労働力の不足は各産業で問題に・・・
今のところスリランカにおいては、労働許可が下りていない農場での季節労働者などの違法労働者も含めて、外国人労働者は歓迎されていると言えるだろう。なぜなら、スリランカでは労働者間でのスキルの差が顕著だからだ。
世界銀行によれば、スリランカの保健セクターでは看護師が12,000人、X線技師が600人も不足している他、薬剤師や検査技師も足りていない。2011年には、当時の厚生相は7,000人の医者が不足していると推測した。
この先数年に及び、経済的なポテンシャルがもっとも高い観光産業では、世界銀行が2014年に出した予測によれば、訓練を受け、観光産業に精通した人材 が毎年30,000人必要になるということだが、現状の訓練体制ではこの予測の15%である年間4,500人ほどしか人材を輩出できない。
開発計画局(National Planning Department)は、スリランカの建設セクターには15,000人の職人が必要だと予測しているが、実際には11,000人しかいない。ITセクターも、スリランカ情報通信技術労働力調査(National ICT Workforce Survey)によれば、人材不足に直面している。
世界トップクラスの「失業率」の低さ
スリランカは、2011年から2014年の間に24万件ほど雇用を増やした。この4年間での労働人口はのべ8,800万人を超え、そのうち8,400万人は何かしらの収入源を持つ。僅か4.3%の失業率というのは驚異的な低さだろう。
他国における経済研究によると、失業率が5%以下の場合、求職者の中から相応しい人材を見つけようと各企業が競合し、賃金が上昇する。労働者不足とその結果による人材コストの増加は、市場の効率を落とし、投資を妨げる要因になる。
スリランカの国境を移民に対して開放するかどうか議論するにあたり、さまざまな分野で労働力が不足している現状を見過ごすことは出来ない 。建設業の労働者、ホテルの料理人、教師、医療従事者が不足していることによって、既にスリランカ経済は痛手を負っており、また国民に対しても、そのコストやサービスの質の悪さという形で負担を押し付けている状況だ。また、中間所得者層の経済状況をすぐにでも向上させたいと望むスリランカにとって、労働力の不足は経済成長のボトルネックだとも言えよう。
本連載では、スリランカで働ける外国人労働者や移民に対し国境を開放しない限り、そしてその中でスキルがある者には、スリランカに家族を呼び寄せることを認め、永住権や市民権を与えない限り、スリランカにおける経済成長の可能性、そして国民生活をより良いものにすることは見込めないと主張するつもりだ。
次回は、海外出身者が多い欧米の例とともに、スリランカの国境開放がもたらす可能性を探ります。