってこのような規制により小ぶりなワンルームマンションは、今後も供給される数に限りがあり、需要と供給のバランスを考えれば、狭めの築古ワンルームマンションは希少価値があると考えます。

 

ついでに、弊社で管理している渋谷駅から徒歩5分、わずか11m2の中古ワンルームマンションは、家賃が7万円も取れているのです。11m2ということは約6.8畳! その中にバス・トイレ・キッチン等も含まれているから驚きですが、場所が良ければビジネスホテル代わりとして借りてくれるケースもあり、そんな極狭物件でも、賃貸需要は根強く安定稼働しており、結果、そのような収益物件の価格は下落する懸念も小さいと思われます。

 

 

山内 真也

株式会社CFネッツ 副社長・アセットコンサルタント

 

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