世界的に見ればまだまだ劣るスリランカの労働市場
シンガポールに似た状況で移住者や外国人労働者を受け入れても、スリランカの空港が混雑することにはならないはずだ。スリランカの賃金が低いのは、世界的にみればスリランカ経済の生産性が高くないためである。
また、有能なインド人労働者はインドの大都市で、スリランカ企業よりも高収入の就職口を容易に見つけることが出来る。インドの市場を知る者なら誰でも、スリランカよりもインドの方が素晴らしい才能が集結していると話すだろう。
そうなると、誰がスリランカに来るのだろうか。スキルが身に付いていない農場労働者や工場勤務者は簡単に季節労働先を見つけられるかもしれない。管理体制が整っているスリランカ企業にとっても才能の山から人材を探し出せるだろう。世界の市場でしのぎを削る企業は、新たな優秀な人材がもたらす競争力を歓迎するだけではなく、成長におけるボトルネックを打破する可能性を得られてひと安心できる。
人材獲得競争に向け、求められる移民受け入れ
移民の受け入れにあたっては、いくつか規制が必要だろう。たとえばシンガポールでは、スキルがない労働者は労働許可書の申請は出来たとしても、永住権を取得する権利は与えられない。しかし、有能な管理職やその他の専門職につく人たちは、スリランカで家族とともに暮らすことができ、永住権だけでなく市民権の申請も許可するかたちで迎え入れるべきだ。
権利を付与するべき有能な管理職や専門家の判定は、市場に委ねられるべきことである。たとえば、民間企業での仕事が確保され、そこでの給与が、月額60,000スリランカ・ルピーである源泉税最低額を上回る場合、その人はスリランカで働けるようになるべきだ。そして、もし月額10万スリランカ・ルピー以上稼げるようであれば、その人は家族をスリランカに呼び寄せる権利を与えられるべきだろう。
最初はほとんど移住者もいないだろう。しかし、スリランカ経済の生産性が高まり、その状態が定着し、投資家がスリランカに対して確信を持つことができれば、移住者も増加するはすだ。
長らく続いた内戦は、人口ボーナスという恩恵を受ける機会をスリランカから奪ってしまった。多くの若者が内戦の敗者となり、その他の者も国外へ移住してしまった。今やスリランカの労働力は急速に高齢化していることも忘れていはいけない。
移民はもはや貧しい国から豊かな国に流れ込むわけではない。最近では多くの移民が貧しい国から、別の貧しい国あるいは中所得国へと移動しているのだ。バングラディッシュ人は中東で、ジンバブエ人は南アフリカで職を見つける。何十年もの間、経済的に豊かな国は国外から優秀な人材を獲得しようと精力的に競争していた。
今、スリランカではこの労働力不足をきっかけに、移民政策についての議論が活発になってきている。世界各国が人材確保のために国境を開放するなか、限られた議題にしか取り組まない狭量さでスリランカの未来を考えることはもうやめるべきだ。