医師やエンジニアさえも容易ではない就労申請
シンガポールとは異なり、スリランカは外国人に対する労働許可証の発行条件が厳しい。スリランカで働くことを望む外国人は、サービスの貿易に関する一般協定(以下GATS)に従う必要がある。スリランカで働きたい外国人は、いわゆるGATSの第3モードに該当しない限り、つまりスリランカに投資をしていない限り、スリランカに来ることは出来ない。どんなに有能で優秀なプロであろうと、スリランカで仕事できないのだ。
スリランカの学校が、国際的なカリキュラムに基づく試験対策をするために先生を何人か雇いたくても、現地採用というかたちは取れない。学校がその一人ひとりの代わって、どうにかして労働許可申請書を作成しているのだ。この作業は、外国人シェフを雇いたいホテルや、外国人コーチを雇いたいクリケット・チームにとって大変面倒なものだろう。
医者やエンジニアや会計士のような専門職の人を雇いたい場合、その職業協会が申請手続きを担わなければならない。そのため、現地の各団体は、海外の人材の受け入れ手続きに大変な嫌気がさし、また、その外国人労働者がスリランカで1、2年働いた後、労働ビザの延長を申請する手続きに、更なる嫌気を覚えている。
意欲的で向上心が強い移民労働者
移民労働者はやる気があり、向上心を持って一生懸命働こうと意欲的だ。移民を受け入れる国は、移民の若さ、熱意、そして経済活動から恩恵を受ける。また、スキルがある移民とあまりスキルがない移民の二分についても議論の余地があるだろう。シンガポールがそうしているように、移民の平均収入で分けることは難しくない。
スリランカにいる880万人の労働者のうち、学歴や肩書を見た場合、専門職だと見なすことが出来るのは僅か17%しかいない。それはつまり150万人しかいないということだ。一方のシンガポールはちっぽけだが、50万人以上の永住者、そして、外国人居住者や留学生などを150万人迎え入れている。そして、シンガポールでは非常に大勢の移民が毎年永住権を取得している。(編集部注:現在、シンガポールのビザ収得については厳格化されてきており、制度が変わっています)
自由貿易は、各国が生産性の高い産業やサービスに特化することを可能にする。そして、移民による労働力はその国が得意とする産業を拡張し成長させる手助けとなるのだ。規模が拡大すれば、イノベーションにかかるコストを薄く伸ばせて、競争力を維持することが出来るだろう。
次回は、スリランカが移民政策に取り組むにあたり最初に向き合うべき課題をご紹介します。